1.フキ(ふきのとう)の 雄株・雌株
Petasites japonicus




和名はフキ、春の到来を告げる「ふきのとう」としておなじみですよね。

フキは日本では9〜10世紀の「新撰字鏡」や「延喜式」「本草和名」などに記載があり、ウド・ミツバ・セリとともに数少ない日本原産の野菜です。
(植物の世界:朝日百科より)


ちょうど「ふきのとう」がたくさん顔を出してきましたので、天ぷらにしようと摘みながら頭花の様子を観察してみました。

       1.雄株・・・不稔の両性花




雄株の頭花は筒状花からなっています。 すべて両性花ですが稔りませんので機能的には雄花となります。 
めしべの花柱は先がふくれて こん棒状になっています。




黄色い花粉を出している雄株の頭花



花粉の着いている部分を拡大しました



雄株は両性花だけでできていますが、なかには少し雌花が見られるものもあります(下の画像)
 
・両性花の花冠は大きい   ・雌花の花冠は糸状で切形

両性花と雌花を取り出してみました(右の画像)。  両性花の花冠は大きくて、花柱は こん棒状です。
一方 雌花の花冠は糸状で先は切形、花柱も 糸状でほっそりしています。



ところが、雄株を見ると、花粉をまったく出していないものもあります。
蕾から開花したものまで開いてみました。 すべて花粉が出ていません。

 このような場合には雄株は、花粉を出さないので、
機能的には雄株では無いのでは? と思われますが・・・。



なぜ花粉を出さない雄株がたくさんあるのでしょうか? 
また、花粉を出さないのにどうして雄株というのか?

これらのことを疑問に思っています。

なぜ花粉を出さない株があるのか?・・の疑問が解けました。 「フキ 花粉を出さない雄株」をご覧下さい。


       2.雌株・・・雌花


   


こちらが雌株です。 頭花を見ると白っぽくて細かい糸状のめしべの花柱がびっしり見られます。
 
花柱はとても細くて、先は短く2裂しています。

 

この雌花が受粉して結実すると、タンポポの綿毛のようなそう果になります。
 



雌花のようすを、もう少し細かく観察しました。
    


雌花は両性花に比べてかなり細くて、
花冠は糸状で先は切形、花柱も 糸状です。



図鑑に “先は切形”と書いてありますが、
花冠の先は筒状で不揃いに切れ込んでいます。




  花冠を開いて
  雄しべの様子を見ると、

  まったく雄しべが無いか
  退化した雄しべがあるだけで、
  花粉は全然出していませんでした。

  胚珠は完全なようでした。

ふきのとうの雌株の中に、紅色の花冠を持つものを見つけました。 なんだか珍しいですね。  『赤いフキ』情報


 花冠が赤いこのフキについて、「画像掲示板@植物園へようこそ」でお尋ねしたところ、 「花冠、花柱が紫っぽいものをベニブキ(Petasites japonicus (Siebold et Zucc.) Maxim. f. purpurascens Makino)と呼ぶこともあります。 この色はそう果や葉柄などに出る色素ですから花に出ても変ではないです。」と教えて頂きました。




        3.雌株・・・中性花
 
         雌株の頭花には中央には1〜数個の両性花があります。 この両性花は、花粉も出さず、胚珠も退化しています。 
         正しくは、中性花と呼ぶそうです。 

              *「フキの雌株にある数個の中心花は、両性花とされることもあるが正しくは中性花である。 
                中性花は花粉も果実も実らないので不稔花とも呼ばれる」  
植物用語辞典(清水建美著)


雌頭花には中心に1〜数個の両性花がある

     雌花           両性花(中性花)

雌花は子房に胚珠↑があります 

両性花(中性花)は花粉を出さず、胚珠も退化しています


フキの花もくわしく見ると、面白いことがいろいろとわかりました。

実は「ふきのとう」の雄株と雌株では、あの苦みや味が違うのかも・・と思い、食べ比べをしましたよ.   
                                               (2005.3.2 '07.2.15)




1.フキ両性花・雌花    2.花粉を出さない雄株     3.フキの分化    4.赤いフキ

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