現在のバイオ燃料は持続不能 第二世代燃料にかけるとEU環境担当委員

農業情報研究所(WAPIC)

07.7.6

  欧州委員会が5日から今日まで、バイオ燃料の持続可能な開発を論議する世界の広範な関係者の会合を開いている。この会合には、EUからは、会合を主催するベニタ・フェレロワルトナー対外関係・欧州近隣国政策担当委員のほか、バローゾ委員長、アンドレス・ピエバルグス・エネルギー担当委員、ピーター・マンデルソン通商担当委員、ルイ・ミシェル開発・人道援助担当委員、スタブロス・ディマス環境担当委員が勢ぞろい、現EU議長国・ポルトガルのジョゼ・ソクラテス首相、ブラジル-EUサミットのためにブリュッセルを訪れているブラジルのルラ大統領、EU諸国の閣僚、ビジネス・学界・NGO代表者など、バイオ燃料にかかわる世界中の有力関係者が参加する。

 論議は、バイオ燃料の便益と問題を明らかにすべく、バイオ燃料助成政策、バイオ燃料国際貿易の開発、その生産と利用の環境リスク、バイオ燃料と途上国、研究活動の5つの中心問題に取り組むという。

 European Commission gathers key international players to discuss sustainable development of biofuels,07.7.3

 3月の首脳会議で、EUは2020年までに消費される輸送用エネルギーの最低10%をバイオ燃料に換えるべきと決めた*。しかし、最近、このような目標は食料や環境を犠牲とすることなしには達成できないという批判が高まっている。この目標を達成するにはインドネシア、ブラジル等からの輸入に頼らざるを得ずこれらの国におけるバイオ燃料やその原料の生産拡大は気候変動を加速し、生物多様性を破壊し、地域社会を滅亡させる恐れがあると、輸入の”モラトリアム”の要求まで突きつけられている(世界の多数の団体がEUのバイオ燃料突進のモラトリアムを要請,07.6.28)。

 *首脳会議(EUの最高決定機関)は、2020年までにEUの全エネルギー消費中の20%を更新可能なエネルギーにするという拘束力ある目標の設定を承認するとともに、2020年までにEUの全輸送用石油・ディーゼル消費の10%をバイオ燃料とするという拘束力ある目標が、すべてのEU諸国によって達成され、費用効率的な方法で導入されるべきであると認めた。ただ、この目標を拘束力あるものにするためには、生産が持続可能で、第二世代バイオ燃料(現在の穀物・油料作物・砂糖作物を原料としないバイオ燃料)が商業的に利用できるようになること、及び適切なブレンド・レベルを許すための”燃料品質指令”の修正が必要条件となるとしている(BRUSSELS EUROPEAN COUNCIL - 8/9 MARCH 2007 - PRESIDENCY CONCLUSIONS)。

 欧州環境庁(EEA)は昨年6月、EU25ヵ国は、2030年に必要とされるな一次エネルギーの15-16%を、環境を傷つけることなく、バイオエネルギーで賄えるという研究を発表した。”環境を傷つけることなく”というのは、@2030年、農地の最低30%が、加盟国において環境保全的農業に当てられる、A粗放的に耕作される農地面積が維持される=草地・オリーブ園・デヘサス(スペイン南部・ポルトガルの少雨地域で農畜産を維持するためにと作り出されたサバンナに似た土地)が耕地に転換されない、B集約耕作農地の3%ほどが生態系保全地域としてセットアサイド(休耕)される、C環境圧力が低いバイオエネルギー作物が利用されるなどの農業にかかわる条件に加え、残滓や伐木が許されない保護林区域の維持、葉と根の除去は許されないといった森林保護にかかわる条件が満たされることを意味する。また、廃棄物の最小化戦略が実施されねばならない。

 EEA:How much bioenergy can Europe produce without harming the environment?,06.6

 しかし、この年11月には、フランス農業省統計研究局は、2010年までにバイオ燃料の比率を7%とするというフランスの目標を達成するためにさえ、こんな条件はとても満たせないとする新たな研究を発表した。それは、この目標の達成のためには、110万fの休耕地を含む170万fの耕地から調達せねばならないと言う(フランス バイオ燃料目標達成のために70万haの食料用耕地が犠牲の計算,06.11.22)。

