カンクンWTO閣僚会合関連ニュース農業情報研究所(WAPIC)

カンクン閣僚会合を終えての欧州諸国政府及び関連諸団体声明(9月19日)

カンクン閣僚会合を終えての米国・EUの政府・関連諸団体声明(9月18日)

カンクン閣僚会合失敗をめぐるマスコミ報道・論評(9月17日)

9月9-10日 9月10-11日 9月11-12日 9月13-14日

 

カンクン閣僚会合を終えての欧州諸国政府及び関連諸団体声明(9月19日)(ページ・トップに戻る

フランス

●フランス代表団(9.14)

 今回の閣僚会合の中心的目的は、最も貧しい国々の開発を促進することであった。不幸にして、加盟国は合意に達しなかった。これは深く遺憾なことであった。しかし、合意がなかったことは、前もって獲得された医薬品に関する協定を問題にするものではない。

 EUは交渉に積極的にかかわった。会合中、アフリカ諸国に収益をもたらす価格を再建するために、ワタの公平な扱いを求めるこれら諸国の要求を支持することを決定した()。また、先進国と新興大国が、最貧国を優遇する譲許を与えることも提案した。このようにして、EUは、この交渉全体を通じ、その統一性と結束を示した。

 カンクンで合意に失敗したことは、ドーハ・ラウンドを危機に陥れるものではない。ロース対外貿易相とゲマール農相は、G8会合における大統領のアフリカ諸国のための提案(参照:フランス:シラク大統領、アフリカ向け輸出補助の一時停止を提案,03.2.24;フランス-アフリカ・サミットにおける農業開発に関するシラク大統領発言,03.03.3)が、なお生きていることを強調した。

●全国農業経営者連盟(FNSEA)、青年農業者センター(JA)、農業会議所常設会議(APCA)等14農業団体(9.14、カンクン)

 この会合は、多様な国々あるいは国々のグループの期待と性向に応えることが、余りに自由主義的な概念に基づく多角的枠組みのなかでは難しいことをはっきりさせた。農業諸団体が農業分野でなされた提案に断固として反対したとしても、農業が合意失敗の最終的原因となったわけではない。この会合は、途上国の期待と要求に一層応える必要性を明らかにしたが、EUは既にこれに応えている。世界のすべての農民が、その労働と生産物の価格で堂々と生きられるように闘いを継続するために、この中断を有効に活用しなければならない。

●農民同盟(9.15)

 農業・食料市場の一層の開放、すなわち農民階級をあらゆる方向から相戦わせる競争に巻き込むという目標は達成できなかった。途上国と新興市場国が初めて強力な発言をし、米国とEUの立場を傷めつけることになった。食料は、健康や教育と同様、多国籍企業が利益をかっさらい、農民的家族農業、土着社会、それに依存する諸国の経済を破壊する貿易交渉の対象であってはならない。「グローバリゼーション」の支持者を広げようとする情け容赦のない貿易戦争で、ヴィア・カンペシーナ(農民同盟を含む世界80ヵ国の小農民団体が加入する国際農民運動組織)の農民は、殺人者にも、犠牲者にもなろうとは思わない。

英国

●ベケット環境・食料・農村問題相(9.15)

 農業・環境を含め、先進国・途上国が同様に利益を得たはずの合意が近づいていたと思われるだけに、会合の結果に失望。何が起きたのか、何故か、前進できるのかどうか、どうやって前進できるのか、多大な反省が必要。この6ヵ月になされた前進を忘れてはならない。それには、共通農業政策(CAP)の改革、最貧国のための医薬品へのアクセスに関する協定も含まれる。カンクンが成功していれば、CAP改革は、例えば米国など、他の国の同様な改革の引き金となったであろう。EU内では、CAP改革がさらに進むだろう。それはEU農民、環境、途上国の利益になる。英国政府は、継続される交渉に全面的にかかわり、成功の向けて努力する。

●アクショネイド(9.15)

 会合失敗の責任は途上国のニーズを無視したEUと米国にある。途上国が形成した連合は、先進国からの極度の圧力にもかかわらず、堅固であった。先進国が望んだ最も危険な要素であるシンガポール・イシューで、途上国は抵抗を貫き通すのに成功した。農業問題では、EUと米国は農業者と輸出業者への補助金を削減しようとしなかったが、途上国連合は、一層の統一性をもって、会合を終えた。これは、さらなる国際貿易交渉の環境を改善する。交渉はジュネーブに戻るが、特にEUと米国は、ドーハ会合での約束を守らねばならない。WTOは、悲惨な記録を検討し、それが基づく破壊的な貿易自由化の使命を再考せねばならない。この会合の価値ある成果は、途上国が連合して、WTO内のスーパーパワーの覇権に挑戦したことだ。この新たなパワーを世界貿易システムの新の変化に変えねばならない。

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米国 EU

米国

●ゼーリック通商代表声明(9.14)

 先進国・途上国のどちらにも、「できる国」と「しようとしない」国があった。「しようとしない」国のレトリックが「できる」とする国の努力を圧倒した。「しようとしない」国が袋小路に導いた。今日、5人の「進行役」(注:農業:シンガポール通商産業相・G.ヨー、非農産品市場アクセス(NAMA):香港特別行政区財政司司長・H.タン、開発問題:ケニヤ通商産業相・M.キトゥイ、「シンガポール・イシュー」:カナダ国際貿易相・P.ペティグルー、その他の問題:ガイアナ貿易国際協力相・C.ローヒー後にワタ問題で、スパチャイWTO事務局長が加わる)が用意したテキストを仕上げようとしていたし、なおそうしようと思っている。今日は「シンガポール・イシュー」で立往生したが、カンクンのより大きな教訓は、148ヵ国の有益な妥協には、野心と柔軟性の精妙なバランスに達するために、レトリックではなく、「ワーク」に焦点を当てる真面目な意志が必要だということだ。

