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米国:遺伝子組み換え(GM)作物承認モラトリアムでEUをWTO提訴へ

農業情報研究所(WAPIC)

03.5.13

 報道によれば、米国は、今日、EUの遺伝子組み換え(GM)食品の事実上のモラトリアムの解除を求めてWTOに訴える。13日4時21分のファイナンシャル・タイムズ紙インターネット版記事が伝えている(US to confront EU on genetically modified foods,FT com,5.13)。

 米国のWTO提訴には、やはりGM作物の大規模栽培国であるアルゼンチンとカナダ、さらに来年には米国との自由貿易協定(FTA)締結交渉開始の「報償」を与えられるエジプトも加わるだろうという。

 米国の論拠は、消費者の圧力の下での4年以上前からのEUのGM作物承認の制限は、GM作物が人間の健康と環境に有害であるという証拠なしに課された違法な貿易障壁であるという点にある。

 米国通商代表・ロバート・ゼーリックは、今年1月、この問題でWTOに提訴すると発表したが、イラク戦争に対するヨーロッパの支持を妨げる要因になることを恐れるホワイト・ハウスにより実行を阻まれてきた。しかし、ファイナンシャル・タイムズ紙は、戦争も終わり、ホワイト・ハウスが軍事行動へのフランスとドイツの反対に怒り、ゼーリックは実行に向けてのゴーサインを受け取ったと言う。

 議会や農業圧力団体の政府に対する圧力も高まっていた。最近、上院財務委員会委員長のチャールズ・グラスリーは、EUの禁止は反バイオテクノロジーのヒステリーを世界の他の地域に拡大させていると、WTO提訴を迫っていた。米国農民団体は、毎年、EUへの3億ドルの販売を失っていると主張してきた。

 EUの保健・消費者保護担当委員、デイビッド・バーンは、モラトリアムは、WTOの裁決が出る前、年末までに解除されるだろうと言っている。

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