 このように、とりわけバイオ燃料の環境影響への高まる批判で、欧州委員会もバイオ燃料戦略の根本的見直しを迫られた。それがこの会合につながったのだろう。

 会合参加者の間でどんな議論があったのかは未だわからない。ただ、バローゾ委員長、ピエバルグス・エネルギー担当委員・マンデルソン通商担当委員、ディマス環境担当委員などの5日の発言は、欧州委員会のウェブページで公表された。ここでは、バイオ燃料問題を環境問題の視点から取り上げたディマス委員の発言を紹介する。その主張は、他のすべての委員も共有しているようだ。

 Stavros DIMAS;Member of the European Commission, responsible for environment:Credible and serious choices about biofuels;Internationnal Biofuels Conference,  05 July 2007, Brussels,07.7.5

 彼は、バイオ燃料は気候変動への取り組みばかりでなく、持続可能で安定したエネルギー供給の達成においても重要な役割りを果たすと考えられているが、それには非常に異なる性質を持つ様々なものがあり、中には環境や社会への圧力になるものもあると認める。 

 例えば、トウモロコシを栽培するにも、バイオ燃料に転換するのにも大量のエネルギーが要る。作物栽培には大量の肥料や農薬も必要で、これらはそれ自体、環境・エネルギーコストを持つ。

 非常に高価なバイオ燃料もある。原油価格を[1バレル]56ドルとすると、石油1リットルの生産には平均30ユーロセントかかるが、同じエネルギー価のエタノール1リットルの生産には、ブラジルで37セント、米国では45セント、ヨーロッパでは75セントかかる。従って、この方法で生産されるバイオ燃料は、補助金が払われるときにしか、経済的に生き残れない。

 バイオ燃料の原料を生産するスペースの問題もある。”2006年6月のワールドウォッチ研究所”の研究は[オリジナルはOECDの研究と思われるーWAPIC]、現在最も普通に見られるバイオ燃料について見れば、全燃料消費の10%を生産するためにブラジルは農地の3%しか必要としないが、米国では30%、ヨーロッパでは72%も必要になることを示している。

 さらに、食料関連原料のバイオ燃料用栽培は、現在食料生産の利用されている土地を乗っ取ることになり、この影響は倫理的問題も生み出す。それは、貧困のなかで暮らす5000万のメキシコ人の主要カロリー源であるトルティーヤの価格の急騰の原因をなしたと思われ、飢餓に直面する他の途上国も同様の問題に直面することになるだろう。米国でさえ、バイオ燃料産業の成長で、トウモロコシ、油料種子、その他の穀物だけでなく、無関係に見える作物や製品の価格まで急騰している。昨日発表されたOECDの研究1)は、バイオ燃料が食料市場価格の相当な上昇につながる可能性を示唆している。

 環境の観点からすると、バイオ燃料は、現在のものでも硫黄や多環芳香族物質を含まない。しかし、そのライフサイクルで考えれば、二酸化炭素生産に関して必ずしも有利ではないし、健康に非常に有害な揮発性有機化合物(VOCs)の量を増加させる可能性もある。

 森林破壊の拡大も非常に深刻なリスクだ。これは生物多様性に悪影響を与え、砂漠化を加速し、難民を生み出し2)、洪水のリスクを高める。熱帯雨林が1haあたり200ドルから500ドルと推定される作物地に転換されている。この同じ面積の森林は、二酸化炭素1トンが20ドルで取引されるとすると、およそ1万ドルの二酸化炭素貯蔵価値がある。農民は、200ドルと引き換えに、1万ドルの資産を破壊している。

 バイオ燃料生産は、水供給への巨大な圧力にもなり、多くの途上国・先進国で既に希少化している資源に悪影響を与える恐れがある。単一作物の栽培への集中は深刻な土壌貧困化を引き起こし、砂漠化のリスクが増すだけだ。

