農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2015年2月5日

為替操作禁止のない貿易協定は支持しない 米議会下院歳入委員長も

   オバマ政府が貿易促進権限(TPA)法(ファスト・トラック法)に対する議会の支持を得るためにはTPP交渉において米国の貿易相手に為替操作をしないと約束させねばならないというオリン・ハッチ上院財政委員会委員長の発言については先日伝えたばかりだが(米上院財政委員長  オバマ政府はTPP交渉で為替操作禁止を要求せよ ファスト・トラックにまた難題)、 ポール・ライアン下院歳入委員長も1月4日、同様な発言をしたそうである。

 UPDATE 1-US lawmaker urges caution tackling currency in trade deals,Reuters,15.2.4

 両院共和党要人がこれでは、輸出品価格を下げるために自国通貨を故意に弱める政策(例えば現在の日本の円安誘導策)を取らないように強制する条項を含まない貿易協定は到底米議会の支持を得られないだろう。(このところの円安で海外事業の国内回帰も考えいるという輸出企業、それでもTPP支持ですか?)

 ライアン委員長は、TPA導入に向けた動きが速やかに進むことを期待するが、確かな期限は考えていない、交渉中の協定の草案への議員のアクセスの改善の問題もなお未解決だとも言う。

 彼はTPP交渉の妥結前にファスト・トラック法を通したいと言う。しかし、政府職員は、どんな協定(合意)も議会が投票できる形の法文に直すには最低6か月かかる、もし今年中の投票がなければ、大統領選でこんな投票の出番はなくなってしまう恐れがあると言っているそうである。

 日本を含む米国以外の国々の交渉官、担当大臣さま、一体何をしてきたのでしょう、何を考えているのでしょう。TPP交渉は、今までの米国が絡むすべての貿易交渉と同様、各国政府と米国政府との交渉ではなく、各国政府と米国議会との交渉であることをお忘れでないでしょうか。

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