農業情報研究所

HOME グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境 ニュースと論調

フランス:GM作物屋外栽培と闘う市町村長

農業情報研究所(WAPIC)

03.1.28

 昨年7月、当研究所ニュースで、フランス農民同盟を始めとする12の環境保護団体・農民団体・有機農業団体・国際援助団体等がフランスの全市町村に遺伝子組み換え体(GMO)の屋外実験と栽培を禁止するように要請するキャンペーンを行なっていると伝えたが(フランス:12団体、全市町村にGMO屋外実験・栽培禁止を要請,02.7.8フランス:町議会、GMO商用・実験用栽培反対宣言,02.7.31)、1月23日付の「ル・モンド」紙は、1000を超える市町村が、知事の圧力と戦いながら、屋外栽培を押しとどめる条例や決議を行なっていると報じている。

 ノルマンジーのカン平野の農村自治体・Saint-Aignan-de-Crasmesnil(人口500人)の村長は、「危険から村を保護することが彼の義務」と考えて、条例で遺伝子組み換え(GM)作物栽培を禁止した。村会議員は、「もし事態が悪く進展すれば、それは自分に跳ね返ってくる。私はアスベスト、核、狂牛病に似た何かを自由放任にしたくはない」と説明する。種子と畑の汚染を恐れる若い二人の農民が、彼らの畑の保護を要請した。 オージュ地方(ノルマンジー)の人口300人の村・Touffrevilleの村長も同様な決定を行なった。彼は条例取り消しを命じた知事に、同僚とともに立てついた。彼の記憶には、村の生活を長い間痛めつけた公共ゴミ捨て場のことが染み付いている。「行政は規則を守らせたことがない。・・・我々は別の件で彼らの無能を確認した」と言う。

 科学的リポートや官庁のGM作物に危険はないという保証は彼らの説得に成功していない。カルバドス(ノルマンジー)では、70の市町村長が同様な行動(条例、決議)を取っている。

 キャンペーンに応え、1300の農村市町村がGM作物栽培反対を伝えたが、地域的にも、支持政党でも、まったく偏りはないという。動機は、半GMO活動、有機農業・慣行農業の保全、村長の取り締まり権限の尊重、将来に対するその責任など様々である。

 実験が始まって何ヶ月もしてから村で実験が行なわれていることを知った議員もいる。モーゼルのある村長は、新聞で始めて知った。彼は、村長が意見を述べ、反対もできるように法律を変えるべきだと言う。オート・ガロンヌの村長も同様だ。現在、多くの条例や決議が取り下げられたり、行政裁判所により否認されている。村長は、法的に上位の法文に逆らう決定はできないからだ。 

 しかし、市町村長たちは、完全に武装解除されたわけではない。ある村長は、数週間後に新たな条例を出すことになろうという。サルト県の一団体が「法的合気道」のパイオニアとなった。新たな条例は村の一部にかかわるだけだが、非常によく根拠づけられている。それは、GM作物の花粉による交雑を回避する半径4kmの範囲をカバーするものである。表示とトレーサビリティに関する厳しいEU規則が採択されたから、今後GM作物のモラトリアム解除への圧力が強まるだろう。市町村は、改めてGM作物反対グループの働きかけを受けることになる。

 Les mille maires qui veulent interdire les OGM,Le Monde Interactif,1.23