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農業情報研究所>グローバリゼーション>二国間 関係・地域協力>2017 年5月13日 EU裁判所 対米貿易協定交渉ストップの市民発議は民主的と擁護 欧州委の拒絶は不当の裁決 EU司法裁判所の一般裁判所が5月10日、対米貿易投資協定(TTIP)交渉の停止を求める市民イニシアティブ(”Stop TTIP”)の登録を拒否した欧州委員会(EU政府)の決定を不当とする裁決を下した。このようなイニシアティブ(発議)はEUの立法過程を妨害するという欧州委の言い分とは逆に、このような市民運動は喫緊の課題に関する民主的な論議に貢献すると言う。 ここに言う市民イニシアティブとはEU基本条約(リスボン条約、2009年)で制定された政策形成過程への市民の直接参加を可能にするEU独特の制度である。EUが権限を持つ政策分野について、7つ以上の加盟国から計100万人以上の署名を集めれば、欧州委員会に対して立法を提案することができる。ただし、そのためには、あらかじめ欧州委員会への登録が必要だ。 2014年7月、一市民グループが署名集めのための”Stop TTIP”と題する市民イニシアティブの登録を試みた。グループは、これら貿易協定は紛争処理や規制協力(規制の相違を減らし・将来的には共通ルールを策定する)に関して致命的欠陥を有し、もし実現すれば雇用・環境・消費者保護・社会保障に関するEUのルールが弱体化し、公共サービスの規制撤廃につながると主張する。登録申請の狙いは、欧州委員会のTTIP・CETA交渉をやめさせるように立法者(閣僚理事会、欧州議会)を動かすことであった。 ところが欧州委は、市民イニシアティブは立法過程を徒に混乱させるだけだと登録を拒否した。これに対し、一般裁判所は、イニシアティブは貿易協定に関する一つの民主的論議―交渉が完了し・協定が調印されるに先立ちなされるべき論議―と認めたわけである。裁決は、市民イニシアティブが乱立すればEUは貿易協定を採択できくなるという委員会の恐怖も退けた。EUにとって何が最善かを最終的に決定するのは立法府だとも言っている。 採決は、欧州委が以前に蹴飛ばしてきた他の市民イニシアティブについても先例になり得るという。 ポピュリズムの時代とはいえ、EUの民主主義はなお健在なようだ。常民の声には全く耳を貸さず、”有識者”の声だけを聴いて「自由と民主主義などの政治的価値を同じくする国々が参加する」自由貿易圏造りに邁進するどこかの国とは、大分様子が異なるようだ。 EU court slams EU Commission for blocking anti-TTIP movement,Deutsche Welle,17.5.11 |