インド 公的に育成されたGM作物7種 2〜3年中に商業栽培の見通し

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.25

 Hindu Business(Business Line) によると、インド農業研究会議(ICAR)が同紙に対し、7つの遺伝子組み換え(GM)作物品種の圃場実験が完了していることを明らかにした。今シーズン、遺伝子操作承認委員会(GEAC)に大規模実験と種子生産の承認を申請、順調に行けば2008年か2009年には、民間部門ではなく公的部門、つまりICARの最初のGM作物が農民の手に届くだろうという。

 Commercialisation of ICAR transgenics likely by 2008,Hindu Business,7.25
  http://www.indiapress.org/gen/news.php/Business_Line/400x60/0

 これら7つのGM品種とは、オオタバコガ抵抗性ワタ、サンカメイガ抵抗性イネ、ナスノメイガ抵抗性ナス、葉巻病ウイルス抵抗性トマト、蛋白質強化ポテト、塩害・干ばつ耐性のトマトとマスタードという。

 ワタとイネについては、土壌細菌・Bt由来のcry1Ac遺伝子を利用、ナスについてはcry1Ab遺伝子を利用した。ポテトについては蛋白質が豊富なアマランスの種子からクローンされたAmAlが使用され、塩害・干ばつ抵抗性のトマトとマスタードにはオスモチン蛋白質遺伝子が使われた。葉巻病ウイルス抵抗性トマトには、”アンチセンス構造の複製遺伝子”が動員されたという。

 ICARによると、そのGM製品の利点は、外来遺伝子が合体される”優れたバックグランド”にある。今までに承認されたBtワタが期待通りのパフォーマンスを示さないのはハイブリッドという貧弱なバックグランドがあるからだが(⇒Btワタの有効性をめぐるインドの論争ー研究者とNGOの抗争,05.9.5)、ICARは認証され、農民に非常に人気のある同系品種を選択したという。

 今までに59のGMワタの商業栽培が承認されたが、これらのすべてがハイブリッドであった。これらのハイブリッド種は、主として高い使用料のために非常に高価でもあり、これを使用する農民が借金で首が回らなくなり、自殺に追い込まれるケースが後を絶たないと言われてきた(⇒ヴァンダナ・シヴァ インド農民の自殺はジェノサイド 全国規模のGM種子排斥運動,06.5.9;インド政府委員会 モンサントが技術独占 法外なBtワタ種子特許料が農民に不当なコスト,06.4.17;インド国立研究機関研究者 高価なGM作物が農民を自殺に追い込むと政府を批判,06.4.12)。

 公的に育成されたGM品種やハイブリッドが市場に入れば事態は変るだろうという。

 ただし、インドではGM作物の承認過程を速める動きがある一方(インド GM作物承認を”イベント・ベース”に変更 承認過程を大幅に短縮,06.7.4)、GM作物導入禁止を求めるヴァンダナ・シヴァの要請を裁判所が認める(インド GM作物承認を”イベント・ベース”に変更 承認過程を大幅に短縮,06.7.4)といったGM作物をめぐる非常に複雑な動きがある。ICARの品種が順調に認められるとは限らない。

 なお、法外な特許使用料の引き下げを独禁当局に命じられ、最高裁への控訴でも敗れたモンサント社は未だに値下げに抵抗を続けている(Bt cottonseed sales continue at lower prices,Hindu Business,6.22;)。