●全米ファーム・ビューロー連盟(AFBF、9.15)

 交渉ストップは残念だが、農業問題のための決裂でなかったことには注意を要する。我々は国内補助削減・市場アクセス改善への強い意志を示し、世界全体、特に途上国が大きな利益を得たはずだ。しかし、交渉で我々は、自分を安売りしなかった。悪い合意よりも、合意がない方がましだった。交渉が再開されれば、交渉を支持する用意がある。

●全米農民同盟(NFU、9.16)

 諸国と交渉者が失敗の理由を再考する時間を取ることが適切。失敗は、公正貿易を強化し・生産者が妥当な市場価格を獲得することを可能にする新たな機会を作り出す。それは、世界中で利用される貿易歪曲的慣行の必要性を減らすことになる。

 貿易アジェンダは、市場アクセス・国内支持・輸出補助という伝統的貿易問題に加え、世界市場の集中、労働・環境基準、通貨変動に取り組むように拡張されねばならない。これらの競争のインバランスは、農産商品価格の引き下げ競争を永続させる。貿易と利益に直接影響するこれらの問題に取り組まなければ、交渉が受け入れ可能なコンセンサスに達するのは難しい。

 交渉者がこの過程をさらに進める間違った協定を採択しなかったことを歓迎する。交渉者は、期限内合意を急ぐよりも、公正貿易を犠牲にすることなく、農業生産者に真の経済的利益を生み出す新たなバランスが取れ・包括的な展望を発展させることに関心を注ぐべきである。NFUは、農民が市場から公正な報酬を受け取ることを可能にする貿易政策の確立によって、国内支持の必要性を減らすことを勧める。

 バランスの取れた多角的解決策は、カンクンの失敗の真の原因と見られる多くの二国間・地域貿易協定よりも、確かに望ましい。米国の交渉者は、悪い協定よりも無協定の方がましという状況を再び作り出さないように保証せねばならない。

EU

パスカル・ラミー通商担当委員(9.15)

 会合の失敗は、WTOへの深刻な打撃であるだけでなく、我々・先進国・途上国のすべてにとっての機会の喪失である。交渉再開は受け入れる。

 ドーハ開発アジェンダはEU最優先の貿易政策であり、会議に耳を傾け、学び、提案を調整もした。最終的に、すべての加盟国にとって公正となり得る協定、6ヵ月前に可能と考えられた以上の協定ができる可能性が生まれた。

 EUは、

・農業に関しては、途上国関心品目の輸出補助金廃止の用意をし、貿易歪曲的補助金の大幅削減を提案し、大幅な関税削減と市場開放の用意もした。農業協定は、7月に考えられていた以上に、合意に近づいていた。

・工業製品については、先進国の譲許を最大限にする一方、途上国には大きな柔軟性を許し、後発途上国を保護することを提案した。

・サービスでは、職業者の一時移動に国境を開くという多くの途上国の要求に応えた。

・途上国に対する特別かつ異なる待遇に実効性を与える特別の提案を行なった。

・シンガポール・イシューでは、協定内容、タイミング、対象範囲に関して建設的に動いてきた。最終日には、投資と競争政策は交渉を先送り、中小企業にとって重要な貿易円滑化と公共調達の透明性の二つの問題だけ交渉するという議長案を受け入れた。

・ワタについては、既に行なっている補助ゼロ、無税・無割当アクセスの加え、大部分の貿易歪曲的支持の廃止も用意した。

 シアトルでも言ったが、WTOの手続と組織は、課題の重さを支えるものでなかった。全会一致の方法では、146ヵ国の議論を組織し、舵を取る術がない。決定過程を改善する必要がある。EUは、依然として、強力なルールに基づく多角的貿易システムにコミットし、WTO内でこの方向で働き続ける。

 ただし、16日、ラミー委員は、カンクンの失敗により、多角的貿易システムへのコミットを真剣に再考することになるかもしれないと述べた(EU may rethink its multilateral trade obligation,Financial Times,9.17)。EUは、WTO新ラウンドを最優先、1999年以来、世界の潮流に逆らい、新たな二国間・地域貿易協定交渉を行なっていない。これが再考されるとなると、自由貿易協定に向かう世界の奔流の止め役がなくなる恐れがある。

●フランツ・フィシュラー農業担当委員(9.15)

 シンガポール・イシューでコンセンサスに達しなかったのは遺憾。農業自由化では合意の可能性が出ていただけに、なおさらだ。農業での合意は可能だ。それを可能にするために必要なことをする用意がある。途上国に有利な協定を与える重要で、絞り込んだ措置を提案した。先進国が自由化の負担の大部分を背負うアプローチを受け入れた。これらの提案は、完全にそのまま残る。ドーハ開発アジェンダに何が起ころうと、一つだけは約束できる。後退の道はない。EUは、既に始めた改革を続ける。

 なお,フィシュラー委員は、上記のような議長案を基本的に受け入れながら、輸出補助に関して、米国が多用する輸出信用が最貧国への過剰農産物ダンピングのために利用を続けられるという抜け穴があることに強い不満を表明、また国内支持については、「青」の補助金を生産額の5%までへの削減という議長案を超える途上国グループの廃止要求が通れば、改革の促進にかえって有害と力説していた。

●EU農業団体委員会/EU農業協同委会(COPA/COGEA)事務局長

 EUは、農業では途上国に特に有利な提案をしたのだから、会合失敗の原因はシンガポール・イシューにある。欧州委員会は交渉を続けるべきである。すべての国が脆弱な農業と食糧状況にある途上国を助ける努力するする場合にのみ、ラウンドは成功する。

