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EU農相理事会、GMO新表示規則に合意

農業情報研究所(WAPIC)

2002.11.29

 11月28日、EU農相理事会は、ルクセンブルグ、イギリス、オーストリアが反対したが、特定多数決で、遺伝子組み換え(GM)食品・飼料の表示に関する新規則案(EU:遺伝子組み換え体に関する新規則案,02.7.5)に関する合意に達した。合意された規則案には、欧州委員会が是認し、現在のEU議長国・デンマークが施した修正が含まれている。7月の欧州議会の新規則案採択に続く今回の理事会での合意により、GMOの新規承認のモラトリアム解除に向けて、大きな一歩が踏み出されたことになる。今回の合意案を公式な法文に仕上げ、次回の農相理事会で採択した後に欧州議会の第二読会に送られ、そこで最終的採択が図られる。今回の合意は、12月に予定されている環境相理事会でのトレーサビリティ及び表示に関する提案の採択にも道を開くものである。しかし、満場一致ではなく特定多数決で決着したことに象徴されるように、加盟国間には多くの意見の違いが残っている。最終的採択までには、なお混乱があり得るし、モラトリアム解除が円滑に進むと考えるのも早計である。

 イギリスはGM促進の観点から反対した。ルクセンブルグ、オーストリアは、逆にGM含有ゼロを主張して反対した。ドイツは飼料の表示について何も規定がないなどと不満を表明したが、最終的には妥協に応じた

 主要な修正は次のようなとおり。

 ・承認されていないがリスクがないと評価されたGMOが偶然に含まれる食品中のGMO最大許容量は0.5%とする(欧州委員会提案はこの上限を1%としていたが、7月の欧州議会採択案も0.5%としていた)。

 ・GMO含有が0.9%未満(現在は1%未満)のものは表示規則の適用を免除される。表示規則が適用されるGMOの範囲は、DNAまたは蛋白質の検出の可能性に関係なく、規則の下で承認されたすべての食品に拡大される。

 ・GM飼料で育てられた家畜からの製品(卵、ミルク、肉)には表示規則は適用されない。

 ・GM食品・飼料の承認手続。承認申請は加盟国の国家当局に送られる。科学的評価は欧州食品安全庁(EFSA)が行い、EFSAの意見に基づき、欧州委員会が決定案を策定し、これに基づき委員会内部の特別委員会が最終決定を行なう。

 さらに、耕作目的の種子については、EFSAが加盟国国家当局に環境リスク評価を行なうように要求するという特別規定が設けられる。承認権限をEUに集中しようとする欧州委員会の提案に対して、加盟国に意見を与える権限を残そうとしたフランスなどに妥協したものである。

  European Commission:Commissioner David Byrne welcomes political agreement of Council on further labelling requirements for GMOs in food and feed ,11.29 Council of the EU: 2468th Council meeting on Agriculture and Fisheries, Brussels, 28th November 2002 (provisional version) ,11.29

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 Des étiquettes pour les OGM dans les aliments,Le MondeInteractif,11.29
 Les Quinze ont trouvé un accord sur l'étiquetage des OGM,Le MondeInteractif,11.29

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