台湾議員 米国産牛肉安全性確保のために米国・主要輸入国消費者の”連合”を

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.31

  台湾の野党の一つをなす台湾団結連盟(TSU)のョ幸媛議員が米国の牛肉安全管理システムを精査するための1週間の米国訪問(参照:台湾議会委員会 米国産牛飼育・と殺・輸出過程精査チームの米国への派遣を決定,06.6.28)からの帰朝後、台湾、日本、韓国、米国の消費者保護団体が米国産牛肉の安全性をもっと有効に監視するための連合を作るべきだと発表した。彼女は保健省が組織した米国の狂牛病対策精査に参加した全政党からの7人の議員のうちの一人である。米国当局者は予想通りに米国産牛肉の安全性を保証したが、いくつかの決定的問題には確信をもった答えをしなかった。安全管理システムの有効性にはなお疑問が残ると言う。

 TSU legislator voices concerns over US beef safety,Taipei Times,7.30
  http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2006/07/30/2003321022

  彼女が問題にしているのは、各牛の出所と出生地を記録する牛の”パスポート”システムが何時始動するのか、また高リスク牛がと畜前に完全な検査を受けるべきだという点に関する問題をどう扱うのかという彼女の問いに対して米国農務省(USDA)が答えなかったことだという。

 なお悪いことに、USDAは7月20日、高リスクと見られる牛の[BSE検査]頭数を当初の35万頭から4万頭に減らすことを決定した(米国 狂牛病サーベイランス計画縮小へ 米国の狂牛病は「歴史」の闇に,06.7.21)。彼女は、コンシューマーズ・ユニオンなど米国消費者団体が行った調査結果を引用、検査のために選別された牛が必ずしも高リスク牛でない可能性があるために、高リスク牛の採集過程に欠陥があるとも言う。

 彼女は、米国コンシューマーズ・ユニオンは、米国産牛肉の主要輸入国である台湾、日本、韓国の消費者団体との連合を結成、米国産牛肉の安全性管理システムに強力な影響力を行使、その安全性を確保することを考えていると報告する。彼女はこの提案を全面的に支持する、既に台湾や日本、韓国の消費者団体との”接触”は始まっていると言う。

 このような”接触”が実際に始まっているのかどうか、筆者は確認できない。しかし、日本政府が米国産牛肉輸入再開を決めてしまい、日本の消費者がこの決定を覆す手段をもたない以上、このような消費者の国際的”連合”の発想は重く受け止めねばならないだろう。

 それとも、日本の消費者は、「BSE感染リスクなど微々たるものだ。・・・日本人は、本当は肉をたらふく食べたいのに、満足に食べられない。まるで、自分の首を絞めているようなものだ。今後、食料資源としての牛肉を確保することが、さらに難しくなる。・・・一件落着となった米国産牛肉の輸入再開問題だが、資源貧困国ニッポンの課題は多い」(週刊ダイヤモンド、06年8月5日号 43頁)などと、輸入再開決定を大歓迎するのだろうか。

 こういう消費者は、牛肉消費の拡大が日本人だけでなく、人類の「首を絞め」つつあることだけは承知しておかねばならない(肉食か菜食かで食品生産による温暖化ガス排出量に大差ー米国の研究が菜食の勧め,06,4.28;肉摂取を減らせば生物多様性・人間の健康・持続可能な農業に便益ーオランダの研究,06,4.28;国連環境計画地球水アセスメント 水効率の悪い灌漑農業を止め、肉消費も減らせ,06.3.24)。