カンクン閣僚会合失敗をめぐるマスコミ報道・論評(9月17日)(ページ・トップに戻る

日本 米国 フランス ノルウェー アイルランド 南アフリカ フィリピン  インドネシア

日本

●日本経済新聞(夕刊、9.16):「先進国の農業保護や投資保護ルールの交渉入りなどに猛反発する途上国との亀裂が埋まらず、最終日の十四日午後(日本時間十五日未明)交渉が決裂した」。「最終期限の二〇〇四年末までの一括合意は難しくなった」。「米欧とブラジルなど有力途上国の対立が実利的な経済交渉の駆け引きの域を超え、米欧主導を認めるか認めないかの「政治闘争」に変質した結果だ。WTOの機能不全で、主要国や地域の自由貿易協定(FTA)に傾斜するのは確実。出遅れている日本は一段と苦しくなる」。「閣僚声明の要旨」、「WTO閣僚会議の主な出来事」とともに、各国主要閣僚のコメントを掲載。

 川口日本外相:決裂は残念。期限内決着は相当な努力をしないと困難。平沼経済産業相:会議は日程を延長してまとまると期待していた。決裂には正直驚いた。農業や投資分野で途上国の反発は予想以上だった。ゼーリック米通商代表:合意のために譲歩できるという姿勢を示した国と何も譲れないという国が参加、後者が圧倒的だった。ラミー欧州委員:WTOの全会一致の意思決定方式は古くさく、大幅な見直しが必要。アモリン・ブラジル外相:先進国に対抗する途上国同士の結束を最後まで維持できた。(WTOの通商交渉での途上国の発言力は)今後ますます強くなっていく。

●朝日新聞(9.17):「貿易交渉の場が、政治的な争いの色彩を強め、機能不全に陥りつつある」。先進国と途上国の農業補助金をめぐる対立で、日本は「存在感」を示せなかった。原因はコメなどの農政改革の遅れと、欧米重視・「個別の自由貿易協定協定を含めた途上国とのコミュニケーション不足」。「日本としては、多角的な貿易交渉を促すとともに、農業の効率化を前提とした、2国間や地域的な自由貿易協定の締結を通じての国際的な交渉力の強化を急ぐ必要がある」。なお、アフリカ連合(AU)高官が、「先進国の高い輸入関税や農業補助金が途上国を苦しめていると批難。会議が途上国の貧困を撲滅し、生活水準の向上を約束しなかったとして、このまま事態が変わらなければ、アフリカ諸国のWTO離脱もあり得ると警告した」との付随報道。

●読売新聞(9.17):「日本が重視する通商政策の足かせとならないためにも、農政改革の一層の加速が求められている」。

●毎日新聞(9.17):本間正義東大教授と今野秀洋日本貿易保険理事長の談話を掲載。

 本間:ウルグアイ・ラウンドは最終合意まで8年近くかかっており、交渉の遅れ自体は悲観することはない。日本は守勢に立たされてきた農業分野でも交渉努力を続けるべきで、農政改革の手綱を緩めてはならない。途上国が最も不満を感じていた先進国の農業補助金の削減問題で途上国の主張に理解を示して調整役を努める好機だったのに、関税削減で後ろ向きな提案しかできなかった。自由貿易協定への流れが強まるだろうが、多角的自由貿易体制の恩恵を受けている日本は、「農業分野でコメなど高関税品目を「あれもこれも」と守ろうとするのではなく、一層の改革努力を示して調整役」となり、「まず新ラウンドを立て直す努力をすべきだ」。

 今野:世界は当面、FTA時代になる。日本はメキシコとの交渉で農業に関する政治決断ができるかどうかが試金石。「これまでのスピードでは取り残されて、日本だけが関税をかけられ、損をすることになちかねない」。

●日本農業新聞(9.17):(論説)途上国への働きかけに力を入れるべき。経済界はFTAに軸足を移す可能性があり、農産物が厳しい状況に追い込まれないように警戒しなければならない。「わが国が提案しているように、途上国も先進国も生き延びられる「多様な農業の共存」のルール化が必要」で、「わが国の提案を途上国に積極的に働きかけて、支持の輪を広げることが大切」。「(関税)上限設定は阻止できなかったが、限定付きながら「非貿易関心事項に基づく品目の例外措置」が盛り込まれた。これを今後の交渉の足掛りにして内容を充実させ、新しい貿易ルールを確立すべきだ」。

米国ページ・トップに戻る

●ニューヨーク・タイムズ(9.16):1年以上先の大統領選挙がカンクンに影を落とした。会合を蹴飛ばした途上国グループは、農業補助金についての今年の米国との交渉には何も期待できないと確信していた。ゼーリックは、米国政府が巨額の農業補助金を削減する用意があると約束してきたが、妥協案は、基本的には農業法プログラムに触るものではなかった。アフリカの最貧4ヵ国の要求にもかかわらず、米国ワタ作農民補助金の廃止には応じなかった(農業情報研究所=WAPIC注)。2000年選挙では、農業州は圧倒的にブッシュを支持した。米国納税者により補助される安価なコーンや大豆などから利益を上げるアグリビジナスは、共和党支持に鞍替えした。交渉決裂の責任の一端は、投資と貿易円滑化に拘ったヨーロッパにもある。

 (社説)カンクンでの米国の役割は押し黙ることだった。ブッシュ政府はWTOの権限を拡張する提案には関心がなかったし、農業ロビーは外国市場へのアクセス拡大から利益を得るグループと政府の継続保護を要求する非効率な部門の間で分裂している。カンクンで高い道義的評価を受け、貿易自由化に向けて歴史的なリーダーシップを取る希望は、有害なワタ補助金の段階的廃止を要求する西アフリカ諸国をはねつけることで、さらに打ち砕かれた。

