米国のBSE(第五報):専門家会見、感染牛はカナダ産、北米牛肉は安全

農業情報研究所(WAPIC)

04.1.7

 6日、米国農務省(USDA)のディヘイブン獣医主任とカナダ食品検査庁のエヴァンズ博士が共同電話会見、先月米国で発見された狂牛病(BSE)感染牛がカナダ生まれであることをDNA検査により確認したと発表した(USDA technical briefing and Webcast On BSE with Canadian and U.S. Officials including Dr. Ron DeHaven, Chief Veterinary Officer, USDA and Dr. Brian Evans, Chief Veterinary Officer, Canadian Food Inspection Agency)。だが、これで米国がBSE問題から逃れられるわけではない。両氏とも、この結果がBSEは北米の問題であるという事実を変えるものではないと確認した。感染牛と同居した他の牛の居場所の探索と、感染源(飼料)の追跡に焦点を当てた共同調査を続けるという。

 ディヘイブン氏は、感染牛、その子、父畜の精液のDNA検査により、ワシントン州の感染牛がカナダ・アルバータ州の酪農農場から来たという「高度な確実性」が示されたと語った。また、エヴァンズ博士も、カナダ側の調査の一環として行われた独自の検査で同様な結果を確認したと言う。ただし、昨年5月に発見されたカナダの感染牛と米国の感染牛の間の飼料の関連性を示す十分な証拠はないとしている。

 両氏ともに「北米」の問題であることは認めたが、両国ともにBSEのリスクは非常に低く、食肉の安全性は確保されているという従来の主張を繰り返した。エヴァンズ博士は、昨年の初のBSE確認後に行われた調査、EUやハーバード大学のリスク評価により、さらに何頭かの感染牛で出ることは予想されたことであり、「我々は今後少数の追加ケースが出る可能性を排除できないという現実を常に受け入れてきた。この見地からすれば、これはショッキングな発見ではない」と語っている。そして、米加双方とも、特定危険部位の人間食料からの排除など、厳しい消費者保護措置を取ったから、牛肉の安全性は確保されていると強調する。

 これを論拠に、米国は米国からの輸入を禁止した国に禁輸解除を迫る動きを強めている。メキシコは6日、同国を訪問中のUSDA次官等との協議で、一部の肉の輸入解禁を検討する考えを示した。その一方で、米国は、カナダに対する禁輸措置の解除は拒むというチグハグな対応を見せている。安全よりも経済的利害を優先しているとしか考えようがない。国際獣疫事務局(OIE)にBSEに関する新たな貿易ルールを提案するというが、国内の安全対策の強化が先決であろう。禁輸解除をせまるなら、最低限、米加のような国にEUが課す輸入許可条件(注)を満たすべきである。現在の、そして新たに追加された米加のBSE対策では、一般的にはこれらの条件のほとんどが満たせない。これらの条件を満たすための国内措置自体が経済的利害で阻まれている。

 (注)牛の輸入については、(1)哺乳動物(反芻動物ではない)由来の蛋白質で反芻動物を飼育することが禁止されてきて、かつこの禁止が有効に執行されてきたこと、(2)EUに輸出する牛が、@母畜及び出自牛群にまでトレースされることを保証し、それらがBSEを疑われる雌牛の子孫でないことの確認を可能にする恒久的識別システムにより識別され、A少なくとも7年間BSE発生が確認されていない牛群で生まれ、育てられ、この牛群にとどまったか、B哺乳動物由来の蛋白質による反芻動物飼育禁止が有効に執行された日付以後に生まれた、ことを立証する国際動物保健証書を提出しなければならない。

 牛由来の生鮮肉・製品の輸入については、(1)哺乳動物由来の蛋白質で反芻動物を飼育することが禁止されてきて、かつこの禁止が有効に執行されてきたこと、(2)EUに輸出する生鮮肉及び牛由来の製品が特定危険部位(EUが定めるもので、米加の定義とは異なる)、または頭蓋骨または脊椎から得られた機械的回収肉を含まないか、それら由来のものでないこと、を立証する国際動物保健証書を提出しなければならない。

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