米穀物メジャー等 作物残滓の飼料・エネルギー 利用の持続可能性で共同研究

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.29

 シカゴ・トリビューン紙によると、穀物メジャー・ADM、農業装置等メーカー・Deere & Co.、農業バイテク企業・モンサントの3社が26日、作物残滓の飼料やバイオエネルギー 製品への転換能力に関する研究で共同することに合意した。

 ADM, Deere, Monsanto team up on uses for crop residue,Chicago Tribune,8.26
 http://www.chicagotribune.com/business/chi-adm-deere-monsanto-aug26,0,6240015.story

 研究は、”コーン・ストーバー”(トウモロコシの茎葉穂軸部)として知られるものを収穫し・貯蔵し・輸送する経済的、環境的に持続可能な方法があるかどうかを検討する。

 3社によると、コーン・ストーバーは動物飼料、スチームや電気を生み出すバイオマス、バイオ燃料生産のためのセルロース系原料として使うことができる。通常は畑に放置され、土壌浸食の軽減や新たな土壌有機物の生成を助けている。

 ADMの研究責任者によると、飼料とエネルギー のための非食料原料の利用は、(人口増加とともに)増加する食料とエネルギーの需要増加に対して農業が持続可能な方法で応えるための一つの方法となる。ガソリンに代わるトウモロコシ原料エタノールの生産が急増、トウモロコシ価格を吊り上げているから、ストーバー利用への関心が高まっている。

 しかし、茎、葉、穂軸は土壌栄養分も提供するから、研究者は、ストーバーがエタノール生産のために取り去られるとしたらどんなトレードオフが生じるかも調べている。


 日本では、稲藁などからのセルローズ系エタノール生産に関しての「経済的、環境的に持続可能な方法があるかどうか」の検討など思いも及ばない。”食料と競合しない”稲藁などの作物残滓からのエタノール生産の開発と拡大が何の疑問もなく受け入れられ、政策的にも推し進められようとしている。

 米国農務省農業研究局の研究者は既に、トウモロコシの茎は土壌浸食の防止と土壌有機物のレベルの維持のために畑に残さねばならず、土壌浸食の恐れのある畑で生産されたトウモロコシの茎はすべて畑に戻さなばならない、土壌浸食の恐れのない畑で生産されたトウモロコシの茎に限ってその半分をエタノール生産に振り向けることができるという研究成果を出している(→マスコミにも広がる食料と競合するバイオ燃料への疑念 が、食料と競合しなければよい?,07.5.14)。

 日本では、農学知識皆無のバイオ燃料専門研究者・技術者はもちろん、農学者でさえこのような研究に手をつけている風がない。 しかし、化学肥料価格が暴騰するなか、直接にか、家畜飼料→糞尿を介して間接的にか、土に戻される作物残滓の農業生産における役割はますます大きくなるだろう。それを何の疑念もなくバイオ燃料としてしまうのでは、日本は”持続不能な”バイオ燃料の推進で世界最先端を走ることになるだろう。

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 イーワード:アグリビジネス、バイオ燃料、ADM Deere、モンサント、セルロース系エタノール、コーン・ストーバー、トウモロコシ、稲藁、土壌侵食、土壌有機物