日欧EPA<農業情報研究所グローバリゼーション二国間 関係・地域協力2016年1218

日欧EPA交渉に関する最新情報(第二弾) TTP以上のチーズ市場開放で据え膳を食うか食わぬか

 日本とEUが17日、目指していた経済連携協定(EPA)交渉の年内大枠合意を断念した。EUのペトリチオーネ首席交渉官が東京都内で記者会見、12日からの首席交渉官会合は一部の農産品関税などで双方の主張の溝が埋まらないまま終了したことを明かした。年明けに交渉を再開し、1月中の合意を目指すという。

  日欧EPA 農産品溝残し 来月合意目指す 毎日新聞 16.12.17

  年内大枠合意見送り EU首席交渉官会見 豚肉 進展と説明 日欧EPA 日本農業新聞 16.12.18

 ここに至るも日本政府からの情報は示されない。「農林議員に説明すれば交渉がつぶされると思い、首相官邸が警戒している(政府関係者)」(「早期合意 警戒緩めず 自民農林議員 情報不足にいら立ち」 日本農業新聞 16.12.18 3面)とのことだが、どうやら交渉の焦点が見えてきた。

 「ペトリチオーネ氏によると、EUが日本に関税の撤廃や引き下げを求める農産品のうち、豚肉に関しては『大きな進展があった』という。しかし、チーズは『より問題が複雑だ』として、協議が難航していることを示唆した。また、日本がEUに10%の関税の早期撤廃を要求している自動車については、『撤廃の準備はある』との姿勢を示す一方で、『我々の利益と交換だ』として、農産品での更なる日本の譲歩を促した』」(毎日新聞)。

 「農産物交渉でEUは、TPP以上の市場開放を求めている。会見で同氏は、豚肉やチーズの輸出拡大への関心の高さをあらためて説明。豚肉を巡る交渉は『かなり進んだ』とし『すぐに解決策が見つかると確信している』と強調した。

 一方、チーズについては『より問題が難しい』として、交渉が難航していることを明らかにした。日本の重要品目として理解を示したものの、日本はチーズをさらに輸入できるとし、『双方に妥協の余地がある』と日本側をけん制した」(日本農業新聞)。

 ということは、日本がTPP以上のチーズ市場開放を決断すれば交渉はすぐにも決着するということだ。但し、TPP以上の市場開放となれば、既にTPPに合意した他の輸出国もさらなる農産品市場開放を求めてくるだろう。日本はなおTPPを諦めていないのだから、これは官邸も無下に拒絶するわけにはいかない。しかし、折角の据え膳(欧州自動車市場)を食わぬは男の恥だ。あちら立てればこちらが立たず、さあ「超人」安部、どうする?

二兎を追う者は一兎をも得ず。あわてる乞食は貰いが少ない。兎ぶつかれ木の根っこ。カジノだ!アベノミクス最後の矢、矢は尽きた。

  但し、EU自動車産業やそれを抱える欧州諸地域がすんなり首を差し出すかどうか。調印間際のEU-カナダ包括的経済貿易協定(CETA)を転覆させかけたワロニーのような地域が現れないかどうか、それは予測のかぎりでない。

 注

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