NAFTA委員会(JPAC)、メキシコへのGMコーン輸入モラトリアムを勧告

農業情報研究所

04.4.14

 北米自由貿易協定(NAFTA)に付属する北米環境協力協定(NAAEC)がカバーするすべての事柄について各国環境担当大臣で構成される理事会(決定機関)に意見を与える共同諮問委員会(JPAC)が13日、メキシコへの遺伝子組み換え(GM)コーンの輸入のモラトリアムを勧告した(⇒As per the NAAEC agreement, the JPAC provides its initial recommendations to the NAFTA ministers on transgenic maize in Mexico)。JPACは、カナダ、米国、メキシコの各国政府によりそれぞれ5名ずつ指名される15人で構成される独立公的委員会である。勧告は重い意味を持つ。

 勧告は、3月11日にメキシコで開催された環境協力委員会(CEC)のトウモロコシと生物多様性に関するシンポジウムで出された意見を反映するものである。シンポジウムには先住民・農民を含む数百人が参加、表明された多種多様なコメントは、この複雑で論争的な主題に非常に「人間的な顔」をもたらしたという。JPACは、「生物多様性の保存は文化的多様性の保護と分離できないと強く感じる」、「実際、すべての分析は持続可能な発展と環境・経済・社会・文化的インパクトの相互作用の広範な理解に基づかねばならない」と言う。

 CECへの勧告文書では、次のような思想と所見が示されている。

 ・トウモロコシ諮問委員会の構成には明白な不均衡がある。先住民は少数しか含まれていない。先進国機関は科学的方法に非常な信頼を寄せているが、大部分の先住民は先進科学に懐疑的で、自身の伝統的実践と方法に信を置いている。

 ・「科学的方法」と「科学に基づく」結論は、先住民と彼らが持つ知識の排除に働く可能性がある。

 ・報告草案の様々な章の著者は、議論し、そのトウモロコシとの関係―生活の中心、彼らの兄弟、彼らの尊厳とアイデンティティー―を聖化しようとする多くの先住民に応えることができなかった。

 ・政府は決定過程で予防原則を適用すべきであるとされる非常に強力な理由があり、これは、産業が原理的説明を行い、公開論争の場を作るに当たっては、すべての情報を提供しなければならないことを意味する。

 ・人間の健康、メキシコ生産者の文化的尊厳、環境へのリスクが広く、より深く理解され、適切な長期的行動方針が決定できるまで、メキシコへのGMコーンの輸入のモラトリアムがなされるべきである。

 ・リスクと便益の分析に関する懸念の声があがった。企業が大部分の便益を刈り取り、生産者と環境が大部分のリスクを引き受けるように見える。便益とリスクの確認は価値判断であり、これらの便益とリスクをいかに記述するかについては細心の注意が払われねばならないと論じることができる。

 ・CECの6月21-23日の会合前に最終報告を出す。

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