 (農業情報研究所=WAPIC注)これは、ベナン、ブルキナ・ファソ、チャド、マリの西アフリカ4ヵ国が、かねて一般理事会と農業委員会に提案していたものである。4ヵ国は、先進国のワタ補助金によりこれらの国が損害を受けているとして、補助金の廃止と、補助金が廃止されるまでの経済的損害の補償を求めていたが、改めてカンクン会合での決定を要請した。10日夕の会合で、ワタの国の経済にとっての重要性や、ここ数年の先進国の補助金総額が世界全体のワタ貿易額にも匹敵することを説明、これらの国には競争力はあるが、補助金とは競争できないと論じた。提案が実現されれば、国際貿易システムへの一層の参加と貧困脱出のための貿易の利用が可能になるとも強調した。これに対して、スパチャイ事務局長が、問題は重大であると異例の介入発現を行なった。彼は、4ヵ国が特別待遇ではなく、公正な多角的貿易システムに基づく解決を求めているのだと弁護、提案は農業交渉全体における野心的結果の必要性を強調するものだとも述べた。
 この提案の標的とされたには、実質的には米国である。2001/02年、米国は442万トンのワタを生産、中国に次ぐ世界第二のワタ生産国となっている。問題は、その54%に相当する249万5千トンが輸出され、輸入は5千トンにすぎないことである。純輸出は239万に達する。西・中央アフリカ全体の純輸出は世界第二位であるが、それでも78万5千トンで、米国の輸出の3分の1足らずにすぎない。EUは49万トンの輸入超過となっている。世界のワタ輸出市場では、米国が圧倒的支配力をもっている。
 この提案は、全体として、あるいは補助金の段階的廃止など部分的に、カナダ、オーストラリア、アルゼンチン、カメルーン、ギニア、南アフリカ、バングラデシュ、セネガル、インドの支持を得た。これらの国のいくつかは、他の品目でも類似の問題があると指摘した。EUは、生産も輸出も少なく、世界のワタ価格への影響力はないし、ワタ生産者支持も変化しつつあると述べ、解決に向けての合意に達するのを助けると約束した。しかし、米国は、ワタ貿易の歪曲は補助金によってだけ引き起こされているのではなく、合成繊維生産支持のような産業政策、完成品への高率関税、天候による高収量なども価格下落の要因になっていると、4ヵ国の要求にまともに対応する姿勢を示さなかった。この問題の協議のために、スパチャイ事務局長が「進行役」を引き受けたが、最後まで米国は譲歩しなっかった。アフリカ諸国が会合を蹴飛ばし、さらにWTO離脱まで考え始めた最大の要因の一つがこれである。

●ワシントン・ポスト(9.16):ブッシュ政府は自由貿易協定に比重を移すことになる。

 (社説)会合決裂の責任は、農業で早い時期に寛容な提案をしなかった米国・EU・日本と、途上国グループを形成したブラジル・インド・中国などの「中進国」の両方にある。ともあれ、WTO交渉の進展は当分望めないから、ゼーリックが自由貿易協定に焦点を置く正当な理由がある。

●ウォール・ストリート・ジャーナル(9.16):(社説)誰もが会合決裂で自由貿易の死を叫ぶことができるが、本当に死んだのは、農業補助が「アンタッチャブル」であるという先進国の幻想である。ウルグアイ・ラウンドでは逃れ、カンクンでもそう期待したが、途上国連合とオーストラリアが幻想を打ち砕いた。

フランス

●ル・モンド(9.15):(社説)会合失敗の理由は、自らの利益を実現するための途上国の組織能力の高まりにある。この新た同盟は、EUが強調するように、アフリカ農民を破壊する穀物最大輸出国を含み、脆さを抱えている。それにもかくかわらず、先進大国に対抗する同盟はひとつの事実である。会合の失敗は多国間主義への新たな脅威であり、途上国同盟も速やかに妥協的態度に転じることが望ましい。WTOに対する信頼が失われ、国連のような一般的政治フォーラムとなってしまえば、米国がこれを無視するようになる。カンクンを無視したブッシュ政府は、親米諸国との二国間同盟を偏重することになる。それで得をする者は誰もいない。

ノルウェー

Aftenposten(9.15):関税引き下げを免れた農民が会合決裂を喜ぶ。

アイルランド

●アイリッシュ・インデペンデント(9.16):農業団体がカンクン会合の決裂に懸念を高めている。今後あり得る交渉の更新で、フィシュラー改革を超えた譲歩を迫られることを恐れているからだ。アイルランド農民協会(IFA)のジョン・ディロンは、会合失敗の責任は、ブラジル・オーストラリア・ニュージーランドのような大輸出国にあるとする。IFAのアセスメントによれば、WTOのペーパーのように輸出補助金が撤廃されれば、アイルランドの輸出所得は5億ユーロの損害を受け、2万の家族農民と農村の多くの雇用が危機にさらされる。

南アフリカ

●ビジネス・デイ(9.16):通商産業相・アレック・アーウィンが会合失敗に懸念と失望を表明。G20+は、食糧安全保障と農村開発、後発途上国に関する懸念はあるものの、市場アクセス・国内補助・輸出競争の分野では、途上国が意味ある成果を獲得する可能性があったことを示唆したという。途上国は、WTOで初めて、イデオロギー・ベースではなく、利益をベースに、開発アジェンダを前進させるために協調した。これにより、農業貿易の中心分野でEUと米国の態度の若干の変化を確保できた。従って、これらの問題とドーハ・ラウンドの他の問題で、真剣な対話に入ることができる。