 何のことはない。多くの批判者が言ってきたことをすべて認めているわけだ。

 しかし、EUの10%目標を引っ込めるべきではないと言う。何故なら、第一に、持続可能な”第二世代”バイオ燃料が商業的に利用できるようになるからだ。環境や社会発展への追加圧力がない非食料作物や廃棄バイオマスからバイオ燃料を作る方法の研究・開発が進んでいる。例えば、セルロースが多い有機物からエタノールを生産する技術の開発。このような第二世代バイオ燃料は通常の燃料や第一世代バイオ燃料に比べて二酸化炭素生産を減らすことができる。また、EUの農業生産能力の最適利用も保証する。

 もう一つは、欧州委員会が最近提案した”燃料品質指令”だ。これは、輸送燃料供給者に対し、EU市場に入る燃料のライフサイクル温室効果ガス排出を徐々に減らすように義務づける。この制度は、環境影響が最小限のバイオ燃料の利用を奨励すると言う。

 ただし、フェレロワルトナー対外関係・欧州近隣国政策担当委員は、同席したルラ大統領を前に、ブラジルの経験はバイオ燃料生産投資を考える他国の特に適切な参考になると述べた。 また、マンデルソン委員は、途上国が環境的に持続不能な方向に突進することになるようなバイオ燃料への転換を許すことはできないとしながらも、[EUのバイオ燃料よりも]安価で、クリーンなバイオ燃料の大量輸入を受け入れるべきだと述べる。このようなバイオ燃料とは、ブラジルのエタノールのことに違いない。同じ日、EUとブラジルはエネルギー協力を深める協定も結んだ。協定は、とりわけバイオ燃料分野での二国間協力の強化を目指すという。

 Benita Ferrero-Waldner;European Commissioner for External Relations and European Neighbourhood Policy;Opening Speech;International Conference on Biofuels;Brussels, 5 July 2007,07.7.5
 
Peter Mandelson;EU Trade Commissioner;The biofuel challenge:Biofuel Conference organised by the European Commission;Charlemagne, European Commission, 5 July 2007 at 11h00,07.7.5
 
The European Union deepens energy relations with Brazil,07.7.5

 ディマス委員がブラジルの経験をどう見ているかは分からない。彼の目には、それほど好ましくは映っていない かもしれない。しかし、小農民を追い払い、牧草地を次々とサトウキビ畑に変え* 、そのあおりでアマゾン森林に牧畜業者が進出するブラジルで生産されるエタノールが、環境影響最小限のバイオ燃料と認められる可能性は十分にありそうだ。第二世代バイオ燃料が現在のトウモロコシやサトウキビに由来するエタノールに代わる主要バイオ燃料となるのは、2020年よりもずっと後のことかもしれない。

  *サンパウロ・サトウキビ製造者ユニオンによると、今後15年の間に、現在のブラジルの草地のおよそ3分の1、1億fがサトウキビ生産に転換されると予想される(Peter Blachbum,Brazil could double output by 2014-UNICA,Reuters,06.8.4,http://tinyurt.com/ypqrrw)。

 だが、例え第二世代バイオ燃料の大々的利用が可能になったとしても、第二世代なら何でもいいというわけにもいかない。先の国連報告(国連バイオエネルギー影響評価報告 バイオ燃料産業急拡大に警告,07.5.10)は次のように指摘する。

 ”将来は、農業・林業残滓(廃棄物)や他の廃棄物に依存する第二世代技術がバイオ燃料生産のための土地要求を大きく減らす可能性がある。同時に、このような残滓は、土壌と健全な生態系を維持するために必要で、一定量が地面に残されねばならないことを認めることも重要だ。伐採残物は、重要な森林栄養源で、雨、太陽、風から土壌を保護し、侵食のリスクを減らす。農業残滓は農地で同様な役割りを果たす。「土壌の劣化と収量減少を避けるためにどれだけの残滓を安全に取り除けるかは、一層の研究が必要だ」”。

 ”保全的農業技術は、新たな土壌有機物の形成で炭素を吸収し、気候変動の懸念への取り組みを助けることができる。しかし、もしこの有機物の大部分がバイオエネルギーに転換されるとすれば、広大な土地の二酸化炭素固定能力が減少、大気中への炭素再放出に結果するだろう。特に(作物残滓を含む)原料品全体が利用できる第二世代燃料については、収穫物の一定割合を畑に残すように農民を説得するのは困難だろう”。

