農業情報研究所環境森林>ニュース:2018128

持続可能なパームオイル認証は森林破壊減少につながっていない 新研究

 アブラヤシの実から採取されるパームオイルは食用、オレオケミカル、バイオディーゼル等幅広い用途を持ち、その需要は世界的レベルで拡大を続け、今や世界で最も多量に生産される植物油となっている。他方、それを生産するためのアブラヤシ・プランテーション造成は熱帯雨林破壊の最大の元凶とされ(インドネシア パームオイルがオランウータン殺し、森林破壊の最大の元凶にも,11.11.25・・・)、国際的批判を浴びてきた。このような国際的風圧をかわすべく考案されたのが持続可能なパームオイル認証制度(RSPO)だ。今や多くの大企業や国がこの認証を受けたパームオイルのみを購入あるいは生産すると約束している(ユニリーバ 持続可能なパームオイルで森林破壊ストップと新聞一面広告,10.4.23等々)。

 しかし、それによって森林破壊が減速したという話は聞かない。認証制度がどれほど森林破壊の歯止めとなっているかは不確かだ(持続可能なパームオイル円卓会議(RSPO)がオランウータン絶滅を加速,08.9.10)。果たして、認証は森林破壊の大した減少にはつながっていないことを立証する新たな研究が現れた。

 Effect of oil palm sustainability certification on deforestation and fire in Indonesia,PNAS 2018 January, 115 (1) 121-126

 米国科学アカデミー紀要(PNAS)最新号に発表されたこの研究は、RSPO認証・非認証プランテーション(∼188,000 km2)のデータを使用、リモートセンシングで2001年から2015年までの森林破壊と火災(火付け)に対する認証の影響を割り出した。

 森林喪失と火災はRSPO認証後も続いたが、認証は33%の森林破壊減少(年率9.8%から6.6%へ)につながっていた。しかし、大部分の認証プランテーションは、認証を受けたときに僅かばかり残った森林を囲い込んだものだった。認証エリアは、インドネシアのオイルプランテーション内に残る森林の1%にも達していない。その上、認証は泥炭地森林の喪失(大量の温室効果ガス排出)や火災発見率と何の因果関係もなかった。

 RSPOが熱帯雨林破壊の減少の効果を生み出すためには一層広範な森林地域での認証、泥炭地のプランテーション転換を避ける厳格な認証要件、認証区域のルーチンな監視が必要になるという。