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韓国:農産物関税削減案を発表、コメは途上国扱いの6.7%下げ

農業情報研究所(WAPIC)

03.2.12

 韓国マスコミ報道によると()、韓国政府(農林省)は、9日、目下のWTO農業における関税と国内補助金の削減案を明かにした。基本食糧品の輸入関税下げ率は先進国10%、途上国6.7%とするという。韓国は途上国扱いで、コメの輸入関税率は6.7%切り下げ、370%とすることを希望しているという。政府は、先頃、コメの政府買入れ価格を、1948年以来初めて、2%引き下げる計画を発表しており、これに続く今回の関税率切り下げの提案は国内生産者の強い怒りを買うことは間違いない。

 先進国における基本食糧品以外のすべての輸入農産物品目の関税については、6年間で、最低限15%の切り下げを伴う平均36%の切り下げを提案する。途上国については、10年間で先進国の3分の2に相当する切り下げとする。「最低限15%の切り下げを伴う平均36%の切り下げ」というのは、EUが提案し、日本も追随すると言われている案とまったく同じである。途上国の扱いについては、EU提案(2)は数値は示しておらず、「一層の関税引き下げを容易にし、またセンシティブな農作物に関する途上国の関心に応えるために、食糧安全保障確保のための特別セーフ・ガード措置が途上国に拡張されるべきである。途上国が食糧安全保障とその他の多面的機能にかかわる関心事項に関する正当な目標を達成するために必要であるならば、実質的により低い関税引き下げ約束が合意されるべきである」と述べるにとどまっている。

 国内補助金については、韓国政府は、先進国が、6年間で、非輸出品目に関係するもの20%、輸出品目に関係するもの55%削減すべきと示唆しているという。途上国の義務的削減率は先進国の3分の2にとどめる。韓国のコメ生産者への国内補助金は、10年間で13.5%とするとしており、この場合にも途上国扱いを求めていることになる。ちなみに、EUは「ウルグアイ・ラウンドでなされた約束のレベルから出発して、助成合計量(AMS)を55%削減する」とし、途上国については「開発目的での農業部門支持の可能性を与えること。これは、このような支持が貿易歪曲的助成に計算されないことを意味する」と特別扱いを提案している。国内補助金に関しては、EU提案よりもはるかに消極的な削減案である。

 このような提案は国内生産者ばかりではなく、農産物輸出国の強い怒りも買うことになろう。米国は、輸入関税については、すべての農産物関税(割当外関税及び関税のみの品目)を対象に、高い関税ほど引き下げ幅を大きくし、5年間かけてすべての個別関税を25%を越えないところまで切り下げ、さらにすべての農産物関税の最終的廃止のための期限に合意するように提案している(3)。途上国の特別扱いは認めていない。コメ関税率を370%とする韓国の提案は、米国提案とはあまりにかけ離れている。オーストラリアを盟主とする農産物輸出国グループ・「ケアンズ・グループ」の提案も米国案と大差がない。

 国内補助金についても、米国は、すべての国の貿易歪曲的支持(AMS)の使用を、現在の上限を5年間で削減し、農業生産価額の5%に制限するように提案しているし(途上国の特別の扱いは認めているが、OECD加盟国である韓国の途上国扱いは認めないであろう)、ケアンズ・グループも大幅削減を求めている。OECDの推計によれば、韓国の2001年の生産者助成相当額は生産者受取価額の64%(オーストラリアは4%、米国は21%、EUは35%、日本は59%)となっており、その93%(日本は90%)までがAMSに含まれる価格支持によるものである。従って、国内補助金に関しても、米国と韓国の提案内容はかけ離れたものとなる。

 韓国は、EUや日本など共に構成する「非貿易関心事項グループ」に拠って米豪の主張に対抗することになる。

 (1)Government Plans to Reduce Rice Tariff 6.7%,The Korea Times,2.10
 
(2)EU提案については、EUのWTO農業交渉提案(12.16発表)(02.12.17)を参照。
 
(3)米国提案については、米国のWTO農業提案(要約版)(02.7.27)を参照。

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