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フランス:CTE改め、CAD(持続的農業契約)へ

農業情報研究所(WAPIC)

02.12.2

 11月29日、フランス農業・食料・漁業・農村問題相は、CTE(定訳はない。国土経営契約、地方経営契約、経営国土契約等)を廃止、「持続的農業契約(CAD)」に置き換えると発表した。

 同相が6月に要請したCTE実施に関する監査(Audit CTE )が、その複雑性、環境面での有効性の欠如、予算の枠付けの欠如、県による支払額の大きなバラツキ(1契約当り2万3千ユーロから9万3千ユーロ)など、「重大な機能不全」を指摘したとして、9月に行政代表作・農業代表・地方公共団体代表で構成される作業グループを立ち上げられたが、今回の案はこの作業グループの提案に基づくものという。

 CADに関する詳細な法文は来年に出されるが、プレス・コミュニケによれば、契約は経済・社会に関する部分と国土・環境に関する部分に分かれ、農業者は二つの部分に関して約束するか、専ら農業環境措置にかかわる約束をする(CTEにおいては、必ず両方についての契約をしなければならなかった)。関係者全体に責任を負わせ、機構を簡素化するために、CAD実施、特に国土にかかわる優先事項の決定と投資への資金供給規則について、県と州の役割を強めるという。予算の枠付けについては、5年間の1契約につき、基本的には県平均2万71千ユーロにする。

 このような改変の評価は後に待ちたい。ただ、様々な理由づけはそれなりの根拠があるとしても、改変の最大の狙いが予算節約にあることははっきりしている。CTEの主要財源は、ほとんどを大規模農業者が独占してしまうEUの農業者に対する直接支払を削減す「モジュレーション」から得られたものであった。左翼政権を引き継いだ現政権は、このモジュレーションをいち早く廃止した。直接支払の減額はフランス大規模農業者の競争力を削ぐ元凶とみなされたからである。それは、左翼政権がめざしたフランス農業の「質的」発展の方向を覆し、量的拡大路線を再建しようとするものである。公的援助をより多く小規模農業者に配分するという目標は、CTEにより十全に達成されたわけではない。直接支払の減額に直面した大規模農業者が、CTEによってそれを取り戻そうとしたからである(環境面での貢献が少なかったのは、主としてそのためである)。しかし、CTEの廃止が援助配分を一層不平等にすることだけは確かである。大規模化、小農民の駆逐の過程に拍車がかかるであろう。

 この問題については、事態の進展を見守り、今後、詳細に分析する機会をもちたい。

 Hervé GAYMARD présente aux Organisations Professionnelles Agricoles le Contrat d'Agriculture Durable, qui remplace le Contrat Territorial d'Exploitation11.29

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