フランス行政裁判所 薬剤生産GM作物の屋外試験許可を取り消し

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.8

 フランス・クレルモンフェラン行政裁判所が5月4日、Meristem Therapeutics社によるピュイ・ド・ドーム県における2005年の遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ屋外試験許可を取り消した。このGMトウモロコシは、嚢胞性線維症(malades de la mucoviscidose)の治療に使われる胃の脂肪分解酵素を生産するトウモロコシだという。裁判所は、試験場所の限定が余りにズサンで、情報公開や公衆との協議も不適切だったと推認した。なお、この判決は、モンサントに与えられた2004年の二つの許可を取り消したコンセーユ・デタ(フランスの行政最高裁判所)の同じ週の判決に続くものという。

 Une nouvelle fois, un tribunal annule une autorisation d'essais de maïs transgénique,Le Monde,5.5
 http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3228,36-768534@51-746932,0.html

 フランスでは、昨年末から今年初め、屋外試験中のGM作物の破壊者を無罪とする判決が相次いだ(フランス裁判所、GM作物破壊は遺伝子汚染を予防する”緊急避難” 破壊者を無罪放免,05.12.12;フランス軽罪裁判所 GM作物破壊農民に再び無罪判決 欧州委は3種のGMトウモロコシ承認,06.1.14)。フランス司法のGM 作物屋外試験に対する厳しい態度は定着しつつあるようだ。現在、議会は”共存措置”を含むGMO規制法案を審議している最中だが(フランス政府閣議 新たなGMO法案を承認 EU指令遵守とGMO利用統制の改革へ,06.2.11)、これらの判決はこの審議の行方にも影響を与えるだろう。

 なお、ピュイ・ド・ドーム県はフランス中央山塊のパリ方面から入り口に位置する。ドーム上の山が連なる風向明媚な土地で、観光と主として名産チーズを作るための酪農が中心産業をなす。中心都市・クレルモンフェランはミシュランの本拠地だが、ほかにこれといった産業のない大変な過疎県だ。GM汚染が広がれば中心産業が存続の危機に曝されかねない。

(筆者撮影:02年10月)