米国農務省監査局 GM作物屋外実験規制監査報告 当局は実験サイトの位置さえ知らない

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.4

 昨年12月22日、米国農務省(USDA)内部の監査局(OIG)が、USDA動植物保健検査局(APHIS)は遺伝子組み換え(GM)作物屋外実験の 十全な規制を怠っており、そのために予期されない環境・食品汚染のリスクが生じていると警告する監査報告書を発表した。

 Animal and Plant Health Inspection Service Controls Over Issuance of Genetically Engineered Organism Release Permits
 http://www.usda.gov/oig/webdocs/50601-08-TE.pdf

 OIGは、実験されているGM作物の放出や移動が適切にコントロールされているかどうかを評価するために、2003年5月から2005年4月の間に、それらが栽培あるいは収穫される22の州の91の実験サイトを訪れ、APHISが栽培時・収穫後に課す実験要件の遵守状況を調査した。調査の結果、APHISは、それが承認し、監視ー作物がどこで、どのように栽培されるか、実験終了後にそれらがどうなるかなどーの責任を負う実験サイトに関する基本的情報さえ欠いていることが判明した。報告は、実験の承認から圃場の監視に至る実験過程の様々な段階での規制の欠陥により、規制なし で栽培しても安全と確認される前のGM作物が環境中に存続するリスクが高まっているという。

 報告によると、APHISは米国内の実験サイトの正確な位置さえ必ずしも把握していない。 実験は、薬剤・工業製品生産GM作物のような高リスク作物については許可手続、その他の低リスク作物については通知手続を経て承認されるが、APHISは実験承認後、どこで栽培されるのかを正確に突き止めるために許可を得た者、通知を行った者すべての追跡調査を行っていない。 申請者が実験を計画している州や郡しか知らない場合もある。

 また、APHISは、実験承認前に、申請者がGM作物をどのように実験サイト内に封じ込めるか、環境中への存続をどう防ぐかを記述した通知者の封じ込めプロトコルを審査していない。口頭でのプロトコル提供を許している。実験許可の大多数は通知によるものであり、このやり方では実験承認と監視の両方がズサンになる。

 さらに、APHISは、非食用目的で遺伝子改変されたGM薬剤・工業品収穫物の最終処分に関する報告を許可保持者に義務付けていない。APHISが知ることなく、あるいは貯蔵施設の承認なしで、大量のGM薬剤生産作物が1年以上にわたり実験サイトに貯蔵されている二つの例が発見された。

 その他、APHISは、審査過程と実験承認の科学的根拠を十分に記録しておらず、実験中に要求される情報ー環境への有害影響などの実験結果を含む承認された申請者の進捗状況報告などーも追跡していない と指摘する。実験サイトの検査についても、何をどう監査するかについての基準が曖昧な上に、薬剤・工業品生産GM作物実験に関して定められた栽培期間中5回、収穫後2回の検査も行われていなかった。

 報告は、これら作物が食品供給に脅威を与える恐れがあると強く警告する。報告によると、49,300のサイト(67,000エーカー)での10.600の実験申請が許可されているという。消費者は、健康に有害な薬品成分や工業品が含まれる食品をそれと知らずに食べさせられることを心配せねばならない。

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