薬品生産GM食用作物、米国農務省に屋外栽培禁止要請―憂慮する科学者同盟

農業情報研究所(WAPIC)

04.12.22

 米国のNPO・憂慮する科学者同盟(UCS)が今月15日、医薬品と工業用化学品を生産するための遺伝子組み換え(GM)コーン・大豆・その他食用作物の屋外生産を即時禁止するように米国農務省(USDA)に要請した。また、USDAは非食用作物の利用か、薬品生産食用作物の屋内栽培など、より安全な代替策を奨励すべきだと勧告した。

 米国農場では、薬剤・ワクチン・工業用化学品を生産するように遺伝子操作されたコーン、大豆、その他の食用作物が10年以上にわたり栽培されてきた。UCSは、人間食料や動物飼料を汚染することなくコーンや大豆のような馴染みの食料作物で薬品を生産することが可能かどうか、6人の専門家に分析を委嘱した。今回の要請と勧告は、これら専門家の報告(A Growing Concern: Protecting the Food Supply in an Era of Pharmaceutical and Industrial Crops)を受けてのものだ。

 専門家は、薬品生産作物による食品・飼料の汚染ルートを確認、汚染を防ぐための様々な方法(空間的・時間的分離、機械・設備・インフラ専用化、各種の生物的封じ込め等)の評価を行った。現在のコーン、大豆の生産システムを利用するかぎり、食料・飼料システムの汚染ゼロを確保するのは不可能と結論する.。汚染ゼロの確保のためには、1)薬剤生産作物を地理的に完全に隔離された場所で栽培するか、2)食料作物の栽培・貯蔵に利用される既存農場施設ネットワークから完全に分離された収穫・貯蔵・加工システムを立ち上げるか、3)薬品・化学品生産GM食用作物の屋外栽培禁止しかないと言う。専門家は、全く新たなシステムの開発を強く求める。

 だが、とても万全とはいえない対策を小出しにすることで消費者や食品産業の批判をかわしてきたUSDAにそんな気はありそうもない。また、こんなシステムが一夜にしてできるわけでもない。汚染は既に起きているかもしれないし、将来はますますその機会が増えるだろう。専門家の新たなシステムの開発の勧奨にもかかわらず、UCSは、それを待っていることはできない、薬品生産食用作物の屋外栽培の禁止が急務と判断したわけだ(→プレス・リリース:Food Supply Vulnerable to Contamination by Drugs and Plastics from Gene-Altered Crops)。

 折りしも、わが国では農業生物資源研究所が、コメを食べるだけで花粉症を予防する効果があるというGMイネの屋外栽培を計画しているという。

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