2.ベニバナセンブリ (Centaurium erythraea) 


リンドウ科シマセンブリ属の二年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物です。 大正の中頃に園芸植物として輸入され、1960年頃に広島県呉市でさかんに繁殖していることが報告されています。 ( 「日本の帰化植物」 平凡社による )

属名の Centaurium は、ギリシャ神話の『ケンタウルス』から由来した名前で、「ケイロン」という名のケンタウルスが、ヘラクレスの放った矢で受けた傷をこの植物で治したというエピソードによるものだそうです。 種小名の erythraea は『紅色の花』を意味しています。 

1.花

二年草で、6月〜8月にピンク色の美しい花を咲かせます。 花の直径は、約11〜13mmです。



花の直径は、約11〜13mm
花は6月〜8月に咲く


ベニバナセンブリとハナハマセンブリの2種の花の大きさはベニバナセンブリの方が、花冠が明らかに大きくて、ふっくらしています。

ベニバナセンブリの花冠裂片はより幅広で、直径が11〜13mmと大きく、ハナハマセンブリ( 3.で紹介します )は、花冠裂片が細くて、花も小さく直径 約9〜11mmです。



   2.花がつぼんだ状態の時

        花がつぼんだ状態でもふっくらしていて、大きな感じを受けます。    花冠裂片(a)と花筒(b)の比は、ほぼ1:1となっています。

 左側のものは咲く前なので比率は1:1ではありません

      

     3.萼と花筒の長さ 

「帰化植物写真図鑑」(全農協)では、「・・ベニバナセンブリでは、ガク裂片が花筒のほぼ1/3の長さ、・・ハナハマセンブリでは、ガク裂片が花筒のほぼ1/2の長さ・・」とガク裂片と花筒の比が2つの種の区別点と書かれているが、実際に観察してみると



萼は花の時期は
花筒の長さの 
約 5/10〜9/10 ほどです。

右は花後です、
萼は花筒の長さの
約 5/10です。


ガク裂片と花筒の長さでは、
区別点になりません。


花後では萼は花筒の長さの約半分

   4.ロゼットを形成する根生葉

ベニバナセンブリの特徴の1つが、根生葉がロゼットを形成していることです。 茎の根元をみますと、茎葉に比べたいへん大きな根生葉が密生していて、よく目立ちます。 この場所では、花をつけたものが約90株ほどありましたが、ほぼすべての株が、根生葉がロゼットを形成していました。

根生葉はロゼットを形成している


枯れているものもありますが、はっきり目立ちます

茎葉に比べたいへん大きく、密生しています


手前の根生葉は来年咲くものと思われます

しかし、ごくわずかですが、根生葉が見られないものを見つけました。

 図鑑には  「ベニバナセンブリでも春に芽生えたものはロゼットを形成しない」と書いてありますのが


根生葉がみられないベニバナセンブリもある

 *翌年(07年)に花を咲かせる前の段階の122株を調べたところ、すべての株に根生葉が見られました。 
  つまり、上の写真で根生葉が見られないのは、もともとあったが、なんらかの理由で枯れたと推測しています。
                       


5. 茎葉

葉は十字対生です。

茎葉は、根生葉に比べ
ずっと小さく
茎の中程の葉は
V字のように、斜上して
着いています。


葉は少し茎を抱き、
はなれて着いているものも、くっついているものもありました。


   葉は、長い楕円形〜へら形で
   縁がやや波うっていて
   内側にまくような感じです。

   ハナハマセンブリの葉に比べると
   かなり細長く感じます。

   右側の2枚は根生葉で、
   茎葉(左5枚)より長くなっています。


6.花をつけた茎がないロゼット葉


 ロゼット葉があちこちにある
花を咲かせた個体の付近には、まだ茎をつけていないロゼット葉(1〜5)が、いくつもみられます。

二年草ですので、来年に花を咲かせるものです。


          ロゼット葉
                                    


7.果実と種子

果実が縦に2つに裂け始めたところです。(矢印) 
この数日後に草刈りがあってすべて刈り取られてしまい、
これ以上追跡できませんでした。



刈り取られた草の中からベニバナセンブリを探し出しました。
果実が縦に2つに裂けて種子をこぼしているものがみられました。


                    
 5mmの方眼用紙

翌年(06.8)果実が完熟したものを確認しました。 
果実は熟すと、このように縦にY字状に裂けて、とても小さな種子を散布します。




種子の表面にはしわがあり、直径 約 0.3mm 



スケールは1目盛り0.2mm


1..2種について    2.ベニバナセンブリ     3.ハナハマセンブリ    4.2種の比較     5.ベニバナの受粉  

 6.ハナハマの根生葉        7.ハナハマ・ベニバナ情報       8.めしべと雄しべの高さ       BBS     TOP