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インド、米国のGM食糧援助を拒否

農業情報研究所(WAPIC)

03.1.7

 Financial Timesが自ら得た情報として伝えるところによると、インドが、遺伝子組み換え(GM)食品を含んでいたことを理由に、米国からの食糧援助の大量の船荷の受け入れを拒んだ。慢性的栄養不良に悩むインドの一部地域に向けられた米国政府の年間1億ドルにのぼる食糧援助の一部をなすトウモロコシと大豆の船荷がGM成分を含むと考えられている。

 インド政府の決定に対して上訴している米国は、米国では、通常、GM食品は非GM食品と混ぜられているから、トウモロコシの船荷がGM成分を含まないと保証することはできないと言っている。米国の上訴が拒否されれば、インドにおけるGM作物の商業的開発にマイナスの影響を与える可能性がある。

 昨年、ザンビアは、GM成分を含むことを理由に、国際食糧援助を拒み、強い批判を浴びたが、昨年、この船荷を拒んだインド委員会の議長は、GM食品それ自体には反対しないが、「もし人間の健康にダメージがあり得るなら、いかなる輸入も拒否する権利がある」と言う。

 昨年、インドは、Bt棉の導入ーインド初のGM作物承認ーに青信号を出したが、以来、インドのGM政策を決定する委員会が定期的に開かれ、あるいはマスタードなどの他のGM作物の承認を延期している。食糧援助の拒否は、遺伝子組み換えに関するインドの立場の混乱を深めることになった。

 今月末に審理されることになろう米国の上訴は、インドが、将来、GM成分を含む貿易または援助輸入を受け入れることになるかどうかに関する明確なシグナルを提供することになりそうである。また、それは、GM食品一般に反対する国内政治勢力にインド政府がどう対処するつもりなのかのシグナルともなり得る。

 インドのエコニミストは、国は第二の「緑の革命」を是非とも必要としていると言う。インドは、現在、6千万トン以上の食糧ストックー世界全体の4分の1ーを持つとはいえ、このところ、人口増加のスピードが収量増加のスピードを上回るようになっている。多くの政府科学者は、GM作物が国の長期的食糧安全保障への解答であると考えている。しかし、政府高官は、GM成分が含まれるかどうか明確な表示がないかぎり、インドが一層の食糧輸入を受け入れるのは難しいと言う。インド環境省高官によれば、「我々はそれぞれのGM問題をケース・バイ・ケースで調査する権利がある」。

 大雑把に言って、米国のコーン生産の3分の1、その大豆生産の4分の3は遺伝子操作されたものである。

 India rejects food aid over GM content,FT com,02.1.2
 India rejects gene-modified food aid,Financial Times,02.1.3,p.2

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