FDA リコール対象飼料成分を使った飼料製造者に大量の飼料回収を要請

農業情報研究所(WAPIC)

06.8.12

  今年6月、アラバマのH. J. Baker & Bro社が反芻動物蛋白質に汚染された乳牛用飼料成分のリコールを始めたと伝えたが(米飼料企業 反芻動物蛋白質入り牛用飼料をリコール 米国産牛肉輸入再開は再考せよ,06.6.22)、米国食品医薬局(FDA)が8月11日になって、これらの成分(”飼料サプリメント”とされている)を使った個々の飼料生産者に対し、製造した飼料の回収を命じたことを明らかにした。

 Possible Mill Mix-Up Spurred Livestock Feed Recall,Cattle Network,8.11
  http://www.cattlenetwork.com/Content.asp?ContentID=59750

 FDAは、一つは反芻動物蛋白質を含み、もう一つはそれを含まない二つのタイプの飼料サプリメントがアラバマの同一施設で生産された、これは飼料製品の”交叉汚染”の可能性があるために問題だと言う。問題は、同社工場が乳牛用サプリメントと家禽用蛋白質飼料製品の両方を生産していることから生じた。

 FDAは今までに9つの州の生産者に回収するように求めた。一飼料生産者ーワシントンのVita Plus社はおよそ2800万ポンド(約1万4000トン)もの回収を指示された。

 H.J. Bakerの副会長は、FDAが発見した問題は”手続的・事務的”問題で、交叉汚染は確認されなかったと言う。Vita Plus社は、問題のサプリメントを600トンほどの飼料に加えただけで、160トンの回収に成功したと言う。アメリカ飼料産業協会は、FDAが言う2800万ポンドは、Vita Plusが2005年2月以来生産した飼料の総量だとしている。

 他方、FDAは、鳥・魚用飼料を製造するアラバマのTucker Milling LLCに対しても、”反芻動物に与えてはならない”という表示をしなかったことを理由に回収を求めた。

 米国が交叉汚染防止策の強化をためらっている間に(米国レンダリング協会 狂牛病飼料規制強化は経済・環境影響が大きすぎて実行不能,06.8.10)、交叉汚染の現実的可能性が生じてしまったわけだ。

 このニュース記事によると、最近発表されたハーバード大学の研究報告(米国 ハーバードの狂牛病リスク評価でダウナーカウ禁止の最終ルールが混迷?,06.7.27)の精査のために米農務省に雇われた一専門家は、この報告は交叉汚染の脅威を過少評価したと強調しているという。

 それにしても、米国で肥育されるメキシコ産牛は月齢判定ができない(米国産だって同じことだ)から、その肉を輸出プログラムの対象にするのは問題だなどと今頃言い出すプリオン専門調査会の専門家が(米国産牛肉に輸入牛の肉が含まれると知らなかった プリオン専門調査会の怠慢,06.8.11)、カナダで次々と狂牛病が発見されるのに米国では一向に発見されないとか(カナダ 50ヵ月齢の乳牛の狂牛病確認 米国も感染源調査に加わる,06.7.14)、このようなリコール騒ぎの勃発といった新たな事実の露見に一向に反応しないのは何故なのだろうか。