農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2014年月9月13日

世界穀物在庫が15年来の最高に 世界食料価格指数は4年来の最低 日本のみが高騰は何故?

  FAO(国連食糧農業機関)が9月11日、2013年、2014年の記録的穀物生産で2015年季末の世界穀物在庫がに6億1600万トン、過去15年間の最高に達するだろうと発表した。2014/15年の在庫率(消費に対する比率)は24.7%で、世界的食料危機時の2007/08年に記録された18.4%を6%以上上回る。

 在庫が最も増えるのは粗粒穀物(トウモロコシ、大麦、ソルガム等)で、中国や米国の記録的トウモロコシ生産を受けて11%増加、2億4800万トンに達する。小麦在庫も、中国、インド、ロシアなどの生産増加で8%増加、1億8800万トンになる。

 FAO Cereal Supply and Demand Brief,FAO,14.9.11
  http://www.fao.org/worldfoodsituation/csdb/en/

  同じ日、米国農務省(USDA)も、既に記録的生産が予想されていた今年のトウモロコシと大豆の生産予測をさらに引き上げた(どちらも3%)。中国のトウモロコシ生産は干ばつで昨年を若干下回るが、それでも在庫が細ることはないという(7736万トン)。 

 http://apps.fas.usda.gov/psdonline/circulars/grain.pdf

 こうした予想を受け、トウモロコシ、小麦、大豆のシカゴ先物相場は4年来の最低にまで落ち込んだ(小麦・トウモロコシ・大豆先物相場の推移穀物・大豆等先物(期近)価格の長期推移)。

 同じ日発表された8月のFAO食料品価格指数も5ヵ月連続で下がり、ついに2010年月以来、つまり4年来の最低レベルに達した。とりわけ乳製品価格の低下が大きい。

 FAO food price index drops to four-year low,FAO,14.9.11

 一部は欧米の制裁措置に対抗するロシアの食料・農産品輸入禁止の影響もあるだろうが、大勢は穀物・大豆価格の全般的下落傾向の反映と見られる。穀物・大豆価格は、ブラジルと米国の干ばつやロシアの穀物輸出禁止で一時的に高騰した2012年以後、低下の趨勢にある(主要穀物・大豆の国際価格の推移)。これに伴う飼料価格の低下は とりわけ畜産農家に恩恵をもたらしているはずである。

 世界が2007-2008年の食料危機など忘れようとしているとき、日本のみが、あるいはそのとき以上の飼料・食料品価格高騰に直面している。何故なのか。最近の飼料・食料品価格の上昇については何度か述べてきたから繰り返さない(注)。今日は最新新聞記事一つを上げておこう⇒円安 家計に追い打ち 6年ぶり 107円台に(東京新聞 14.9.13 朝刊 7面)。まさに円安=アベノミックスのせいである。消費税の10%への引き上げも予定どおりという(消費税10%、予定通りに=自民党の谷垣幹事長 時事ドットコム 14.9.13)。それでも安倍内閣支持者が5割以上に回復。日本人、いつからそんなに豊かになったのだろうか。

 (注)以下を参照のこと。

 日本農業新聞農政モニターの安倍内閣支持率 円安「資材価格高騰」でもなお45%が支持に「違和感」

 日本のみ 急騰する食料品価格 円安、消費税 それでも動じない?日本人

 配合飼料価格安定制度見直し?・・・の補足説明 農業だけではない 国民生活を破綻させる円安誘導

 配合飼料価格安定制度見直し?トウモロコシ・大豆国際価格急落の折に何故?