中国農業は化学肥料・農薬過剰使用で環境を悪化させているー中国専門家が警告

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.5

   中国の一流生態学専門家と言われる中国環境科学研究院のGao Jixi生態学研究所長が、化学肥料・農薬の過剰使用によって環境を悪化させている中国農業の現況に警告を発している。彼によると、それは、世界人口の22%を世界の耕作可能地のたった7%で養うことを可能にしている長い間国が誇ってきた奇跡の結果だ。彼は、「それは我々に大変に犠牲を強いる。化学肥料と農薬の大量使用は厳しい土壌・水・大気汚染をもたらしてきた」と言う。新華網が5日付けの記事で報じた。

 China's agriculture causing environmental deterioration,xinhua.net,7.5

 彼は、中国政府とイタリア政府が共催する7月3日から6日までの”中国-イタリア緑の週間”のフォーラムに向けて、農業が環境に及ぼす深刻な悪影響のリストを提出したのだという。

 それによると、「ますます多くの温暖化ガスが生み出されている。重金属の蓄積が土壌を硬化させ、肥沃度を減らしつつある。地表水は富栄養化し、地下水は硝酸塩で汚染されている」。

 彼によると、中国農民は毎年、4124万トンの化学肥料を使っており、これは農地1ha当たりでは400kgになる。これは先進国の1ha当たり225kgという安全限界をはるかに上回る。

 「中国で大量に使われる化学肥料である窒素肥料は、40%が有効に利用されているにすぎない。ほとんど半分が作物に吸収される前に蒸発するか、流れ出し、水・土壌・大気汚染を引き起こしている」。

 統計によれば、1985年から2000年の間に、1億4100万トン、1年当たりにして900万トンの窒素肥料が洗い流され、汚染物質に変わった。国の湖沼の75%、地下水の50%が汚染されている。

  中国は、この数十年、植物の病気や害虫と戦う最も有効な手段と見られてきた化学農薬の深刻な悪影響も蒙っている。中国は年々の農薬使用量は120万トンにのぼり、耕地の7%を汚染してきた。「農薬の過剰使用は生態系の均衡と作物用地の生物多様性を破壊する。農場に堆積した残留農薬は人間と家畜を毒に曝す恐れがある」、また「多くの農産物は農薬使用の基準を満たさないために輸出を阻止され、あるいは送り返され、数百万元の経済的損失も生じている」。

 中国農業ではプラスチック・フィルムも広く使われており、フィルムの大部分は非分解性で、根が水を吸収するのを妨げ、また地下水がしみでるのを妨げる恐れがある。分解性マルチの産物でさえ、分解の間に新たな有毒物質を生成するだろう。中国は毎年100万のマルチフィルムを生産しており、その10%が使用後に放置されている。

 さらに、中国の畜産農場の90%はいかなる環境影響評価も行っておらず、60%は必要な汚染防止・統御施設を欠いている。

 彼は、肥料の使用を減らし、総合防除・管理システムを採用し、生分解性マルチフィルムを使うことで、持続可能な農業発展を実現すべきだと言う。 

 しかし、食生活の変化と人口増加で食料需要がますます増加する一方で農地の減少は止まらないなか(China's arable land may continue to diminish: official ,Xinhua,7.3)、これをどうしたら実現できるのだろうか。それについては何も言及がない。

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