フィリピン

●ビジネス・ワールド(9.16):政府は、カンクン会合が失敗に帰したとしても、特に農業における貿易改革を推進し続ける。大統領スポークスマンは、「フィリピン政府の立場は、貿易障壁、補助金の排除のために動くことであるカンクン会合に関しては、合意がなかったことは不幸なことだ。我々の立場は、将来の別の機会にこれらを再び取り上げることだ」と語った。

 (別記事)カンクン後の協議は、様々な貿易問題に関する先進国・途上国の強硬な立場を和らげると期待される。

インドネシア

●ジャカルタ・ポスト(9.16):各界の反応を掲載。

 商工会議所:自由化により大豆・コーン・コメ・砂糖など戦略品目の保護が失われることで農業部門は大損害を受け、雇用機会も奪われるからと、会合失敗を喜ぶ。

 NGO=インスティチュート・グローバル・ジャスティス:投資など、シンガポール・イシューに関する交渉の国の経済に与える悪影響を恐れていたから、失敗を祝福。

 インドネシア食料・飲料協会:会合失敗に大した意味はない。我々はすべての面で用意ができていない。貿易交渉で勝っても負けても、ビジネスにとっては同じこと。違法料金、非効率な官僚制度、国内に問題が多すぎる。政府は、WTOの貿易交渉にさらに踏み込む前に、こうした問題を克服せねばならない。我々の製品の海外での競争力をいかにして強めるかに焦点を当てるべきである。米国の大豆とコーンに160%の関税をかける政府の保護の試みは、国内に十分な供給がない(インドネシアの大豆の70%は、国内供給が需要を満たせないために、輸入されている)のだから、何の意味もない。政府は、貿易交渉の前に、国内で必要とする戦略品目の十分な供給えを確保するように、農民を助けるべきである。

 大学エコノミスト・Sri. Adiningsih:WTOのスケジュールは実施に程遠いし、インドネシアのような途上国には拘束的でないから、失敗の影響は大きくない。アセアン自由貿易協定(AFTA)の影響のほうがはるかに大きい。失敗で準備の時間が増えるのは好都合ではあるけれども、既にAFTAに入っており、WTOで進展がなくても、AFTAから離脱はできない。

9月13-14日ページ・トップに戻る

 カンクン閣僚会合は、最終日の14日、途上国が次々と退場するなか、ついに宣言案を採択することなく閉幕した。ただし、シアトルのような決定的決裂ではなく、なお交渉妥結に向けての努力は継続する。そのために、12月15日までに、高級事務レベルでの一般理事会会合を開くことが最終声明に盛り込まれた。

 デルベス閣僚会合議長(メキシコ外相)による閣僚宣言案の提示は13日に持ち越された。それは、特に途上国グループの要求に配慮したものであった。

 農業については、途上国の最大の要求である補助金の削減で、米・EU案や一般理事会案から相当に踏み込んだ。

 途上国の特別の利益にかかわる農産物のリストを作成、これら品目については、一定期間内に輸出補助金を廃止すると、ドーハ宣言から一歩踏み込んだ。その他の品目の輸出補助金については、ドーハ宣言と同様、廃止を視野にいれて、予算と数量を削減するものとした。国内補助金については、生産・貿易歪曲的補助金に品目ごとの上限を設定するという新提案を行なった。全体の平均削減率を満たしながら、とりわけ途上国の関心が高い品目について高率補助を行なうという先進国の常套手段を封じるためである。より歪曲が少ないとされる補助金(「青」の補助金、米国の補助金の多くはこれであり、EUはCAP改革により、その大部分を「緑」の補助金に移行させた)は生産額の5%以内に削減、「緑」の補助金の要件も厳格化することも提案している。

 市場アクセスに関しては、米・EU案と同様な削減方式を提案したが、全品目平均関税引き下げの最低限の目標を定めるという新規定を追加した。ただし、日本等の要求に配慮、「非常に限定された数の品目」について、高率関税継続の可能性を与えた。また、また、最貧途上国産品対して、先進国は無税・無割当の自由アクセスを提供すべきことを明確にした。

 農業以外の分野では、やはり途上国が強く反対する「ニュー・イシュー」(「シンガポール・イシュー」)のうち、公共調達と貿易円滑化のみの交渉を開始し、日本の最大優先事項である投資については、なお問題解明作業を続け、競争については、一般理事会宛ての新たな報告書の準備作業グループを要求するにとどまった。

 このような途上国への配慮にもかかわらず、途上国の要求からは、なお大きなギャップがある。会合最終日の議論は「ニュー・イシュー」で埋め尽くされた。会合の決裂の回避を最優先するEUは、議長案に近い線での妥協を示唆したが、途上国は、四つの問題の議論を一括して拒否する姿勢を変えなかった。これが直接のきっかけとなり、議長は、ついに宣言案合意を断念した。

 しかし、農業をめぐる途上国と先進国のギャップもなお深い。米国は、議長宣言案を「建設的」と評価した。EUは、今までの輸出補助金削減の努力が評価されない一方、輸出補助金と同等以上の貿易歪曲効果があるとOECDも評価する輸出信用、あるいは食糧援助による米国の輸出補助が問題にされないことに強い不満を表明、「廃止」が前提とし、その時期だけを議論の対象とする議長案への不満はフランスで特に高い。CAP改革による「青」の補助金から「緑」の補助金への移行の努力もほとんど評価されていないことへの不満も強い。それでも、多角的システムの崩壊を何よりも恐れ、議長案は交渉の「たたき台」にはなると評価した。

