日欧EPA<農業情報研究所グローバリゼーション二国間 関係・地域協力2016年1213

日欧EPA交渉に関する最新情報(第一弾) パスタ関税引き下げで難航打開?

 今日から東京で、日本-EU経済連携協定(日欧EPA)の年内大筋合意を目指す主席交渉官会議が始まる。しかし、2013年に始まったこの交渉の進捗状況に関する公式情報は、今に至るもまったくない。分っているのは双方の主要関心分野だけだ。

 日本は主に、自動車は10%、電機は最高14%など、EUの工業製品高率関税の廃止と、日本企業(エグゼクティブ)がヨーロッパで直面する非関税措置(NTM)に関わる規制の改善を要求している。

 EU側の主要関心分野は、農産品に関する市場アクセスの改善、自動車、化学製品、電機、食品安全、加工食品、医療機器、医薬品に関するNTM地理的表示(GI)の保護、鉄道事業における政府調達、持続可能な開発だ。

 漏れ出てくる情報は交渉が難航しているというだけ、どの分野でどんな議論が行われ、議論がどこまでは詰まっているのか、難航を打開するためのどんな試みがなされているのか、それともなされていないのか、今までのところ全く知ることができなかった。交渉はTPP以上に秘密に包まれていた。

 しかし、双方が年内大筋合意を目指すと言い始めたいま(日欧EPA 農業はTPPと同水準譲歩の年内合意案 反保護主義の足元見透かすEUの恰好の餌食に)、マスコミにも漸く打開に向けた秘策が漏れ出始めようだ。

 今日の日本経済新聞によると「農林水産省は12日、・・・交渉で、パスタの関税を引き下げる方針を固めた。1キログラムあたり30円のスパゲティやマカロニの関税を段階的に12円以下に下げる方向だ。環太平洋経済連携協定(TPP)で約束した水準より踏み込み、自動車の関税削減などでEU側の歩み寄りを促す」、「TPPではスパゲティとマカロニの関税を発効から9年目に6割削減する。EUはTPPを上回る削減率を求めていた。日本の消費者にとってはイタリアやフランスのスパゲティを安く買えるようになる。国産パスタは原料のデュラム小麦をほとんど輸入で賄っており、外国産パスタが増えても国内農業に大きな影響は出ない見込みだ」ということだ(日欧EPA交渉で譲歩案、パスタ関税を段階下げ 農水省 日本経済新聞 16.12.13)。

 マスコミ報道をどこまで信用していいか分らない。しかし、いかにも役人が考えそうな話ではある。しかし、それでEU側が歩みよるかどうかは別問題だ。

 12日付のBloombergニュースによれば、「EUはチョコレート、パスタ、トマトペースト、チーズのようヨーロッパ食品の関税を廃止し、自動車の非関税障壁を引き下げ、鉄道事業の政府調達市場を開するように迫ってきた。それと交換に日本車に対する10%関税を段階的廃止する、日本エグゼクティブのヨーロッパへのアクセスを容易にする、コメ、牛肉、豚肉など日本のセンシティブな農産品市場への無税アクセスの要求を控えるなどと言ってきた」(EU Takes on Trump in Final Push for Free-Trade Pact With Japan,Bloomberg,16.12.12)。 

 とすると、パスタ関税引き下げで日本が最も恐れるEU側の乳製品・牛・豚肉の関税引き下げ・廃止要求を「控える」とも思えない。

 例えば交渉中のベトナムとの協定では、ワイン、スピリッツ、冷凍豚肉、牛肉、鶏肉、乳製品の関税撤廃を提案している。カナダとの協定では、カナダの最もセンシティブな製品チーズでさえ、輸入割当倍増(18500トン)を勝ち取っている。

 今後何日に及ぶか分らないが、日欧EPA交渉に関する情報が出るたびに、このな形でお知らせしようと思う。今日はその第一弾である。