フランス、殺虫剤・ゴーショのトウモロコシ種子処理使用を停止

農業情報研究所(WAPIC)

04.5.26

 フランス農業省は25日、殺虫剤・ゴーショ(イミダクロプリド)のトウモロコシ種子処理のための使用を、毒性に関する欧州委員会の決定が出る06年まで停止すると発表した(L'usage du gaucho pour le maïs est suspendu par Hervé GAYMARD)。

 この殺虫剤は播種前にヒマワリやトウモロコシの種子を被覆するもので、散布される他の殺虫剤よりも安全で、環境影響も少ないとされてきた。ドイツのバイエル社系列のバイエル・クロップサイエンス社が製造する。ところが、10年ほど前からフランス南部で蜜蜂の大量死が発生、養蜂業者が、同様に使用されるフィプロニルやゴーショがその原因だと告発してきた。それを受け、99年には蜜蜂が花に大量に集まるヒマワリの栽培に使うことを禁止された。蜜蜂は花粉を通じてのみこれら薬剤に曝されると見られた。従って、トウモロコシ栽培での使用は危険は少ないとして禁止されなかった。今年2月、農相はフィプロニルを成分とする殺虫剤の販売と使用を禁止したが、トウモロコシ栽培に使用するためのゴーショの販売許可を更新した。だが、4月、フランスの行政最高裁判所に当たるコンセーユ・デタはこの農相決定の取り消しを命じていた。

 農業省の今回の決定は、とくに植物防疫剤毒性研究委員会の最近の意見を受けたもので、停止措置を発表した省のコミュニケによると、委員会は、「蜜蜂にとっての危険は、花粉を通じてのみこの薬剤に曝されるという事実から、ヒマワリの種子の被覆に使う場合よりは小さいとしても、心配は残る」、「さらに、科学者は、許可された量のイミダクロプリドを活性成分として含むゴーショ調整品により被覆されたトウモロコシ種子の使用にかかわる蜜蜂の危険に関して、EU指令の意味で許容可能な条件を引き出すことは、現実には不可能と考えた」と述べている。

 この決定の前、多くの農業者団体が、この禁止は穀物栽培者にとって「破局」だと、ラファラン首相の裁定を要求してきた。彼らは、ゴーショの禁止はフランスの保健と環境のリスクを重大化させ、またフランス農業全体を破滅させると主張している。彼らによれば、ゴーショによる種子被覆は植物保護の「最も確かで、有効な」手段である。ゴーショはドイツやスイスなど100ヵ国以上で問題なく使用されており、この種子処理を止めても蜜蜂を保護することにはならないばかりか、人間と動物の健康を脅かすカリエスのような病気が再現するだろうと言う(Les agriculteurs craignent une "catastrophe" si le Gaucho est interdit,Agrisalon,5.21 )。フランス農業は、グローバリゼーション(EU拡大・WTO・FTA等)とCAP改革で保護を奪われ、既に食品安全・環境保全・動物福祉などにかかわる規制の多大なコストを払っている。さらにフィプロニルが禁止され、ゴーショまで禁止されるとなれば、農業者が「フランス農業全体の破滅」と叫ぶのも無理はない。 

 他方、バイエル・クロップサイエンス社は、他の科学的研究が進行中のときにこの決定とは驚きだ、法的手段に訴えることも辞さないと表明している。その声明は、「省が引き合いに出した理由を深く検討、この決定に対抗するあらゆる手段」を研究すると言う(Suspension du Gaucho, Bayer s'étonne,Agrisalon,5.25)。

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