米国外交問題有力機関　農業政策一新を勧告　貿易歪曲的補助金は全廃せよ

米国外交問題有力機関　農業政策一新を勧告　貿易歪曲的補助金は全廃せよ

06.9.28

米国の外交問題に関する議論をリードする独立・超党派的組織であるシカゴ外交問題評議会の農業タスクフォースが、2007年農業法による現行農業・食料・農村政策の根本的改変を要請する報告書を発表した。それは、貿易歪曲的農業補助金の廃止とともに、新たな農家セーフティネットの構築、米国農村・国の経済・公衆衛生・環境の真の必要性に応える農業支出を勧告する。

　このタスクフォースには、10人の前農務省（USDA）高官、4人の前米国議会議員、5人の経済学者、大規模食品・アグリビジネス企業の代表者、3つの農業者組織のリーダーと2つの環境保護団体のリーダーが含まれる。議会もこの勧告を軽視するわけにはいかないだろう。

　Full Report (PDF):Modernizing America's Farm and Food Policy: Vision for a New Direction,06.9.27
　Executive Summary (PDF)
　Press Release

　報告は先ず、現在の連邦農業支援プログラムは農業者所得を増加させ、急激な市場変動から生産者を保護しているとはいえ、意図せざる様々な結果も生んでいることを強調する。

　報告によれば、それは農場の集中を地価上昇の原因となっており、若い農業者の農地取得を難しくている。大部分の場合、市場の変化に応じた生産者の作物転換を妨げ、革新や消費者が望む生産物の開発への刺激が失われている。さらに、ドーハ･ラウンドの凍結につながるとともに、WTO紛争処理における米国の立場を脆弱なものにしている。

　報告は、2002年農業で導入されたカウンターサイクル支払（市場の変動に連動する価格下落相殺支払い）、融資不足払い、価格支持、連邦作物保険・災害支払などの商品特定的で、貿易歪曲的な助成プログラムの全廃を要請する。これらのプログラムは、貿易を歪曲せず、WTOルールに合致する新たなプログラムに置き換えられねばならない、2007年農業法は、貿易歪曲的補助金の廃止で浮いた金を、特定のタイプの生産あるいは市場条件に関連しない直接支払に振り向けるべきだと言う。

　また、すべての商品を対象とする収入保険プログラム、農業者の環境への貢献に基づく土地保全プログラム、研究・インフラプロジェクトなどの全農業部門が受益する公共財への投資増強を推奨する。これらの変更には時間がかかるだろうが、次期農業法が期限切れとなる5年から6年の間には実現できると言う。

　報告は、2007年7月で期限が切れる大統領の貿易促進権限の更新や、農業・食料部門に一層多くの労働力を提供するための移民ルールの改革も要請している。

　タスクフォースは、次期農業法に直接かかわるこのような問題とは別に、食料政策や更新可能なエネルギーの問題も取り上げている。

　食料政策に関しては、米国における肥満人口の増加を考慮した栄養プログラムを促進し、また低所得者に栄養のある食品を提供するフードスタンプ・プログラムもUSDA等が設けた栄養目標に関連づける努力が必要だと言う。

　更新可能なエネルギーに関しては、連邦政府はか化石燃料に代わるバイオ燃料の研究への支援を続けるべきだ、生産力の低い土地で栽培できるセルロース原料を利用する新たな技術の促進も必要だが、バイオ燃料産業の成熟と市場条件の改善とともに、バイオ燃料補助金や輸入関税から利益を得ている企業は他の燃料生産に与えられると同等なレベルの助成でやって行けるビジネスモデルを開発すべきだという。

　さらに、タスクフォースは、研究や技術支援への支出を増やし、水資源の利用や保全に重点を置く新たな土地保全プログラム、農外の仕事を創出するための農村社会の経済構造の多角化の支援などの必要性もあると言う。

関連ニュース
　US urged to act on farm subsidies,FT.com,9.27
http://www.ft.com/cms/s/3f2822d8-4e31-11db-bcbc-0000779e2340.html
Influential report urges end to US farm subsidies,Financial Times,9.28,p.3