 だが、途上国グループは、すべての輸出補助金の早期廃止、青の補助金も廃止、「緑」の補助金の上限設定と要件の厳格化を要求してきた。市場アクセスについても、先進国にはスイス方式による関税の大幅削減を要求する一方、途上国は平均での・最低限の削減に従うのみで、高率関税の大幅削減を課すようないかなる方式にも従わないし、割当拡大や割当内関税率削減は要求されないとしてきた。さらに、一定のセンシティブな品目はフォーミュラ方式関税削減の対象から除外、交渉に委ねるべき特別品目とすることも提案してきた。途上国への配慮を強めたとはいえ、議長案と途上国の要求とのギャップはあまりに大きい。最大の焦点は先進国の農業補助金である。当否は別として、いまや、それが生産過剰ー価格破壊を通じて世界中の中小農民を破滅に追い込んでいるという認識が広い支持を獲得している。交渉が継続されたとしても、先進国農政の大幅な改革の見通しがないかぎり、交渉妥結に向けての急速な進展は考えられない。EUに関しては、途上国の妥協を誘う要素がまったくないわけではない。しかし、米国議会の補助金削減への抵抗を打ち破るのは至難の業であるから、米国の動向が今後の最大の焦点となろう。ただし、生産過剰ー価格破壊の観点からすると、農産物輸出拡大を主軸とする途上国開発戦略にも一部の責任があることは、前日述べたとおりである。途上国の現在の要求をすべて飲むことで問題が解決されるわけではない。

 いまや、貿易自由化(拡大)=経済成長・開発・雇用の促進というWTO交渉の前提となっている方程式そのものを疑う必要があるかもしれない。これ以上輸出を拡大することで、何がもたらされるのか、貿易自由化論者の間には、カンクン会合の失敗で自由化の遅れは必定となり、世界は[ ]ドルの大損害を受けるといった論調が高まっている。しかし、このように主張される貿易自由化の利益は本当に立証されているのか。神話にすぎないのではないのか。WTOの資料によれば、世界の輸出と生産・国内総生産(GDP)は、戦後一貫して歩調を揃えて増かしてきたが、90年代以降、輸出だけが突出して増大、生産・GDPはこれについて行けず、それらの成長率のギャップは広がる一方となっている。これは、一部輸出関連企業のみが他を犠牲に成長、全体の富の増加には役立たず、また富の地域的・社会的偏在を強めていることを示唆する。自由化推進エコノミストは、下の図をどう説明するのであろうか。これ以上の貿易自由化の意味を再考すべきときである。

 ただし、この再考は、WTOをすべての者に利益をもたらす組織として再生させるためのものでなければならず、WTOの地位低下や死に導くものであってはならない。カンクン会合の失敗を受けて、ゼーリック米国通商代表は、早々と自由貿易協定(FTA)交渉の加速を表明した。EUがカンクン会合の失敗をなんとしても回避しようとしたのは、それによって米国の一国主義的行動がさらに強まり、米国中心のFTAの増殖によって世界が分断され、貿易ブロック間の対立が深まることを恐れるからである。ゼーリックとは対照的に、EU通商担当委員・パスカル・ラミーは、会合の失敗がWTO・多角的システムの弱体化につながってはならないと強調した。

9月11-12日ページ・トップに戻る

 予想どおり(というよりは、米国とEUが妥協したのだから、交渉進展のカギを握る農業交渉はその線で妥結に向かうという大方の予想に反し―参照:インド、中国、ブラジル等、WTO農業交渉で新提案,03.8.21)、先進国の輸出補助金廃止と国内補助金大幅削減で進展がない限り、他の分野での交渉には応じないという新たに形成された途上国グループの強硬な態度により、会合開始後二日経っても、交渉はほとんど前進していない。そればかりか、日本やEUが交渉の不可欠な要素としてきた新たな投資ルールなど、いわゆる「シンガポール・イシュー」の交渉を拒否する広範な途上国連合も形成された。ドーハ閣僚宣言では、インドの強硬な主張を容れて、これらの問題は加盟国の「コンセンサス」が得られた場合にのみ交渉の議題とするとされた。今回の閣僚会合がこの「コンセンサス」を得る機会であったから、現在のラウンドでこれらの問題を取り上げる見通しは、まずなくなった。

 農業交渉で途上国グループをここまで結束させた原因の一つは、米・EU妥協にある。米国は、市場アクセス改善(関税引き下げなど)や国内補助削減における元々の「野心的」提案を後退させることでEUに歩み寄った。といっても、元々の提案が米国自身にも実施不能なほどの「非現実的」なものであり、EUが可能な削減に見合った削減しかするつもりはなかったのだから、これは譲歩というより、最初から仕組まれていた「猿芝居」にすぎない。米国に見え見えの「猿芝居」をさせた返礼に、EUは、その元々の提案に盛られた途上国優遇措置を大きく後退させた。新ラウンドにおける米国の中心目的のひとつは途上国の市場開放であるから、市場アクセスに関しては、途上国にも先進国とまったく同じ開放を要求する立場を崩していない。妥協案には、ブラジル・アルゼンチン・南アフリカなどのケアンズ・グループに属する農産物輸出国には、他の途上国並みの「特別かつ異なる待遇」は与えないという一項まで盛り込んだ。これがケアンズ・グループを分裂させ、強大な途上国交渉グループを結成させることになったのである。

