EU環境相 ハンガリーのGMトウモロコシ禁止解除案を圧倒的多数で否決

農業情報研究所(WAPIC)

07.2.21

 EU環境担当相理事会が20日、ハンガリーに対して遺伝子組み換え(GM)Btトウモロコシ・MON810の領土内での利用と販売の禁止を解除するように求める欧州委員会の提案を圧倒的多数で否決した。この提案に賛成したのは、27ヵ国中、フィンランド、英国、オランダ、スウェーデンの4ヵ国のみ、棄権もルーマニア一国にとどまった。

 2785th ENVIRONMENT Council meeting, Brussels 20 February 2007 (provisional version)(07.2.21)

 ハンガリーの禁止措置は、EUレベルで承認されたGMOでも、承認後に新たな重大なリスクが発見された場合には各国はその利用や販売を一時的に制限または禁止できるというEU指令(90/220/EEC、現在はそれを修正した2001/18/EC)に定められた”セーフガード”条項に基づく。MON810は、EUレベルでは1998年に承認されているが、その後にEUに加盟したハンガリーは、ハンガリー科学アカデミー植物保護部の下で行われた研究で示された生態系への長期的悪影響の証拠をあげ、2005年1月にこれを適用した。

 しかし、このセーフガード条項に従えば、それを適用する国が提出する証拠がEUレベルのリスク再評価で否定されれば、セーフガード措置は解除されねばならない。ハンガリーの提出した新証拠の評価を欧州委員会に要請された欧州食品安全機関(EFSA)は、2005年6月8日に、ハンガリーが提出した情報は、以前の環境リスク評価を無効にするに十分な新たな科学的証拠をなさないという意見を出した。

 ところがその直後の6月24日、環境担当相理事会は、以前から同様なセーフガード措置を取ってき5ヵ国にその解除を求める欧州委員会の提案を圧倒的多数で否決してしまった(欧州委、一部加盟国のGM作物栽培禁止の解除に失敗 米国の一層の攻撃に直面,05.6.25)。そのために、欧州委員会は再度EFSAに意見を求める。これに答える2006年3月29日のEFSAの意見は、改めて、MON810の販売を続けても人間・動物・環境に悪影響を引き起こすことはありそうもないと結論した。

 こうして、欧州委員会は今回のハンガリーの禁止解除を提案したのだが、これも結局、圧倒的多数で否決されてしまったわけだ。

 この決定の根拠として、MON810は旧指令(90/220/EEC)に従って承認されたもので、環境リスク評価基準が強化された新指令(2001/18/EC)に従う再承認と再評価の手続きを受けていないこと、GMOの環境リスク評価においては、EUにおける多様な農業構造と生態系の地域的特徴が一層システマチックに考慮されねばならないこと、などがあげられている。

 なお、同理事会は昨年12月にも、オーストリアの二種のGMトウモロコシーバイエル社のT25とモンサント社のMON810ーの利用と販売を禁止するセーフガード措置の解除を求める欧州委員会の提案も圧倒的多数で否決している(EU閣僚 オーストリアGM作物禁止解除を求める欧州委提案を圧倒的多数で否決,06.12.25)。この措置は、WTOパネルも違法としたものの一つだ。欧州委員会は、WTOの後押しを受けてさえ、GMO推進でなお立ち往生を余儀なくされてい

 この日同時に提案されたGMカーネーションの承認提案も、承認、否認のどちらの決定にも必要な票が得られず、モラトリアム解除後に承認されたすべてのGMOと同様、欧州委員会の独断で承認することになる。

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