農業情報研究所環境エネルギーニュース:2014年6 月14日

 EU閣僚 食料ベースバイオ燃料は輸送エネルギーの7%まで バイオ燃料をめぐるバトルはまだ続く?

 EU諸国のエネルギー相(閣僚理事会)が613日、食料作物から作られるバイオ燃料(第一世代バイオ燃料)の2020年の消費目標を輸送エネルギー消費の最大7%にとどめるという「間接的土地利用変化指令」案で政治的合意に達した。

  Agreement on indirect land-use change directive at the Council,14.6.13
http://www.consilium.europa.eu/homepage/highlights/agreement-on-indirect-land-use-change-directive-at-the-council?lang=en

  2008年に採択された再生可能エネルギー利用促進指令は、輸送エネルギー中の再生可能エネルギー(バイオ燃料)の比率を2020年までに10%にすることを義務付けていた。これは、バイオ燃料の原料となる食料作物の需要増大が食料価格を吊り上げるだけでなく、森林の食料生産用地への転換などの「間接的土地利用変化」を呼び起こし、温室効果ガスの削減どころか増加にもつながりかねないという批判を巻き起こす。

 このような批判に応え、欧州委員会は1210月、食料作物ベースのバイオ燃料の比率は5%にとどめ、残り5%はこのような間接的土地利用変化を起こさない「先進的バイオ燃料」などで満たすという提案を行う。

 しかし、それでは2008年指令を受けて業界が積極的に行った投資が回収できないことになる。バイオ燃料産業・農業界の反撃で、欧州議会は昨年年9月、欧州委の言う5%を6%に引き上げるとともに、農業・林業廃棄物や藻類由来の第二・第三世代のバイオ燃料の比率を2.5%に高め、残り1.5%の再生可能エネルギーは電気自動車が供給することで合意した。

 ところが、業界はこれさえも容認できないとして、欧州議会に猛烈に働きかける。輸送燃料中のバイオ燃料比率は既にこのレベルに達している。第二・第三世代のバイオ燃料の比率は微々たるもので、今後大きく伸びる見込みはない。他方、第一世代バイオ燃料の生産能力は、既に輸送エネルギーの10%を超えるレベルに達している。6%では今迄の投資も回収できないことは明らかで、業界の反発も当然のことである。

 業界の巻き返しを受けた欧州議会は昨年10月、上記の合意を法案化する作業を無期限に延期してしまった。とはいえ、規制が今後どうなるか分からなければ、業界は退くも進むもできない。そこで閣僚たち、行き詰まりを打開するために、さらに1%引き上げることで妥協を図ったのだろう。しかし、この「政治的合意」は、欧州議会の承認によって初めて最終決定となる。極右、EUそのものの否定派が大きく勢力を伸ばした欧州議会がこれをすんなり受け入れるだろうか。 

 業界は7%でもなお不満だろう。既に輸送エネルギー中のバイオ燃料の比率は、ドイツ、フランスで7%、イタリアでも6%に達し、未だ持続可能性認証済みのバイオ燃料がゼロのスペインも、認証が進めば、ここでも一気に7%を超えるだろう(バイオ燃料をめぐる国際動向)。7%が最終決定となれば、EUのバイオ燃料産業は今後の発展の余地をほぼ完全に失うことになる。

 バイオ燃料をめぐるEUのバトルは何時終わるのだろうか?

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