フランス水政策改革、生産主義助長で汚染は減らずと緑の党

農業情報研究所(WAPIC)

03.11.29

 フランスのエコロジー・持続可能開発省が16日、来年に予定されている水政策改革案大綱(Propositions d'orientations pour une réforme de la politique de l'eau)を発表した。最大の問題は農業による水汚染をどう減らすかだが、目玉は、「汚染者負担原則」を適用、農業者に対する投入窒素(鉱物肥料と家畜飼料)に応じた賦課金を創設することだ(⇒フランス議会調査委、硝酸塩汚染対策で肥料・飼料課税を提案―フランス硝酸塩汚染対策と汚染の現状―,03.11.2)。

 全国農業経営者連盟(FNSEA)は、農業者が汚染活動に対する課税の名目で年に3千200万ユーロを払っていると指摘、農業者がこのような賦課金を払うのは「問題外」とする声明(Courrier commun à Mme Roselyne Bachelot-Narquin, ministre de l’écologie et du développement durable )を出した。

 他方、緑の党は、これでは水の汚染は増え続けると批判する声明(S-EAU-S Pollution - Réaction presse du 16 décembre 2003)を発表した。それは、

 「工業畜産の家畜の最大限数を引き上げる(1ha当たりに散布される排泄物増加)意図によって、政府は水汚染の大部分に責任のある農業生産主義を助長し続ける」、

 「新予算に関する良き意図にもかかわらず、実際には農業による水汚染は増え続ける」、

 「この案は、農業省閣僚が河川・地下水の農薬汚染に関する都合の悪い報告の発表を阻止している(注)だけに、一層懸念される」、

 「汚染者負担原則の適用は結構だが、汚染を減らす方がベターだ」と、

収量、生産性、経営拡大、土地非利用型畜産に突っ走ることを制限する環境条件付けが重要問題と再確認する。

 FTAに狂奔、農業の構造改革だ、規模拡大だと叫んでいる人々は、この批判をどう受け止めるのだろうか。競争力強化を至上命題としてきたフランス農業のこの現状は、日本の将来を暗示する。それは、農村だけでなく、都市の環境と生活にも多大な脅威を生むことになる。

 (注)農業省の統計研究調査局(SCEES)はこのほど、2001年の小麦とトウモロコシに関する農薬使用状況に関する研究をまとめた。それは、使用量は全体として減っているが、環境と健康への影響がよく分かっていない農薬混合の慣行が増えていることを発見した。ところが、農相は、この発表を差し止めている。今年始めには、同相は硝酸塩散布状況に関する調査研究の発表も引き延ばした。

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農業情報研究所(WAPIC)

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