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米国環境保護庁(EPA)、水系アトラジンの監視を強化

農業情報研究所WAPIC)

03.2.7

 1月31日、米国環境保護庁(EPA)が、コーン、シュガーケーン、ソルガムなどの栽培や居住地の芝地の雑草抑制のために米国内で広く使われている除草剤・アトラジンによる汚染から飲料水となる水系を保護するための革新的で、攻撃的なプログラムを実施すると発表した(EPA ADOPTS AGGRESSIVE MEASURES ON HERBICIDE ATRAZINE)。

 アトラジン使用地域の一定のコミュニティーに入る未処理水に的を絞った監視を行い、EPAが設定した安全基準を越えるアトラジンが検出された場合には、その特定の流域におけるアトラジンの使用を禁止するという。また、EPAとの合意により、アトラジンの中心的供給者であるシンジェンタ社は、この除草剤の使用が多い時期に未処理飲料水を週ベースで監視する特別検査プログラムを実施、もし安全基準を越えていれば、その地域でのアトラジン使用が停止されるともいう。

 しかし、EPAは、飲料水へのリスクを減らすための予防措置や新たな特別措置が実施されることを条件に、アトラジンの継続使用を認めている。また、食品の関連したリスクは問題にならないし、居住地での使用や労働者によるアトラジンへの暴露は低度で、製品使用条件の変更で対応できるとしてきた。従って、今回のプログラムも、特別に汚染の危険度が高い地域に限定されている。EPAの未処理地表水の監視は、今年、処理水検査で基準値に近いか、それを超えていることが判明した200のサイトで始まる。

 ワシントン・ポスト紙(EPA Stops Short of Banning Herbicide,02.2.1)によれば、このようEPAプログラムは、この除草剤を使用禁止にすべきだという環境団体の要求の実現には程遠いという。同紙は、「自然資源防衛会議」の上級科学者・Jennifer Sassによる「我々はアトラジンに関する科学をレビューし、EPAが無害とするレベルでは危険であることが明らかになった」、いくつかのヨーロッパ諸国ではアトラジンを禁止したし、米国も禁止すべきだという発言を紹介している。

 最近の諸研究は、アトラジンのリスクが予想外に大きいのではないかという懸念を掻き立ててきた。EPAの今回の決定は、このような懸念の高まりに応えた一歩前進ではある。しかし、それで十分かどうかについては大きな疑問が残る。日本の農薬安全行政はこの決定をどう見るのであろうか。

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