 ”保護緩衝帯や野生動物の回廊としての永年作物の利用は、化学物質流出の削減や小鳥その他の野生動物のハビタットを提供する環境便益がある。ヤトロファのような一定の作物は、劣化した土地条件の改良を助けることで砂漠化を反転できる。しかし、一層持続可能なエネルギー作物でさえ、自然の森林や草原に変わることはできない”。

 ”エネルギー目的で栽培される多種の、一層持続可能な作物でさえ、もし野生の森林や草地に取って代わるとすれば、否定的環境影響があり得る。これらのあり得る影響には、水域の富栄養化、土壌と地表水の酸化、オゾン層破壊(これらすべてが農業からの窒素放出に関連している)や生物多様性とそれに関連した機能の喪失が含まれる。最後に、草地の縮小に関連した遊牧生活スタイルの喪失と、これらの土地に依存する家畜化された、あるいは野生の草食動物のための飼料生産の喪失は、重大な経済的・社会的影響を持つだろう”。

 食料や環境に多大な影響を与える厖大な土地を使っても、気候変動抑制に大きく貢献するほどの大量の輸送用バイオ燃料を生産することはできない。これは、今やはっきりしている。そんなものに賭けるよりも、1カロリーの食料を生産し・流通させるのに10-15カロリーは下回らないエネルギーを消費するような、やはりビッグ・アグリビジネスが支配する工業的食料システム(環境と食品安全を脅かす食料供給システムー講演資料,05.10.17)のエネルギー浪費3)を止めることが先決ではないか。

 1)OECD-FAO Agricultural Outlook 2007-2016 。2006-2007年、天候要因やバイオ燃料生産の増大による穀物在庫減少、飼料コスト上昇や特にEUとオーストラリアの供給減少と重なった乳製品の需要増大などで、穀物、乳製品の価格が急騰、油料種子価格も上昇するなど、砂糖を除く食料価格は全般的に大きく上昇したが、今後10年の食料価格は、天候要因など不確定要因を考慮外に置けば現在の価格レベルよりは低下するものの、バイオ燃料生産増大という構造的要因が下支えすると予想した’(ブラジル等からの供給が大きく増加する砂糖は除く)。この価格の高止まりは、特に食料純輸入国や都市貧民の食料へのアクセスを難しくする。また、バイオ燃料生産増加が引き起こすその原料価格の上昇は原料作物生産者には利益となるが、家畜飼料のためにこれら原料作物を必要とする農民にはコスト増加と所得低下をもたらすという。

 この報告によると、2003年から2006年のかけて倍増した米国のトウモロコシ由来のエタノールの生産は、2016年までにはさらに倍増、460億リットルに達する。それに応じて、エタノール生産のために使われるトウモロコシも、2006年の5500万トン(生産量の20%)から、2016年には1億1000万トン(同32%)に増加する。他方、米国のバイオディーゼル生産は、原料(大豆油)コストからくる収益性の低さのために低迷する。バイオディーゼル生産のための大豆油利用は、2007年の200万トンから2011年には230万トンに増えるだけで、それ以上の増加は見込めないという。

 EUについては、主流のバイオ燃料は油料種子、特に菜種から作られるバイオディーゼルだが、今後、小麦やトウモロコシからのエタノールがEU市場で重要になってくる。バイオ燃料全体の利用量は、2006年から2010年の間に170%増加する。しかし、輸送用燃料中のバイオ燃料のシェアは、これを5.75%(エネルギー単位で)にまで高めるというバイオ燃料指令の目標を大きく下回る3.3%にしかならないと予想する。それにもかかわらず、原料作物需要は大きく増える。特に利用増加が大きいのは小麦で、2016年のバイオ燃料用利用は1800トン、現在の12倍になる。油料種子とトウモロコシはそれほどでもないが、それぞれ2100万トン、520万トンへ大きく増加する。

