中国GMイネ 昨年11月に4度目の承認棚上げと中国紙報道

農業情報研究所(WAPIC)

07.2.26

 中国メディアの報道によると、2006年11月、遺伝子組み換え(GM)食品安全性中国国家委員会がGMイネの商業栽培の承認を棚上げにした。2004年以来少なくとも4回目の承認棚上げになる。農業遺伝子改変生物安全性国家委員会の一委員は、「一部の安全性関連データが欠けているために承認申請は拒否された」と言っているという。

 China shelves commercial production of GM rice again,xinhua,2.25
 http://news.xinhuanet.com/english/2007-02/25/content_5771241.htm

 承認の可否は、基本的には毎年11月の定例会合で決定される。GMイネ承認となれば報道されないはずはないが、これをめぐる報道は2005年12月の報道(中国生物安全委員会 GMイネ商業栽培を承認せず 一層の安全性データを求める,05.12.12)を最後に完全に途絶えていた。従って、この承認棚上げは当然推測されたことではあるが、この報道でそれが確認されたと言ってよいだろう。

 中国がGMイネ導入に踏み切れば、世界のGM作物導入状況に決定的影響を及ぼす。今までのところ、食料輸入国である日本、韓国、ヨーロッパでGM食品への反発が強く、中国やインドのような食料大消費国でもGM食料作物は承認していない。従って、米国、カナダ、オーストラリアなどの生産者は、輸出市場を失うこと恐れて小麦やコメのような主要食料穀物のGM品種は決して採用しようとしなかった。しかし、中国がGM米を承認することになれば、それはGM基本食料の巨大輸出市場が開けることを意味する。この巨大市場への輸出を目指すこれら大輸出国におけるGM小麦・イネの栽培が一気に進むことになるだろう。

 だからこそ、バイテク企業をスポンサーとするGM作物普及推進団体・国際農業バイオ事業団(ISAAA)などは、中国のGMイネ承認に大きな期待を寄せ、今にも承認されるだろうといった希望的観測を垂れ流し続けている。しかし、筆者は既に、中国の「政治指導者の大胆な決定」がないかぎり、「中国がすぐにもGMイネの承認に踏み切るとは予想し難いだけではなく、場合によっては永久に承認を断念することになるかもしれない」とする分析を提示しておいた(北林寿信 「遺伝子組み換え作物の将来 その5 中国は遺伝子組み換え稲を承認するのか」 『農林経済(時事通信社)』 06年12月4日)。この見方は今も変える必要はないと考えている。安全性を立証するデータの収集には長い時間がかかるし、その間には、逆に、悪影響の証拠も積み重なってくる恐れもある。その上、GMイネの収量が、これまでに開発された、あるいは今後開発される多収ハイブリッドイネの収量を超える保証はまったくない。

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