農業情報研究所>グローバリゼーション>二国間関係・地域協力>ニュース:2015年8月1日(8.2改訂)
TPPハワイ閣僚会合 予想通り合意に至らず 政府はどう責任を取る
TPP協定の「大筋合意」 を目指したハワイ閣僚会合が合意に至ることなく閉幕した。予想通りの結果だ(ハワイTPP閣僚会合 大筋合意→最終決着は早計 協定の可否を決めるのは国民=議会 マレーシア通産相)。会合後の共同記者会見で、フロマン米通商代表は「大幅な進展を遂げた」と言い、日本の甘利明経済財政・再生相は「もう一度、会合が開かれれば、すべて決着すると思う」と言ったそうだ。
が、それなら最後の機会と言われた今次会合でどうして合意に至らなかったのか、安保法制に関する安倍首相と説明同様にちんぷんかんぷんだ。
合意見送りとなった直接の理由は医薬品に関する知的財産ルールや乳製品貿易をめぐる対立ということだが、後者の対立はともかく、国民の健康と生死にかかわる前者の対立は、製薬企業の利益を護持する米国が譲らない限り解消しないだろう。しかし、この点で米国が譲歩すれば、議会は協定を支持しないだろう。ファスト・トラック法(貿易促進権限法)の欠如が交渉進展を阻んできたといわれるが、今度はファスト・トラック法がそんな譲歩を許さない。
辛うじて下院を通過したファスト・トラック法を支持した28人の民主党議員は、TPP協定が「医薬品へのアクセスに関する過去の特許ルール改革を後退させないこと」を支持の条件にしている。8月中と想定される「もう一度」の閣僚会合で医薬品に関する知的財産権をめぐる対立が解消される保証はない。
百歩譲ってこの対立が8月の閣僚会合で解消されたとしても、時すでに遅しである。そもそも、TPP協定案を今年中に米国議会の審議にかけるためには、交渉が7月末に完了、8月1日までには協定調印の意図が議会に告げられねばならないとされてきた。TPPへの賛否を問う議会の投票が行われるのは、早くてもこの通知から4か月半後、すなわち2015年議会会期の最終週だからである。今回の閣僚会合で合意に至らなかったことは、米国議会におけるTPP審議入りが大統領選に突入する来年以降にずれ込むことを意味する。TPPの議会通過は非現実的な話になる。
TPP
Vote Calendar-Obama Administration Hype
About a TPP Vote in 2015 Does Not Comport with Fast Track Timelines,Public
Citizden
筆者はTPPなどとうの昔に見放してきたが、TPPの命運は尽きつつあることが明白になった。日本経済新聞クイックVoteによると、日本のTPP参加の影響はプラスと思う人が77.7%だそうである。そう答えた人の65.4%が安倍内閣を支持するそうである。それがおしゃかになる。こんな期待を持たせた言いだしっぺの管元首相や現政府の責任が問われよう。
TPP参加、日本にプラス?(クイックVote) 日本経済新聞 15.8.1
なお、TPPの経済的利益については⇒環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加国の関税概況:日本参加の損得は?,10.11.3
関連ニュース
Talks for Pacific Trade Deal Stumble,The New York Times,15.8.1
No
TPP deal, but Groser 'extremely confident',The New Zealand Herald,15.8.1