 カナダのバイオ燃料生産は始まったばかりだが、カナダ政府は、2010年までにガソリンへの5%のエタノール・ブレンド、2012年までに道路輸送用・暖房用ディーゼルへの2%のバイオディーゼル・ブレンドを義務づけている。この目標の達成を前提に予測すると、大部分はトウモロコシ、一部は小麦を原料とするエタノールの生産は、2006年の5億5000万リットルから2009年には19億リットルに増える。バイオディーゼル生産は2006年の7000万リットルから2012年には6億リットルに増える。バイオディーゼルのおよそ半分は油料種子、残りはイエロー・グ リースとタローを原料に生産される。エタノール生産のためのトウモロコシ利用は2006年の100万トン(国内生産の4%)から2008年(それ以後の伸びは小さい)に340万トン(同13%)に増える。小麦の利用はそれほど大きくないが、2016年には国内生産の5.5%ほどがエタノール生産に利用されることになる。

 中国のエタノール生産は着実に増加、2006年の15億リットルから2016年には38億リットルに増加する。トウモロコシ以外の原料も利用され、利用拡大が探求されているが、2016年においても、大部分はトウモロコシから生産されると予想される。エタノール生産のためのトウモロコシ利用は、2006年の350万トンから、2016年には900万トンに増えると予想される。

 ほとんどすべてがサトウキビに由来するブラジルのエタノール生産は、2016年には2006年よりも145%増え、440億リットルに達すると予想される。砂糖1トン当たりのエタノール収量は増加すると予想され、エタノール生産のためのサトウキビ利用は同じ比率では増えない。しかし、10年で120%以上増え、サトウキビ総生産のうちエタノール生産に利用されるサトウキビの比率は、現在の50%ほどから60%ほどに増えると予想される。とはいえ、これは砂糖生産の制約にはならないし、砂糖輸出も増える。オーストラリア、タイなどの主要砂糖生産国の生産・輸出も増えるから、砂糖価格が大きく上昇することはありそうもない。

 2)先月末に発表された国際会議「砂漠化と国際緊急政策」(2006年12月)の成果をまとめた国連大学の報告は、今後30年間に起きるであろう砂漠化が地域住民の大量移住を引き起こす恐れがあり、国際的な安定に差し迫った脅威を与えていると警告、砂漠化の問題に対処するための政策改革を提言している。

 United Nations University,Desertification: Experts Prescribe Global Policy Overhaul to Avoid Looming Mass Migrations、07.6.28 

 他方、同じ先月末、国連環境計画は、現在の世界で最も深刻な難民問題を生み出しているスーダン・ダルフール紛争の背後には、ダルフール地域の農地を砂漠に変えつつある気候変動があるとする研究報告を発表している。国連大学報告が警告する現実は既に起きているわけだ。この報告によると、森林縮小がスーダンにおける砂漠化を加速し、大部分の地域の作物収量が70%近く低下している。それが、定住農耕民、遊牧民、機械化農民の間の生き残りをかけた土地をめぐる争いを激化させている。それが紛争の唯一の原因ではないが、この問題が解消されないかぎり、和平も永続しないだろう。

 スーダンの森林面積は1990年以来、11.6%減少した。ダルフールだけでも、年率1.2%の森林破壊が起きている。今後10年のうちに森林が使い尽くされる可能性がある。この森林破壊は、主に燃料用木材の需要に駆り立てられたものだという。

 国連食糧農業機関(FAO)をはじめとするバイオエネルギー唱道者は、このような形での森林破壊を防ぎ、また苛酷な薪採集・運搬労働や煤煙がもたらす健康被害を軽減するためにこそ、家畜の糞尿も含む有機廃棄物から作られる”モダン”な固形・液体・気体バイオ燃料の地域レベルの開発・普及を推進してきた。それは、今起きているバイオ燃料ブームとは無縁のものだったはずである。

 UNEP,Sudan Post-Conflict Environmental Assessment,07.6
 http://www.unep.org/sudan/
  SUDAN: Climate change - only one cause among many for Darfur conflict,IRIN,07.6.28
  http://www.irinnews.org/Report.aspx?ReportId=72985

 3)Stop the agrofuel craze!,Grain,07.06,p.7