農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2014年4月18日

日豪EPA 豚肉、牛タン、ナチュラルチーズ、はちみつ・・・も 日本畜産壊滅の恐れ

 農水省が17日、日豪EPA畜産関係大筋合意の詳細については発表した。冷凍・冷蔵牛肉の関税削減と関税割当については既に伝えた通りだが(日豪EPA交渉が大筋合意 牛肉関税引き下げの畜産業への影響は最小限と言うが・・・,14.4.7)、それに加え、その他の牛肉製品(内臓・くず肉、牛肉調整品)や豚肉製品、鶏肉製品、鶏卵、乳製品、天然はちみつ、生きた牛・豚・馬の関税削減・撤廃・関税割当などが盛り込まれている。影響は牛肉分野のみならず、酪農・養豚・養鶏等畜産全分野に及ぶことが明らかになった。

 日豪EPA(経済連携協定)交渉大筋合意の詳細について(畜産物関係) 農林水産省 2014.4.17
  添付資料1 日豪EPA畜産物関係の合意内容(PDF:74KB)
  添付資料2 牛肉の関税削減及びプロセスチーズ原料用ナチュラルチーズの関税割当の毎年のスケジュール(PDF:74KB)
  オーストラリア側発表のJapan-Australia Economic Partnership Agreement – Key Outcomes(Department of  Foreign Affairs and Trade,2014.4.7)も参照されたし

 農水省はこれらの措置の国内畜産業への影響については一切触れていない。しかし、とりわけ12.8〜50.0%の現行関税率を7.6〜30.0%に引き下げ、この税率での輸入の割当数量を初年度の1.7万トンから10年後2.1万トン(現在の輸入量は1.8万トン)に増やす牛内臓・くず肉(牛タン・ハラミ・肝臓・ほほ肉・塩蔵肉等)、同じく4.3〜8.5%を2.2〜4.3%に半減、割当を初年度5300トンから5年後1.4万トンに増やす豚肉・冷凍内臓・調整品(ハム、ベーコン等)、無税輸入割当を初年度4000トンから5年後7400トン、10年後1.13万トン、最終的(21年後)に20万トンに増やすプロセスチーズ用ナチュラルチーズなどの輸入価格低下の影響が懸念される。

 さらに、この合意は、アメリカとの二国間TPP交渉の最低合意ラインとなる可能性がある。アメリカが関税撤廃にこだわり続け、何の合意もできなければ、オーストラリアの畜産品との差別扱いを甘受せねばならない。関税撤廃でなく一定の関税削減と関税割当で手を打つ可能性が出て来る。他の国(例えばニュージーランド)だって黙ってはいまい。そうなれば全体としての割当数量は割当を無意味にするほどに膨らむだろう。「聖域」とか「国会決議」とか、そんなものは吹き飛んでしまう。

 すべての農産品の関税撤廃を断念、妥協に走った日豪EPA交渉を評し、ニュージーランドのグローサー貿易相は、TPPの野心的目標を切り下げたこんな協定はアメリカが無視することを期待すると言っている。

 Govt backs TPP to trump Aust-Japan trade deal,The New Zealand Herald,14.4.14

 しかし、ニュージーランド一国で日米の容易な妥協を阻止できるはずもない。安倍政府は後々、日本の畜産を壊滅させた責任を負わねばならないだろう。