フランス軽罪裁判所 GM作物破壊農民に再び無罪判決 欧州委は3種のGMトウモロコシ承認

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.14

 12日、先に報じたフランス・オルレアンの軽罪裁判所に続き(フランス裁判所、GM作物破壊は遺伝子汚染を予防する”緊急避難” 破壊者を無罪放免,05.12.12)、ヴェルサイユの軽罪裁判所が、2003年7月に遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの実験圃場を破壊した農民同盟員等9人の農業組合員の無罪を言い渡した。判決は、オルレアン裁判所と同様、彼らの行為は遺伝子汚染を予防するための”緊急避難”行動」と認定した。その上、民事部門では、パイオニア、モンサント等の損害賠償請求を完全に却下した。

 Le tribunal de Versailles relaxe des faucheurs d'OGM,Le Mondce,1.13
 http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3228,36-730400@51-730161,0.html

 2004年11月15日のツールーズでの判決で、ジョゼ・ボベは4ヵ月の禁固と罰金刑を言い渡されている。同じく11月15日のクレルモンフェランの判決は12人に罰金付きの1ヵ月の禁固、それ以前のリールの判決も罰金付きの1-2ヵ月の禁固を言い渡している。EUのGMO新規承認モラトリアムが解け、昨年は1000haほどのGMトウモロコシが栽培されるに至ったにもかかわらず(フランスで1000ha以上のGMトウモロコシ栽培 早急な共存措置制定を迫る,05.9.6)、フランス政府がなおEUのGMO規制指令の国内法化を怠るなか、司法の流れは大きく変化し始めた。GM作物栽培による遺伝子汚染のリスクに対する司法の危機意識が高まっているのかもしれない。わが国とは大違いだ。

 欧州委員会は昨年12月、ドイツとフランスに2004年の欧州裁判所の判決になお従っていないと、最終的な書面での警告を発した。それによれば、両国は、欧州裁判所の判決とそれに続く欧州委員会の警告にもかかわらず、2002年10月17日までに行うべきGMO環境放出に関するEU立法に効力を与える国内立法をなお部分的にしか採択していない。両国がこの最終的警告に従わなければ、欧州委員会は再び欧州裁判所に提訴、罰金を含む強制措置を求めることになる。

 Commission pursues legal action against Germany and France over biotechnology legislation,05.12.20

 フランス政府はEUと国内司法の両面から、遺伝子汚染防止措置制定を迫られている。もっとも、万全の措置はあり得ないであろうが。欧州委員会も先ごろ、汚染ゼロは非現実的と、有機産品の0.9%までの偶然の汚染は認める提案を行っている(欧州委員会 有機生産に関する新規則案採択 0.9%までのGMO混入を容認,06.1.10)。

 なお、欧州委員会は13日、新たにモンサントの3種のGMトウモロコシの食品・食品成分としての利用(GA21 MON863)と、主として動物飼料への加工(MON863x810)を承認した。これらは栽培用としては認められない。