 ただ、この異質な国々の団結は、そう長くは続かないと予想する向きがある。交渉の行方は、この団結次第にかかっている。米国は、従来どおり、個別交渉を利用して、グループを切り崩そうとと躍起になっている。会合直前、50%の米国農民は補助金の5%を受け取ったに過ぎず、僅か7%の巨大輸出アグリビジネスが補助金の半分を分捕っている(2001年の実績)というNGOの指摘が出されたように、米国農業補助金は巨大輸出企業を利するだけで、家族農場は急速に姿を消しつつある。それでも、輸出振興第一の米国政府には、補助金削減、まして廃止の意志など、さらさらない。削減しようにも、議会が絶対に許さないだろう。上院財務委員会委員長のチャック・グラスリー(アイオワ、共和党)は、米国だけが補助金削減に合意するなどありえないと、裏から圧力を強めている。ラウンドの成功ー輸出市場拡大ーを勝ち取るためには、途上国グループを崩壊に導くこと以外に選択肢はない。

 米国は、とりわけ、中米諸国、南アフリカ、タイなど、米国が自由貿易協定(FTA)交渉を進めている国がグループに含まれていることから、これらの国は米国に市場を開放するつもりはないと怒りを顕わにしている。11日には、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラに対し、グループを離脱すれば、巨大な米国市場へのアクセスが拡大すると働きかけた。しかし、これらの国は、これまでのFTA交渉を通じて、米国が巨額の補助金を棄てるつもりはなく、補助金つきの大量の農産物のダンピング輸出を狙っていることを重々承知している。従来の交渉で成功をおさめてきた途上国を分裂に導く米国の常套手段は、今回ばかりは通用しないかもしれない。途上国グループは、切り崩しを避けるために、常に携帯電話や携帯パソコンで連絡しあっており、EUがドーハ閣僚宣言を無視、輸出補助金廃止は約束しないと明言したことも、結束を一層強めさせている。アフリカでグループに属するのは南アフリカとエジプトだけであるが、さらに5ヵ国が加入を考慮しているという報道もある。

 こううしたなか、シンガポールの通産相であるジョージ・ヨー農業交渉議長は、途上国グループの主張も取り込んだ合意案を12日に提案することを明らかにした。これがグループの分裂を誘うかもしれない。しかし、米・EUが飲めない要素があれば、それも無益に終わる。交渉の行方は、なお予断できない。しかし、いすれにせよ、輸出補助金の廃止と国内補助金の大幅削減なしには、今回のラウンドが決着することはないであろう。世界の農民を破滅に追い込んでいるのがとめどもない価格下落であり、その最大の要因が農業自由化がもたらす所得低下を補うための直接支払であり、また輸出促進のための輸出補助(EUの輸出補助金だけではない。米国は、それ以上に貿易歪曲的な輸出信用「強要」、食糧援助「強要」という直接的輸出促進手段を多用しており、それをWTOで問題にすることを逃げているために、EUにも輸出補助金廃止をためらわせることになっている)であることは、今日、誰の目にも明らかになっている。

 ただし、補助金撤廃・削減だけで現在の農業危機から脱却できるわけではない。EUの砂糖補助金・保護は、世界砂糖価格下落の元凶として、ブラジル・タイやオーストラリアのWTO提訴を受けているが、EUも反論するように、価格下落の大きなな要因は、1990年代初期の160万トンから現在の1,200万トンへと生産を急増させたブラジルの側にもある。問題は、自由化を追求するあまり生産抑制の手段を失った先進国にも、農産物輸出増大を中軸に据えた途上国開発戦略にもある。農業危機脱出のためには何が必要なのか、今では誰もが「前提」としてしまっている規制緩和・撤廃、自由化、構造改革の根本的見直し、それに基づくまったく別の農業政策・開発戦略の考究が必要なのではないか。貿易政策も、その観点から根本的に見直すべきではないのか。今は交渉妥結を急ぐのではなく、一旦停止して、こうしたことを塾考すべきときだ(参照:米国大学研究者、世界のための米国新農業法の青写真)。関税上限設定に反対するばかりの日本も、一旦交渉停止を持ち出す勇気を持つべきだ。韓国農民の抗議自殺の悲劇を二度と生まないためにも(参照:カンクン自殺韓国農民の1ヵ月前の叫び,03.9.13)。

世界各国の報道と論調 

ヨーロッパ
 
70以上の途上国が11日、投資・競争政策などのニュー・イシューに関する交渉の拒否を発表。カンクン閣僚会合合意の深刻な障害となる恐れがある。この交渉は日本とEUが重視しており、米国は熱心ではないが、米国がEU・日本と途上国との橋渡し役を引き受けると言明。(Developing states block WTO investment talks,FT.com-World,9.12)

アフリカ
 
南アフリカの交渉担当者・カリムが、南アフリカが途上国20ヵ国グループからの離脱を考えているという昨日(10日)の地方紙の報道を否定。グループの創設メンバーとして、それは「絶対に」ないと強調。エジプトがグループに加わりグループは21ヵ国になり、ザンビアも関心を示している。グループは他の多くの問題でも類似の見解を持つが、現下の焦点は先進国の農業補助金と保護の削減だと語る(SA Delegate Sees Movement That Could Unblock Trade Talks,Business Day (Johannesburg),9.11)。

9月10-11日ページ・トップに戻る) 

 閣僚会合が開幕。

 会議場の外で韓国農漁民連盟の49歳の男性が抗議の自殺。デモを遮る高いフェンスに登り、「WTOは農民を殺す」と書いた旗を翻したのち、刃物で胸を刺した。病院に運ばれたが死亡したという。同僚は、WTOとその政策への嫌悪を示す「犠牲的行為」だったと言う(Reuters,AP,AFP等の報道)。

世界各国の報道と論調

日本
 日本が、スイス、韓国、ノルウェーなど8カ国と共同で、カスティーヨ一般理事会議長による宣言案のうち、農産物に対する上限関税率の設定と最低輸入割当枠拡大の項目を外した修正案の提出を決めた。今回の共同提案には日本と連携してきた欧州連合が、名を連ねていないため、共同提案に影響力は乏しいとみられている(mainichi.co.jp,10.11)。

