5.ベニバナセンブリの受粉  | 
    
| 1. 7:30 花を開き始めました。  まだ葯はねじれておらず 花粉が出ていない状態です。 ![]()  | 
      2. 7:50 花が完全に開きました。 少し葯がねじれてきました。 ![]()  | 
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| 3. 雄しべと雌しべはお互い離れています。 自家受粉を防ぐためでしょうか。 ![]()  | 
      4. 8:40 葯が完全にねじれて 花粉がたくさん出ています。 この葯がねじれる点がシマセンブリ属の特徴の1つです。![]()  | 
    
(2) 訪問昆虫
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        花が開いて花粉が出てくると、ヒラタアブの仲間が、ときどき花粉をなめに訪れます。 コハナバチの仲間も花を訪れています。 このように昼の間には他家受粉を行っています。  それ以外では、ヤマトシジミとベニシジミが1度ずつ花にとまりましたが、すぐに飛び立って行きました。 (花には蜜がありません)  | 
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![]() ヒラタアブの仲間?  | 
      ![]() ヒラタアブの仲間?  | 
      ![]() コハナバチの仲間?  | 
    
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     (3) 花が閉じる
| 花は夕方になると閉じていきます。  昼間に昆虫が訪れる花もありますが、訪れない花もたくさんあります。  花を閉じることによって雄しべと雌しべが密着し、昆虫が訪れなくても自家受粉(同花受粉)して、確実に種子を作る仕組みになっているようです。 なお曇りや雨の日は、花は閉じたままです。  | 
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![]() 18:00 花が閉じていきます  | 
      ![]() 18:30 完全に閉じました  | 
      花は翌日(2日目)に、また開きます。 ![]()  | 
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|  翌日(2日目)に再び開いた花の雌しべの柱頭には、花粉がたくさん着いているのがわかります。 昨日よりも柱頭の色が少し黒ずんでみえます。 葯は強くねじれていて、花粉はほとんど出てしまった様子です。   花は2日または3日間咲いて花の時期は終わるようです。 (この花は3日間咲きました。) (2006.6.22)  | 
    
 2.ベニバナセンブリ・ハナハマセンブリの花粉
  (1)ベニバナセンブリの花粉 
ベニバナセンブリの花粉は淡い黄色をしていて、大きさは長径が約40μm、短径が約20μmで、“ラグビーボール状”をしています。(写真1・2・3)
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| 写真 1 裂開しはじめた、ベニバナセンブリの葯 | 写真 2 ベニバナセンブリの花粉 | 
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| 写真 3 ラグビーボール状をしている、ベニバナセンブリの花粉 | |
 (2)ハナハマセンブリの花粉
ハナハマセンブリの花粉は、大きさは長径が約40μm、短径が約20μmと、ベニバナセンブリとほぼ同じ大きさですが、色がやや濃くて“俵状”をしています。 (写真4・5・6)
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| 写真 4 ねじれて花粉を出す、ハナハマセンブリの葯 | 写真 5 ハナハマセンブリの花粉 | 
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| 写真 6 俵状をしている、ハナハマセンブリの花粉 | |
ベニバナセンブリとハナハマセンブリの2種はよく似ていますが、花粉を見てみますと、形や色の違いがみられます。 
「花粉には種の段階まで区別できるものもたくさんある」(「花粉は語る」岩波新書)
と書かれていますので、この花粉の形態の違いは、2種が明らかに別の種であることを示していると考えられます。 
 *花粉以外の、ベニバナセンブリとハナハマセンブリの形態の違いについては「ベニバナセンブリとハナハマセンブリの比較」 をご覧下さい。
(3)ハナハマセンブリ 不揃いの花粉
ハナハマセンブリの花粉を観察していますと、時に、1つの花の花粉の大きさが不揃いのものが見られます。 俵状の花粉(普通の花粉)と、それよりもずっと小さくて、四角っぽい形をしている小粒の花粉がまざっている状態のものが見られます。  (写真 7)
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| 写真 7 ハナハマセンブリ 花粉が不揃いの花がある | |
なぜ花粉がこのように不揃いなのかは、今のところよくわかりません。 小粒の花粉は、未熟な状態の花粉なのでしょうか? あるいは、ハナハマセンブリと思っている株の中には、タンポポの仲間のように雑種が混在しているのでしょうか?  今後も継続して観察してみたいと思います。
                                                                           (08.6.27)
 【 参考文献 】
   ・塚田 松雄    1974 「花粉は語る」 岩波書店
   ・岩波 洋造    1980 「花粉学」 講談社