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CAP改革交渉 「エコ・レジーム」をめぐり袋小路に 出口はあるのか

 

 将来のEU共通農業政策(CAP)のあり方をめぐる欧州議会・閣僚理事会(27ヵ国関係閣僚会議)・欧州委員会の3者交渉がな難航、最終段階の交渉が27日朝から始まったが、野心的な環境プログラムを求める欧州議会と、農業者の官僚的・財政的拘束を緩めようとする閣僚理事会の対立が解けず、交渉は袋小路入りしてしまった。

 

 欧州議会は、2023年以後に適用される将来のCAPに関する閣僚理事会の新たな提案はその要求とかけ離れていると言う。閣僚理事会は202010月、改革後7年間の予算を3870億ユーロとし、そのうち2700億ユーロを農業者への直接援助とするCAP改革案を承認したが(、議会の要求は野心的に過ぎ、実現不能と言う。

 

 最大の争点は、環境プログラムに参加する農業者に奨励金を与えるという「エコ・レジーム」だ。議会は農業者直接援助の少なくとも30%をこれに当てるように要求する。理事会はこの上限を20%にし、この上限が達成されない場合の基金再配分などを要求する。

 

 理事会は「エコ・レジーム」の内容の「柔軟な」定義を要求し、議会はEUの環境及び気候変動戦略に関する戦略の各国一律の厳格な枠づけを要求する。

 

 危機対応のための予備費や条件不利地域援助など社会的側面での対立も解けない。

 

 閣僚理事会議長国・ポルトガルは交渉決着の6月への先送りを決め、ジュリアン・ドノルマンディー仏農相も議会の提案に基づく妥協は「幻想」だ、農業者は官僚制に飲み込まれてはならないと言っているということだ。

 

 フランス最強の農業者組合(サンジカ)・農業経営者連盟(FNSEA)が主導するEUの多数派農業サンジカ・Copa-Cogecaは、「所得が低下し、粗野な国際交渉に曝されている農業者が壮大な環境要求に応えるのは無理」と旧来の主張を繰り返すばかりである。

 

 交渉は6月に再開されようが、出口は見えない。

 

Press release - EU farm policy reform: Council must be more flexible - we cannot waste more time,European Parliament,21.5.28

Négociations dans l’impasse, entre écologie et « bureaucratie »(AFP),Agri Mutuel,21.5.28

Pas d’accord à Bruxelles, reprise des négociations en juin(AFP),Agri Mutuel,21.5.28

 

(注)

欧州議会 CAP改革に関する立場を採択 直接支払の30%は環境尊重農家に 農業情報研究所 .20.10.24

EU農相 CAP改革に合意 環境保護に一歩前進も援助の大半はファクトリーファームに 農業情報研究所20.10.22

EU CAP改革にむけた議論開始 めざすは欧州グリーンディールへの貢献 農業情報研究所20.10.21