ヴァンダナ・シヴァ インド農民の自殺はジェノサイド 全国規模のGM種子排斥運動

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.9

 インド・科学技術エコロジー財団のヴァンダナ・シヴァが8日、1997年以来の4万にのぼる農民の自殺はジェノサイド(大量殺戮)以外の何ものでもなく、このジェノサイドは小農民を破壊し、インド農業を大規模な工業的企業農業に変えようとするWTOと世銀が強制し、政府が実施する政策の結果であるとする声明を発表した。

 MOVEMENT TO STOP THE GENOCIDE OF FARMERS,06.5.8
 http://www.navdanya.org/news/06may08.htm

 声明は、自殺は負債の結果であり、負債は、農業における自由貿易と貿易自由化政策に結びついた生産コスト上昇と価格低下の結果であると言う。

 声明によると、彼女は、農民の自殺と種子独占に関するナブダニヤ(9つの種)運動(彼女が長いこと主導してきた在来種子保存・利用の運動)報告の第4版を発表した。初版はアンドラ・プラデーシュ州のコットン・ベルトで農民の自殺が始まった1998年に出た。報告は、自殺ベルトにおける農民が高価で自家採種できないハイブリッド種子や遺伝子組み換え(GM)種子への依存を深める趨勢を示している。モンサントのBtワタが生産コスト上昇、不作の増大、農民の自殺率の増加と密接に関係しており、またBtワタによる健康障害の報告も増えているという。

 ナブダニヤは、Btワタの栽培のモラトリアムを要求、またその社会・経済的影響と健康・環境影響の独立研究が市民の参加で行われるように要求している。また、農民品種と農民の権利を破壊し、農民をモンサントのような企業による信頼できないGM種子に完全に依存させる種子法案のようないかなる法律の通過も許してはならないと繰り返し主張している。

 そして、今やインド中の広範な農業団体が農民の自殺を止め、食料主権を要求する運動(Yatra)を立ち上げつつある。それは、GM企業農業と種子独占に関する農民の自覚を生み出し、農民がBtワタをボイコットし、「自殺種子と奴隷の種子を棄て、生活の種子と自由と希望の種子」を採用することを奨励する。また、この運動に参加する農民には低コストのエコロジカルな有機農業に関する訓練を施し、自家採種でき、毎年高価な農薬とともに高いコストで買う必要のない生活の種子と希望の種子を配布するという。

 声明は、自家採種と農民の間での種子の共有、そしてエコロジカルな有機農業が負債の悪循環を断ち、繁栄の好循環を生み出す、この運動は、またGMフリー・特許フリー・負債フリー・自殺フリーゾーンを促進すると言う。

 関連情報
 インド 新たに16種のGMワタを承認 農民は救われるのか,06.5.8
 インド政府委員会 モンサントが技術独占 法外なBtワタ種子特許料が農民に不当なコスト,06.4.17
 インド国立研究機関研究者 高価なGM作物が農民を自殺に追い込むと政府を批判,06.4.12
 Btワタの有効性をめぐるインドの論争ー研究者とNGOの抗争,05.9.5
 インド Btワタが播種後110日で標的害虫に無効化の新研究,05.8.3
 
インド、GMワタ6品種の商業栽培承認 NGOがインドの条件での適性見直しを要求,05.3.19
 
国連、インド種子保存・利用運動を表彰 生物多様性の保全と利用による貧困軽減のモデル,04.6.16
 
インド:科学は遺伝子組み換え(GM)産業の主張を支持しない,03.3.19
 
インド:WTO改革が必要(ヴァンダナ・シヴァ)(02.11)
 
インド:GMマスタードの承認延期、ヴァンダナ・シヴァ、Bt棉承認取り消しも要求,02.11.8
 
インド:ヴァンダナ・シバ「農業を持続可能で、公平に」,02.10.4
 
インド:ヴァンダナ・シヴァ、直接支払いは持続可能な農業の道を妨害,02.4.23