貿易自由化による「包摂的成長」で「保護主義」に対抗 APEC首脳宣言の愚

農業情報研究所グローバリゼーション二国間 関係・地域協力ニュース2016年11月21日

  ペルー・リマで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会合が「 首脳宣「あらゆる形態の保護主義に対抗する責務を再確認する」という首脳宣言を発して閉幕した。イギリスのEU離脱決定や米大統領選挙における反TPP・トランプ氏の勝利をグローバリゼーション・自由貿易の危機、「保護主義」の台頭と受け止め、この世界的潮流を押しとどめようとする意思を宣明したものだ。

 宣言は冒頭で「不平等や不均等な経済成長がグローバリゼーションへの疑念を生み、保護主義の台頭につながっている」と指摘、保護主義台頭を抑えるためには「貿易や投資、開かれた市場の恩恵を行き渡らせるため、社会のあらゆる分野に働き掛ける必要がある」と経済格差の解消を訴えている。

  安倍晋三首相もまた、「格差が拡大するという懸念が保護主義をもたらす」と指摘、「自由貿易への反対は、自由貿易に背を向けることではなく、包摂的な成長をもたらすような経済政策によって乗り越えるべきだ」と訴えた。TPPについても「自由で公正なルールに基づく経済圏を創出する」と、その意義を強調したとのことである。

  「あらゆる保護主義に対抗」 APEC閉幕 日本経済新聞 16.1121

  APEC首脳宣言「保護主義に対抗」 経済格差の解消訴え 東京新聞 16.11.21

 首相が言う「包摂的な成長」とは、「自由で公正なルールに基づく経済圏を創出する」貿易・投資協定により得られる「貿易や投資、開かれた市場の恩恵」をすべての人に「行きわたらせる」ことに他ならない。

 問題はまさにここにある。自由貿易は経済成長(GDP増加)に寄与するかもしれないが、それは自動的には「包摂的成長」に結びつかない(例:「包摂的成長(Inclusive Growth)」モニター報告)。むしろ格差拡大に結び付く。それは、グローバリゼーション・貿易自由化が経済成長を押し上げる原理そのものからくる必然的帰結でもある。

 グローバリゼーション・貿易自由化は苛酷な競争を強いることで生産性を引き上げる。この競争についていけない大多数は容赦なく切り捨てる。グローバリゼーション・貿易自由化は本来的に格差拡大を生む。包摂的成長とグローバリゼーション・貿易自由化は両立しないのである。

 それを実証するのが上に掲げたイギリスのモニター報告であり、FTA大国・韓国の自殺率世界一のである(FTA大国は自殺率世界一 韓国は「人間性を喪失した経済大国」であってはならない 金昌民ソウル大学教授(今日の話題),12.9.13)。トランプ氏は、日本の自殺率が韓国を追うのを止めた恩人になるかもしれない。もしも彼のせいでTPPが流産するとすれば。