農業情報研究所

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インド:開発企業、Bt.棉の失敗を否定

農業情報研究所(WAPIC)

2002.11.15

 11月14日付のインド”The Hindu”紙(’Bt. Cotton has not failed’ ,The Hindu ,11.14)によると、Bt.技術を使用した遺伝子組み換え(GM)棉を販売したマハーラーシュトラ・ハイブリッド種子会社(Mahyco)とモンサント・インド社(Mahycoの株の26%を保有する)が、Bt.棉の失敗はなかったと発表した。Bt.棉は失敗したという先日のマスコミ報道(インド:GMマスタードの承認延期、ヴァンダナ・シヴァ、Bt棉承認取り消しも要求,02.11.8に対応したものである。

 害虫を殺す毒を生産するバクテリア遺伝子を導入したこのBt.棉は、今年3月に政府の承認を得た(インド:遺伝子組み換え(GM)棉承認、途上国のGM採用に拍車か,02.3.28)。モンサント・インドによれば、今作季、5万5千の農家が10万4千269エーカー(4万1千708ha)の土地で栽培した。西部のマハーラーシュトラ州の栽培面積が最大で、4万1千229エーカーに達し、カルナカタ(16,950エーカー)、グジャラート(16,140エーカー)、タミール・ナド(12,560エーカー)、マディア・プラデーシュ(8,990えーかー)、アンドラ・プラデーシュ(8,400エーカー)の各州でも栽培された。ところが、GMマスタードの商用栽培許可申請を検討する遺伝子操作承認委員会(GEAC)会合の前日に当る今月7日の記者会見で、ヴァンダナ・シヴァは、アンドラ・プラデーシュ、マディア・プラデーシュ、マハーラーシュトラを含む諸州のBt.棉収穫は完全に失敗したと発表した。両社の発表はこれに反論するものである。

 発表によれば、非GMハイブリッド棉とともに、GM棉は”パラ・ウィルト”という「新種の立ち枯れ病」の影響を受けたもので、これはサク(莢)形成期の多雨または高温に続く長期の乾燥によって引き起こされた生理的障害の結果であったという。モンサントは、これは技術の失敗ではなく、農民、ディーラー、科学者、州農業官はそのパフォーマンスを賞賛していると言う。

 ナーグプルの中央棉研究所ディレクターのC.D.Mayeeは、パラ・ウィルトはマハーラーシュトラの非GM棉を含むハイブリッド棉に影響を与えたが、GM棉が失敗したのかどうか、収穫の数字が利用できるようになるまでは確認できないと言う。この研究所自体は、GM棉種子を購入して、そのパフォーマンスを調べるために近隣の村の若干の農民に配ったが、最初の収穫は完璧で、結果は有望と見ている。

 マディア・プラデーシュの棉研究所のP.Sastryは、パラ・ウィルトが同州の多くのハイブリッド棉品種に影響を与えたとしたうえで、州内で栽培されているBt.棉の詳細なサンプル調査を行なっている最中だと言う。

 商用栽培許可に先立つ圃場実験でBt棉のパフォーマンスを研究した政府委員会のメンバー・E.A.Siddig教授によれば、アンドラ・プラデーシュ州Mahbubnagar県で栽培されたBt.棉は非常な「農学的パフォーマンス」を示した。そのサク保持は、Bt.遺伝子を取り除いた同種のハイブリッド棉よりも良好で、農薬散布なしで済んだという。