米国
 閣僚会合が始まったが、農民の名による途上国の静かな反乱が広がっている。中国を含む21途上国グループが先進国の農業補助金削減を求めるその提案の優先的論議を要求、いつも通りに米国とEUが交渉を牛耳るろうとすれば黙っていないと構えている(Poorer Nations Plead Farmers' Case at Trade Talks,The New York Times,9.11)。

英国
 世界で最も貧しいベナン、ブルキナファソ、チャド、マリは、先進国の60億ドルにのぼるワタ作補助金廃止の予定表に合意し、補助金が段階的に廃止されるまで補償金を支払うようにWTO閣僚に求めてきた。生産費が高いにもかかわらず、2万5千のワタ作農民に毎年33億ドルの補助金を支払うことで世界最大の輸出国となっている米国は、カンクン会合を前に、これらの国の繊維産業への米国投資を約束することで、これら諸国の要求をかわそうとする動きに出た。今週、ドイツ、フランス、スウェーデン、英国などがこれら4ヵ国の要求への支持を表明したことを受けてのことだ(US fights Cancún plea by Africans on cotton,FT.com-World,9.10)。

 閣僚会合が始まる前でさえ、農業交渉のルールは大きく変わるように見えた。ブラジル、中国、インド、南アフリカに先導される途上国の連合が出現したためだ。グループは、自らの市場の開放への圧力に抵抗しながら、先進国の農業補助金と貿易障壁の大幅削減に向けて圧力をかけると約束した。米国とEUは新たなグループの重みを軽くみすぎている。現在準備されている以上の農業補助、特に輸出補助の削減と輸入障壁の引き下げを迫られるだろう(Third World alliance hits at trade rules,FT.com-World,9.10)。

 昨夜、漏出したペーパーにより、欧州委員会が、EU諸国に内密に、閣僚会合宣言から輸出補助金廃止に関するすべての文言を取り除こうとしていることが明るみに出た。英国農業担当相・ベケットは相談を受けていないと困惑している(EU reneges on pledge to third world,Guardian,9.11;Cancun Day 1, and EU is already accused of backtracking,Independent,9.11)。

 閣僚会合開会を迎えて、1万にのぼるメキシコ最貧農民と労働組合員が行進、小農民を国際的ビッグビジネスから護り、貿易ルールが食糧と健康の問題を決めてはならないと要求した(Poor farmers' mass show of strength,Guardian,9.11)。

フィリピン
 大統領府はWTO会合でフィリピンに有利な譲歩が得られると確信している。フィリピンは外国政府が与える輸出補助の廃止、割当のような貿易障壁の除去、保健・衛生にかかわる非関税障壁の除去に向けて圧力をかける(Palace confident of trade concessions,BuisinessWorld,9.11)。

 マニラ警察が政府のWTO閣僚会合参加に抗議する千人ほどを解散させた。30人が怪我をし、5人の農民が逮捕された。彼らはフィリピンのWTO脱退を要求している(30 hurt as cops disperse anti-WTO protesters,Inq7.net,9.11)。

インドネシア
 インドネシアのWTO閣僚会合における立場は先週まで定まらなかった。経済省はインドについていくだけと言っていた。しかし、外務省経済外交担当者は、農産物輸出国のケアンズ・グループからどんな利益が得られるかも知らずに加入していたと認め、インドネシアは農産物輸出国ではないと語るに至った。いまや立場は固まった。先週配布されたペーパーで、政府は国の産業のための市場アクセスの拡大のために戦う一方で、国の戦略品目の輸入関税引き下げは拒否すると約束した(Indnesia struggles to set its own WTO agenda,The Jakata Post,9.11)。

タイ
 ごく平凡な一農民、「良好農業慣行(GAP)」に合致するように農業技術を改善してきた。彼の目標は、いかなる国際貿易制限にも出会わないように、米の品質を改善することである。「私は世界の農産物貿易の趨勢は変化したと思う。関税障壁や補助金は、もう古い話だ。我々は品質で競争する。そのほうがベターで公正ではないか」と言う。閣僚会合の農業交渉は豊かな国と貧しい国のギャップを埋められそうにない(Harvest could be meagre,Bangkok Post,9.10)。

インド
 閣僚会合直前、インド、ブラジル、中国や新たに加わったエジプトを含むG21途上国グループのコミュニケが米国とEUに強烈な反撃を加えた。コミュニケは輸出補助金は廃止されねばならないと言う。同時に、米国の輸出信用、食糧援助に関する厳格なルールが策定されねばならず、出補助削減約束をかいくぐる手段が輸出競争を歪曲し続けることはできないと言う(G-21 sticks to its guns,wants farm sops to go,The Economic Times,9.11)

 イスラエルが補助金レベル引き下げ、途上国農産物の市場アクセス拡大を先進国に迫るインドが採択した戦略を「強く支持」している(Israel favours spl farm sops under WTO,The Economic Times,9.11)

9月9-10日ページ・トップに戻る) 

 インド・ブラジル等で新たに構成された中国を含む農業交渉にかかわる途上国グループにエジプトが加わり、計21ヵ国(世界人口の半分以上、農民の65%を占める)のグループとなる。グループは先進国の補助金の撤廃・実質削減を最優先。中国農業部長は、「途上国のニーズが完全に考慮されたときにのみ、カンクンは成功する」と述べる。南アフリカ貿易相は、補助金の基本的問題に取り組まれる場合に、途上国の一層の自由化の可能性が開かれる、グループの補助金削減提案に具体的数字は含まれていないが、数字が決定される枠組みがもっと有利になる必要があり、先進国との基本的相違は数字の問題以前の枠組みにあると語る。