農業情報研究所環境環境・自然保護・生物多様性2018127

飼育蜜蜂が野生ポリネーターを危機に追い込む ケンブリッジ大学の研究

飼育されている(家畜としての)蜜蜂(セイヨウミツバチ)はヨーロッパの野生ポリネーター(授粉動物)の減少という生物多様性の真の危機を生み出している。

過去10年、蜜蜂の減少やそれが作物生産に及ぼす悪影響に関する研究が爆発的に増え、その保護の必要性が叫ばれてきた。しかし、家畜としての蜜蜂は、資源の競合と病気の拡散によって野生のハチの減少に寄与している。

 果物やナタネなどの開花作物の近くに大量に導入されたセイヨウミツバチは、数日から数週間の開花期間が終わると周辺環境に移動、マルハナバチ、蛾、ハナアブなどから食料を奪い、病気を移す。飼育蜜蜂に打ち負かされた他のポリネーターは異常な速さで減少しており、ヨーロッパのハチの種の50%が絶滅の危機に曝されている。

 確かに蜜蜂は作物の授粉のために必要だ。とはいえ、その飼育は農業活動であり、野生動物保護と混同されてはならない。今や野生のポリネーターを直接保護する(養蜂)策(巣箱のサイズの制限や設置場所の規制など)が講じられねばならない。

 このように主張するケンブリッジ大学研究者の研究が現れた。

Conserving honey bees does not help wildlife,Science, Vol. 359, Issue 6374, pp. 392-39326 Jan 2018

蜜蜂を助けることは野生動物の助けにはならない。蜜蜂は野生ポリネーター同様、多くの作物にとって死活的に重用だ。しかし、野生種はポリネーターによる授粉を必要とする世界的に重要な作物の4分の3に必要なポリネーターサービスを提供しているという。

といっても、もちろんネオニコチノイド規制など、蜜蜂保護政策を否定するものではない。ネオニコチノイドはすべてのポリネーターを絶滅の危機に追いやる。

科学通信:ハチ(ポリネーター)とネオニコチノイド(北林寿信) 科学(岩波書店) 201711月号 pp.985-988

イギリスもネオニコチノイド全面禁止へ ポリネーター減少が食料生産に重大影響  17.11.11 

世界中の蜂蜜にネオ二コチノイド 半分近くは授粉動物に有害なレベル 17.10.6

ネオニコチノイドのハチの健康に対する影響―二つの最新研究の紹介,17.9.29