米農務省 未承認GM米・LLRICE601を承認 バイエル社は混入は”神の仕業”と逆攻勢

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.25

  米国農務省動植物検疫局(APHIS)が24日、米国産非遺伝子組み換え(GM)長粒米への混入が発見されたバイエル・クロップ・サイエンス社の未承認GM米・LLRICE601を承認すると発表した。バイエルの承認申請を受けての環境影響評価の結果、このGM米は環境に対して安全で、APHISの監督なしで栽培できると見做されたという。最終環境影響評価は12月1日のフェデラル・レジスターで公式に発表されるが、取りあえず、http://www.aphis.usda.gov/brs/aphisdocs/06_23401p_ea.pdfで見ることができる。

 この米の放出をめぐる状況とUSDAの規制への違反があったかどうかの調査は未完だが、この調査は承認とは無関係で、商品化の承認のために必要となる食品・飼料としての安全性の食品医薬局(FDA)による確認も既に済んでいると言う。

 APHIS News release:USDA Deregulates Line of Genetically Engineered Rice,11.24
 http://www.aphis.usda.gov/newsroom/content/2006/11/rice_deregulate.shtml

 このGM米は通常の安全性試験に服していないが、既に安全性を確認した他の二つのGM米(LLRICE 62とLLRICE 06)と類似ものだから安全性は確認されているという以前の主張を踏襲したものだろう(米国:販売米種子に販売未承認のGM米検出 FDA、USDAは安全を強調,06.8.19)。LLRICE601は、通常の安全性試験を省略、超スピードで商品化を承認されることになる。

 しかし、LLRICE601をめぐる問題は、これが安全かどうかの問題を既に通り越している。現に米国稲作農業者は混入事件で大損害を蒙り、アーカンソーとミズーリの農業者が15の集団訴訟を起こしている 。ところが、ワシントン・ポスト紙によると、バイエル社はUSDAのルールを完全に遵守してきた、混入は農業者の不注意と”神の仕業”が引き起こしたものだと、逆攻勢に出ているという。

 Firm Blames Farmers, 'Act of God' for Rice Contamination,The Washington Post,11.22
  http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/11/21/AR2006112101265.html

  神もアボガドの種を大きくしすぎた過ちは認めたが(「オー ゴッド」)、種を小さくせよとまでは言っていない。こんな濡れ衣まで着せられては、神をも恐れぬ生命操作に天誅を下すほかないだろう。バイテク企業も、USDAの加護くらいで天誅を免れることができるなどと思わない方がよい。承認されても栽培する農業者 など一人もいないだろう。

  関連ニュース
 Genetically Engineered Rice Wins USDA Nod: Grain Tainted U.S. Supply This Summer,The Washington Post,11.25
 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/11/24/AR2006112401153.html
 

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