インドネシア パームオイル企業が引き起こす泥炭地大火 住民の通報に何の咎めもなし

農業情報研究所(WAPIC)

07.11.8

  ジャカルタ・ポスト紙が、紙パルプ産業やパームオイル(椰子油)産業のために森林が急速に消滅に向かっているスマトラ島中部・リアウ州における泥炭地森林破壊の具体的メカニズムの一端を、Kuala Cenaku村のムルシッド・アリ村長の発言を通じて明らかにしている。

 Indonesian oil palm companies in line of fire,JP,11.6

 泥炭地森林の破壊を抑え、その気候変動への影響に世界の注意を向けさせる目的でグリーンピースと地元環境NGO(Jakalahari、Oasis)が設置したキャンプ地周辺の状況を伝えるこのルポ記事によると、ムルシッド村長は、「その許可証によると1万6000ヘクタールを切り開くオイルパーム企業が、ここで大規模火災を引き起こしてきた。最新の大規模火災が今年7月に起きたとき、状況を環境省に報告した。彼らは、チェックのために何人かを送ってきた。しかし、何事も起きなかった」と言う。

 彼や他の村のリーダーたちは、地方当局が出した許可が実際にどこまで広がっているかを実感してショックを受けた。彼は、許可区域地図が地域9村の畑やオフィスまで含むすべてをカバーしていることを初めて知り、彼らが先祖の遺産と呼ぶ 土地の利用への抗議を始めた。当局や、土地の生態評価も、地域共同体との合意の試みもしなかったパームオイル企業(PT Duta Palma)に不平を申し立ててきたのだという。

 キャンプ地の活動家の一人は、「通常、人々は会社に[土地を譲るように]大きな圧力をかけられるか、[事業への]参加をもちかけられる。しかし、人々が問題を十分に知ると、別の方法を探る。キャンプ地に近い地域のように、人々には何も言わない。ただ焼き払うだけだ」と言う。

 WWFは、リアウ州の状況について、「1980年代の前半から、パームオイル関連企業がアブラヤシプランテーションを造営するため、自然林が合法、違法に皆伐されてきた。初期には、このような皆伐は大企業数社によって行われていたが、2000年以降、自然林のアブラヤシプランテーションへの転換の多くは、主にコミュニティーグループ(地元の人々、または他州からの移住者)によるものである。企業は、このようなコミュニティーの「発展」を影でサポートし、コミュニティーが生産したアブラヤシの実を購入している 」と報告している(www.wwf.or.jp/activity/forest/news/2006/20060721a.pdf)。 話はどうも逆だ。

 先月初め、インドネシア農相は、西欧のNGOはインドネシアのオイルパーム農園が森林を破壊し・希少動物を絶滅に追いやり、地球温暖化に加担していると非難しているが、それは現実と違うとヨーロッパを説いて回った。その造成に多少の違法性があることは認めるが、政府は人々の福祉のための、また環境を破壊することのないオイルパーム産業の持続可能な発展のための政策を施行した、政府は、持続可能なパームオイルに関するラウンドテーブル(RSPO)、二酸化炭素排出の削減、適正農業慣行、熱帯雨林保護を通して、持続可能な開発の実施を約束したと主張する。

 Indonesia Promotes Sustainable Palm Oil In London,Bernama,10.4

 ただ、故意の火付けで大量の泥炭地森林が毎年焼失していることだけは確かだ。このルポ記事によると、地域コミュニティーの森林火災の予防・防火訓練のためにジャカルタからやってきた林業省火災部の 一役人自身、「リアウは、毎年、最悪の森林火災地域だ」、泥炭は非常に燃えやすく、一端火がつけば消火は困難を極めるが、大部分の火災は故意の焼却によるものだと 言っている。このような”無法”状態では、日本でも最近目に付く”持続可能なパームオイル”など、誰だって”偽装”できそうだ。

 関連情報
 
違法伐採を止められないインドネシア 温暖化防止を口実に国際援助増強を要求,07.10.22
  インドネシアが山火事シーズンに バイオ燃料産業が東南アジア熱帯雨林を使い棄て,07.7.9
  インドネシア 森林火災で今年乾季に1000頭のオランウータンが死亡,06.11.7
  インドネシア 泥炭地破壊で世界第3位のCO2排出国 木材・パームオイル需要と地域経済開発が元凶,06.11.6
 
欧州委員会、違法伐採と違法伐採木材貿易と闘う包括的措置を採択,04.7.22
 
欧州委、違法伐採木材と闘う行動計画 環境団体は実効に疑念,03.5.23
 
インドネシア:森林消滅の危機、農民にも脅威,02.9.29