農業情報研究所

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援助食糧にスターリンク

(NGO緊急リリース要約)

農業情報研究所(WAPIC)

02.6.28

 消費者の安全確保のために遺伝子操作(GE)食品の検査と表示の推進活動を展開している民間団体・「GE食品警報( Genetically Engineerd Food Alart)が、6月10日から13日にかけてローマで開催された世界食料サミットを前に、援助食糧の中に人間消費が認められていないスターリンク・コーンが発見されたという緊急リリース(ILLEGAL GENETICALLY ENGINEEREDSTARLINK CORN CONTAMINATES FOOD AID,6.10)を発している。

 これは、人々の食の安全の観点からはもちろん、食糧援助が遺伝子組み換え体(GMO)による環境(作物・植物)汚染のルートになり得るという観点からも、極めて重大な問題をはらんでいる。従って、以下に、このリリースを要約・紹介する。

 違法な遺伝子操作スターリンク・コーン、食糧援助を汚染

EUで承認されていない別のタイプも発見

世界食糧サミットの世界の指導者、さらなる汚染の防止を求められる

 ボリビアの市民団体・ボリビア環境・開発フォーラム(FOBOMADE)は、今日、米国国際開発庁(USAID)の食糧援助の一つのサンプルから、保健上の観点から人間消費用に承認されていないスターリンク・GEコーンが検出されたと発表した。同時に、Centro Humbolt(地球の友ニカラグア)は、世界食糧サミットが開催されるローマで、スターリンク、その他による汚染の発見を発表した。これらグループは、米国の食品にスターリンクが発見されて1年以上後に、それが食糧援助の中に現れたことに憤激を顕にした。彼らはUSAIDと世界食糧プログラム(WFP)を批判し、バイオセイフティ規制を公式にもたない国にGE作物が食糧援助として送られることがないように要請した。

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 スターリンクが食糧援助の中に発見されたのはこれが初めてであり、最初、2000年8月に米国で発見されて以来、米国・日本・韓国以外で発見されたのも初めてである。すべての検査結果は、アイオワの独立試験所、Genetic IDにより行なわれたDNA分析を使用して確認された。

 スターリンクは、コーンの全細胞中の操作されたバクテリア蛋白質が「既知のアレルゲンの特徴」を示すという米国環境保護庁(EPA)による発見のために、人間消費用には承認されなかった。この種のアレルゲンのあり得る健康影響は、悪心、アナフィラキシーショック(呼吸困難、血圧低下による意識喪失、蕁麻疹などの激しい全身症状が現れ、ときに死に至ることもあるー紹介者注)を含むが、現在は、政府と産業による適切な検査がないために分かっていない。このコーンは、最初、地球の友とGE食品警報により、クラフト食品により製造されたタコシェルの中に発見された。

 米国政府は300以上の汚染食品を回収、200人以上の人々が病気に関連したと報告された。1年後の2001年7月、EPAは人間の消費のためにはスターリンク含有がゼロでなければならないと決定した。このコーンの製造者、アヴァンティスは、EPAに食品中のスターリンク含有許容量の設定を求めたが拒否された。この企業は多数の訴訟に巻き込まれ、結局はバイテク部門をバイエルに売り渡した。

 EPAの科学アドバイザーは、その最終報告で、米国疾病監督センターが、スターリンクが人間のアレルゲンであるかどうかを決定するための欠陥検査を行なったと結論した。2001年7月のそのレポートは、特に子供と特別に敏感な人について、一層の検査が行なわれるように勧告した。しかし、EPAはそれ以上の対策を取っていない。

 米国に本部をもつGE食品警報連合により、最初のスクリーニングのために使用される検査キットが世界中の組織に配布された。連合は、スターリンクから自身を護り、表示と注意深い分離が行なわれていない未承認のコーンを発見しようとしている人々を助けるために、世界の40以上のグループのキットを供給した。

 FOBOMADEによる検査のために送られたサンプルは、EUが承認していない他の二つのタイプのGEコーンーどちらもモンサントにより生産されたRoundUp Ready(RR)とBTXtraーも含んでいた。

 Centro Humboltは、国の様々な地域から食糧援助のサンプルを得た。一つの種子サンプルは米国とEUで承認されたGMO品種3.8%を含み、コーンと大豆粉がブレンドされた三つのサンプルはモンサントのRRコーンを含んでいた。

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 WFPは、2002年5月24日付けのニュース・リリースで、「WFPは生産国(供与国)の市民と食糧援助受け取り国により人間消費用に受け入れられない食糧は配布しない」と宣言した。2000年には、当時の米国農務長官・ダン・グリックマンが庁はスターリンクが食糧援助に入らなかったと保証すると語っている。

 地球の友・米国のLarry Bohlemは、「WFPとUSAIDは、GE作物が、これら機関が助けようとしている国の人々の健康・地域農業・環境に脅威を与えないように保証しなければならない・・・」と言う。

 世界の草の根検査は、2001年9月から2002年6月の間のサンプルを調べた。GE食糧援助は、なお倉庫にあり、グアテマラやニカラグアの農場では、今シーズンに作付けされる可能性がある。

 GE種子による食糧援助は、コーンの原生地の一つへのGE作物侵入のもう一つの経路となり、修復不能な生物学的汚染の一形態を創り出す恐れがある。最近の報告では、メキシコへの食用コーン種子の商業的輸入がメキシコ原生種に脅威をもたらした経路ではないかと疑われている。

食糧援助サンプルの検査結果

製品

受け取り国

検査結果

規制

供与者

食糧援助
コーン・大豆粉ブレンド
ボリビア スターリンク<0.1%
Bt Extra(DeLaib)
    near 0.01%
Monsanto RR>0.1%
世界的未承認
EUで未承認

EUで未承認
USAID
食糧援助
ホール・コーン穀粒
グアテマラ Liberty Link>0.1%
Bt Extra<0.1%
Monsanto RR>0.1%
EUで未承認
EUで未承認
EUで未承認
WFP
ドイツからのギフト
ホール・コーン穀粒
ニカラグア Total GMO 3.8% GMO種子はバイ
オセイフティ規
制のない国につ
いてはUSAIDが受
け入れない。ドイ
ツでは表示義務。
WFP系由
ドイツ
妊婦用食糧
コーン・大豆粉ブレンド
ニカラグア Monsanto RR(GA21)
   コーン0.3%
Total GMO >1.0%
RRはEUで未承認
その他は米・EU
ともに承認
WFP系由
USAID
学童用食糧
コーン・大豆粉ブレンド
ニカラグア Monsanto RR(GA21)
   コーン2%
RRはEUで未承認
その他は米・EU
ともに承認
WFP系由
USAID
労働用食糧
コーン・大豆粉ブレン
ニカラグア Monsanto RR(GA21)
   コーン0.2%
Total GMO >1.0%
RRはEUで未承認
その他は米・EU
ともに承認
WFP系由
USAID

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