農業情報研究所


EU:BSEをめぐる最近情勢、バーン委員が報告

農業情報研究所(WAPIC)

02.7.9

 6月27日の農相理事会で、バーン保健・消費者保護担当委員が、2月の報告(EU:BSE問題の最近の展開、バーン委員が報告,2.22)以来のBSEをめぐる諸問題の展開状況を報告した(Speech of David Byrne: "BSE",6.27)。今回の報告は、BSEの発生(確認)状況、立法の提案、スクレイピーの発生状況、科学的知見の発展、EU構成国の諸措置、食品獣医局の監査、肉骨粉について触れている。報告の概要は次の通りである。

1.発生状況

 EUにおけるBSEの発生状況は全体としては安定している。検査の拡充により、非常に有益な情報が得られた。

 ・簡易検査(ラピッド・テスト)により発見されるBSEのケースが、今や3分の2を占めるようになった。

 ・大部分のケースがリスク牛で発見されている。健康な牛では3万頭に1頭がBSE陽性であったが、リスク牛ではこの割合は1000頭につき1頭となっている。

 ・最も若いBSEのケースは英国で緊急屠殺された31ヵ月齢のケースであった。健康な牛のケースではフランスの49ヵ月齢が最も若いケースである。

 スペイン・アイルランドを除き、全体的には発生状況は安定している。アイルランドでは、発生率が急上昇している。しかし、年齢構成や最近年に観察された季節的パターンからすると、アイルランドでも発生率は低下し始めるであろう。BSEリスクの地理的クラス分けの変更については国際獣疫事務局(OIE)とEUのレベルで検討の最中であるが(アイルランド:BSE高発生国化の危機でフランス・ドイツに支援要請へ,02.5.7;EU:BSE高リスク国・低リスク国の分類基準変更を提案,02.5.8)、現在のところ、追加的セーフガード措置は必要なさそうである。

2.立法提案

 上記の検査結果に照らして検査の要求の変更が必要かどうか常設委員会で検討してきたが、変更の必要はないというコンセンサスに達した。これは、特に健康な牛については30ヵ月齢以上、リスク牛については24ヵ月齢以上という制限に関係するものである。

 しかし、常設委員会への公式提案を行なう前に明確にしなければならない多くの問題が残っている。特に第三国のBSEリスクの分類についても議論が続いている。

 動物副産物規則に関する閣僚理事会と欧州議会の論議も継続中である(EU:農相理事会、動物副産物規則を採択,01.11.25;EU:BSE問題の最近の展開、バーン委員が報告,2.22)。残飯の扱いが議論の焦点になっているが、これはBSEよりも口蹄疫や豚コレラに関連した問題である。しかし、欧州委員会としては、この提案はBSEに関連した防護のフレームワークとして決定的に重要なものであることをすべての関係者が心に留めるべきと考える。残飯給餌に関する意見の相違を解消するための議論のなかで、これが見過ごされてはならない。

3.スクレイピーの発生率

 羊の伝達性海綿状脳症(TSE)に関連した新たな検査要求(EU:羊と山羊の海綿状脳症(TSE)検査を拡充,2.15)が4月に発効、検査結果も出てくるようになった。欧州委員会はその発生が過小に報告されていると疑ってきたが、現在までの検査結果によりこれが確認されそうである。欧州委員会は、検査結果を毎月報告するようにEU構成国に求めてきた。羊のTSEの真の発生率に関する信頼できる情報は、自然条件のなかでのBSEの羊への伝達があるかどうかという問題に答えるために不可欠である。

4.科学的知見

 科学運営委員会(SSC)脊椎の安全性に関する新たな意見を採択した(U:科学運営委員会、背根神経節を含む脊椎によるBSEリスク評価に関する意見を発表。動物蛋白飼料完全禁止後に生まれた牛の脊椎は低リスク)。この意見は、動物蛋白飼料を全面禁止した2001年1月1日以降に生まれた牛のリスクは低いと示唆している。欧州委員会は、この意見により、脊椎を除去すべき牛の最低月齢を現在の12ヵ月から引き上げる可能性を考慮している。しかし、この問題で決定的に重要なのは、動物蛋白飼料の全面禁止の有効性である。

 羊の腸の安全性に関するSSCの意見が待たれているが、SSCの意見に不可欠と見られるオランダで進行中の研究の結論が未だ出ていない。 羊の腸全体を特定危険部位のリストに加えるべきだというフランスとイギリスの見解(フランス:羊の震え病根絶計画を提案,3.22:イギリス:食品基準庁、羊の腸の使用禁止をEUに勧告,6.26)は承知しているが、欧州委員会のこの問題に関する提案はしばらく待って欲しい。

5.国家措置

 フランスは、7月1日、EUでは12ヵ月齢としている(羊の)脊髄を除去すべき最低月齢を一方的に6ヵ月に引き下げる()。英国牛肉の禁止継続の問題(英仏:欧州裁判所、フランスの英国牛肉禁輸に違法判決,01.12.14;EU:欧州委員会、英国牛肉に関する欧州裁判所の判決に従わないフランスに意見書送付)とともに、エルベ・ゲイマール新農相の対応に注目する。

6.食品獣医局

 欧州委員会の食品獣医局(FVO)は、EU構成国のBSE関連措置の実施状況の現ラウンドの監視を継続している。近々、レポートが出る。確認された弱点には即座に対応することを要求する。新たなEU加盟候補国の監視も進んでおり、これらの国は既加盟国の措置に追いつかねばならない。

 特に検査の導入では進歩があるが、欧州委員会は、一層の努力に向けて圧力を加え続ける。

 監査はEUへの大量の牛肉輸出国、特にブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンでも実施されるか、計画されている。これにより、EUで生産されるものと同様な高度な安全保証を輸入品についても確保する。

7.肉骨粉

 肉骨粉(MBM)の輸送・貯蔵・廃棄については何度も懸念を述べてきた。いくつかのEU構成国は、この増加の処理で問題に直面している。これは理解できるが、必要な措置を先延ばしする口実にはならない。欧州委員会は、最近、構成国にMBMに関する一定の情報を求める書簡を送った。この情報に基づき、秋の閣僚理事会で、MBMの全体的状況に関する最新情報を提供する。

 (注)最初は2002年1月1日から実施する予定であったが、それまでには克服できない「技術的困難」があり、7月1日からの実施に延期されていた。しかし、同じ理由で、実施はさらに2003年1月1日からに延期された。なお、この措置は、6ヵ月以上の小反芻動物の脊髄を特定危険部位に加えることを勧告した2001年2月14日の食品安全機関(AFSSA)の意見(Avis de l'Agence française de sécurité sanitaire des aliments sur l'actualisation des matériaux à risque spécifié chez les ovins et les caprins)に基づくものである。AFSSAは、2002年7月1日、この結論を改めて支持する意見書を出している(フランス:食品安全機関、6ヵ月以上の小反芻動物脊髄を特定危険部位とする意見を維持

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