インド、GMワタ6品種の商業栽培承認 NGOがインドの条件での適性見直しを要求

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.19

 インドの遺伝子操作承認委員会(GEAC)が今月初め、遺伝子組み換え(GM)Btワタ6品種の北部諸州(パンジャブ、ハリアナ、ラジャスタン)での商業栽培を承認する決定を行った。インドは、Btワタ商業栽培承認を02年に初めて許したが、北部諸州での商業栽培は承認されていなかった。この決定を受け、非政府組織・Gene Campaignは、Btワタのインドの条件下での適性を改めて見直すように要求している。

 02年3月、GEACは、中南部での商業栽培用にモンサントが26%の株を持つMahyco社の開発したMech 12、Mech 162、BtMech 184のBtワタ3品種を承認した。昨年4月には、やはり中南部での商業栽培用に、Rasi Seeds社のRCH 2 Btワタを承認した。承認されたのはこの4品種だけだったが、GEACは昨年4月、Mahyco、Rasi Seeds、Ancur Seedsの3社による12のBt品種(注)の大規模フィールド実験と種子生産を承認していた。今回の承認により、商業栽培承認品種は一気に10品種に増加、Btワタ栽培が北部諸州にも拡大することになる。

 商業栽培初年の02-03年(10月-9月)のBtワタ栽培面積は3万8038haで、ワタ栽培総面積の0.51%を占めるにすぎなかった。業界は、今季のBtワタ栽培面積は、前季の40万5000haから130万haに飛躍したと言う。Btワタ栽培は、インドワタ作の命運を左右するほどの重みを持つに至った。

 このようなBtワタ急拡大にGene Campaignが危機感を強めている(`Review all Bt cotton varieties'',The Hindu,3.18)。これを率いるサハイ女史は、Mahyco社のBtワタの貧弱なパフォーマンス、その環境・健康影響の見直しの前に、なぜ北部諸州で新品種の栽培を認めたのか訝る。また、なぜ違法Btワタを取り締まらないのかとGEACを批難する。彼女は、「違法品種が急速に広まっており、この状況を規制するための当局からの応答がない」と言う。違法品種の拡散の事実はGEACも認めており、この問題は今年1月の会合でも取り上げられたが、取り締まりの法的手段の不備が指摘されたにとどまる。

 彼女は、Gene Campaignに協力する研究グループや科学者が行った3年間の観察に基づき、農民は、Mahyco社のMech 12、BtMech 184のために大損害を蒙ったと主張する。彼女によると、これらは標的害虫(綿実蛾幼虫)にほとんど効かない、二つの品種のエーカー(0.4ha)当たり最大収量は4キンタルにすぎず、平均損失額はエーカー当たり4000ルピー(9000円ほど)に上る。その原因は低収量、綿玉の早期落下、萎靡にある。すべてのBtワタの繊維は、長さ・色・伸張強度、どれをとっても品質が劣ることも分かったという。

 この二つの品種に比べると、最初のシーズンのRCH 2の収量はエーカー当たり11キンタル、農民にもたらした純益はエーカー当たり1万1850ルピーになった。

 この調査は無作為に選ばれた209の農家を対象としたもので、うち134はBtワタだけを栽培、73はBtワタと非Btワタの両方、2は非Btワタだけを栽培していた。

 GMワタ拡大がインドワタ作とワタ作農民に明るい展望を開くのだろうか。GM技術は、通常の育種に比べて地域の条件へのきめ細かい対応を容易にするという主張もあるが、インドの現状は、今のところ、それを完全には実証はしていないようだ。

(注)Rasi Seeds社のRCH 118、RC H559(中部)、RCH 368(南部)、RCH 317(北部)、Ancur Seeds社のAnkur 651、Ankur2534(北部)、Ankur651、Ankur09(中部)、Mahyco社のMRC 6301、MRC 6160(中部)、MRC 6301、MRC6322(南部)。

 関連情報
 インド、(4番目の)GMワタ承認(04.4)
 
インド:農民、モンサントを攻撃(03.9)
 
インド:Bt毒抵抗性害虫種が増殖、GMワタ拡散に警告,03.8.16
 
インド農民がGM海賊版、米国農民はGMコーン過剰栽培,03.6.20
 
インド:GMポテト給食で栄養不足、実験承認にも不備,03.6.16
 
ンド:最初のBtコトン失敗、徹底調査を(03.4)
 
インド:GM棉は華々しい成果という研究、しかし「持続可能性」は?,03.2.8
 
インド:開発企業、Bt.棉の失敗を否定,02.11.15
 
インド:GMマスタードの承認延期、ヴァンダナ・シヴァ、Bt棉承認取り消しも要求,02.11.8
 
インド:遺伝子組み換え(GM)棉承認、途上国のGM採用に拍車か,02.3.28
 
インド:政府、遺伝子組み換え棉栽培で決定へ(02.3)