農業情報研究所農業・農村・食料欧州ニュース:14年9月12日

農業緑化、農地保護、農薬使用規制・・・ フランス農業未来法が成立

 フランス国民議会が9月11日、制定に向けた動きを昨年5月以来何度かにわたり紹介してきたフランスの農業未来法(正確には「農業・食料・森林未来法」、loi d'avenir pour l'agriculture, l'alimentation et la forêt、以下単位「未来法」と呼ぶ)を最終的に採択した。

 Vote à une large majorité de la loi d’avenir pour l’agriculture, l’alimentation et la forêt : Stéphane le Foll salue une nouvelle ambition pour les professionnels de ces secteurs et pour les citoyens(communiqué),Ministère de l’Agriculture, de l’Agroalimentaire et de la Forêt,14.9.11

 La loi d’avenir pour l’agriculture, l’alimentation et la forêt de A à Z,Ministère de l’Agriculture, de l’Agroalimentaire et de la Forêt,14.9.11

 Avenir de l'agriculture : l'Assemblée adopte le texte de la CMP,Assemblée Nationale,14.9.11

 Pesticides, loups, forêts... que contient la loi d'avenir de l'agriculture ?,Le Monde,14.9.11

 法律の主軸は次のとおりである。

 ●アグロエコロジー(農業の緑化)

 「アグロエコロジー」、肥料、農薬などの「投入物」よりも多作物栽培や土壌微生物など、エコシステムのサービスの利用を優先する農業方法(参照:フランス 「農業未来法」制定を準備 農業生産と生態系の対立を克服する農業・環境プロジェクトが柱,13.5.13)の開発、これは未来法制定を発案した農相の最優先事項であった。

 そのために、「経済・環境利益集団」(groupement d'intérêt économique et écologique,GIEE)を創設、この農業者集団はアグロエコロジー・プロジェクトを実施するとき、割増された公的援助を受けることができる。

 政府によると、この集団に関わる農業者は、当面、フランスの50万の農業経営者のうちの1万から1万2000となる。農業教育も生物学的農業(わが国で言う有機農業の相当)を含むアグロエコロジーの促進を教育の核心に据えねばならない。

 ●農地の保護

 2016年以後、農地を浸食するプロジェクトや工事で影響を受ける農業者に対する補償金を施工者から徴収する制度を導入する。

 フランス環境研究所によると、都市化の加速で、フランスの農地は年600平方キロメートル(フランスの1県分に相当)の割合で消失している。農地保護はフランスの最も重要な課題となっている。

 ●農薬使用規制の強化

 学童たちのレクレーションの場、保育所、公衆に開かれた公園や庭園の中の子どものためのレジャーセンターや遊び場では農薬使用を禁止する。

 国、地方公共団体、公的機関は、その緑地空間、森林、プロムナードで農薬を使ってはならない(デング熱対策とかで、日本は播き放題)。

 これらの場所やその近く、及び病院、保健センター、老人ホームの近傍での農業者による農薬散布は禁止されないが、適切な防護措置が取られねならない(垣根、散布の日や時間など)。こうした防護措置が取れないとき、当局は、それより近い場所での農薬散布を禁止するこれらの場所からの最小距離を設定しなければならない。

 農業者の農薬散布規制、特に居住地から200b以内での農薬散布は禁止という案は、、農業経営者連盟の猛反対した。しかし、居住地や学校の近くでの散布禁止を求める「将来世代協会」も14万の請願署名を集めた。この禁止は実現しなかったが、農薬の人、動物、特に蜜蜂、環境への影響を監視する監視機関の設置が定められた。

 ●狼からの家畜保護

 近年は狼が殖え、拡散、家畜郡が襲われるケースが激増している(2013年、1786頭の羊が殺された)。狼の補殺を容易にするために、保護区域内の大きな葦原で狼の間引きを許可する規程が盛り込まれた。

 ●木材密輸撲滅

 生物多様性、大気質、土壌の保全や気候変動との闘いにおける森林の役割を認め、違法伐採木材または木材製品の輸入・販売と闘う措置を規程。

 製品のトレーサビリティーの管理に関する義務に背く場合には懲役2年及び10万ユーロまでの罰金、組織犯罪グループによる木材密輸には懲役9年と50万ユーロの罰金。  


 わが国では、規制改革会議の民間議員なfどが企業の農地取得の許容と農地転用規制緩和を必死で画策している。取得企業の転用に補償金(罰金)を科す制度を作ったらどうか。

 わが国では実効性のある農薬散布規制など聞いたことがない。わが家の周りでも除草剤無断散布は日常茶飯事だ。フランスでは航空機による農薬空散は基本的には禁止されているが、わが国でお奨めだ(例えば、農薬散布ヘリ、操縦精度競う/弘前 東奥日報 14.9.11;県内農家散布に無人ヘリ活用 東奥日報 14.9.12)。デング熱対策とかで、公園でも大量に播かれているが、誰も咎めない。

 わが国では、熱帯雨林消滅やそれに伴う生物多様性喪失に関心を抱く人は絶滅危惧種に等しい。

  その他関連情報

 フランス農業未来法 「ワイン・ブドウ栽培地はフランスの文化・美食術・景観遺産」 仏上院が採択,14.4.14

 フランス農業未来法案 閣議提出 経済と環境の両立目ざし,13.11.15

 フランス 「アグロ・エコロジー」普及を担う「「経済・環境利益集団」(GIEE)設立へ,13.5.17