カナダ4例目の狂牛病感染源 交叉汚染飼料の可能性が高いという調査報告

  農業情報研究所(WAPIC)

06.3.6

 カナダ食品検査局(CFIA)が3日、今年1月22日に確認されたカナダ国産牛4例目の狂牛病(BSE)のケースの感染源が交叉汚染飼料である可能性が非常に高いとする調査結果を発表した。この調査結果は、哺乳動物蛋白質を反芻動物に与えることを禁止する1997年以来の”フィードバン”の有効性に重大な疑問を投げかける。カナダは米国と異なり、廃棄されたペットフード、残飯、養禽場廃棄物(チキンリッターまたはポールトリーリッター)を反芻動物に与えることを禁じてきた。交叉汚染による反芻動物飼料のほんの僅かな汚染でこの感染が起きたとすれば、米国のフィードバンの有効性にも改めて疑問が及ぶ。

 http://www.inspection.gc.ca/english/anima/heasan/disemala/bseesb/ab2006/4investe.shtml

 報告によると、この牛が生後早期に与えられた飼料に関して、利用された飼料原材料、これら製品の供給者と調達先、給餌及び飼料貯蔵管理の方法を確認するために、発生農場での徹底した詳細な調査が行われた。農場調査はあり得る交叉汚染、または禁止された反芻動物飼料成分を含んでいた可能性のある飼料への偶然の暴露に重点をおいた。

 確認された飼料供給者の調査も行われ、これには反芻動物への給餌が禁止された物質の利用、またはそれによるあり得る汚染の確認も含まれた。この調査では、成分調達、輸送、取り扱い、製造過程、貯蔵と配達の方法に特別の注意が向けられた。

 農場調査の結果、この牛は生後1年の間に2つの異なる供給者からの4つの異なる販売製品に、さらに12ヵ月から14ヵ月の間にも同一の2つの供給者からの4つの異なる販売製品に直接暴露されたことが明らかになった。

 どの製品にも、禁止物質は調合されていなかった。2つの供給者の1つは反芻動物飼料と非反芻動物用飼料の両方を生産していたが、この製造施設は反芻動物飼料の禁止物質による汚染を最小限にする手続を実施しており、フィードバンの規制要件を満たしていた。

 この施設からの、またこの牛が暴露されか、暴露された可能性のある個々に製造された製品の詳細な調査は、反芻動物飼料が禁止物質を含む非反芻動物飼料の加工の直後に加工されたか、輸送されたことを確認した。記録文書は、両方の製造のために利用された設備は適切に洗浄されたことを必ずしも立証しなかった。

 この農場で使用された飼い葉はこの農場で栽培され、収穫されたか、たまたま近隣から購入され、農場自身の設備で輸送されたものだった。農場の唯一の混合設備は、泌乳牛群のための商業的に調整された飼料と飼い葉を混合するのに使用された飼料ワゴンだけだった。これは共有されたこと、あるいは貸し出されたことはなかった。販売された飼料製品の利用は、反芻動物用のものと、ガレージに貯蔵され、家で飼う犬のための袋詰めペットフードに限られていた。農場の貯蔵容器管理方法は、フィードバン以前に生産された飼料製品が、その後3年間は農場にある程度存在する可能性を最小限にするものだったが、完全には排除しなかった。

 このような調査結果から、報告は、この牛が生後1年の間に低レベルの感染性を含む飼料に暴露されたと想定するのはリーズナブルであると言う。調査は多くの可能性を認めたが、高度な確実性をもって正確な感染ルートを決定することはできない。しかし、発見は、特定の子牛育成飼料が製造または流通過程で汚染された可能性を示唆すると言う。さらに、農場にフィードバン以前の物質が残存した可能性も排除はできないとも言う。

 こうして、不確実性は残るものの、報告は交叉汚染による感染の可能性が高いことを示唆する。

 それにもかかわらず、報告は、フィードバン以後に生まれたBSE感染牛の発見はカナダに特有のことではなく、それがBSEを減らし、根絶するために設けられた措置の失敗を意味するものではないと言う。他の国でも同様なことは起きている。いかなる交叉汚染の可能性もさらに減らす追加措置は根絶を早めるだろうが、カナダのフィードバンと同等の措置が牛のBSEの増殖と拡散を抑え、長期的には病気の排除につながるであろうことを示してきたと言うのである。

 報告は、2003年以来8万8000の高リスク牛を検査して4頭の感染牛が発見されたにすぎず、これはカナダにおけるBSE発生が極度に少ないことを示す、またこのような発見はカナダのサーベイランスシステムと、カナダにおけるこの病気の廃絶に貢献するカナダ生産者と獣医の約束の無欠性も立証していると強調する。

 しかし、「いかなる交叉汚染の可能性もさらに減らす追加措置」を何故実施しないのか。1年以上も前に提案されたこの追加措置(カナダ、すべての動物飼料・肥料からの牛特定危険部位排除を提案,04.12.13)は未だに実施されていない。「この病気の廃絶に貢献するカナダ生産者と獣医の約束の無欠性」は立証されていない。米国もまた同様だ。 この調査結果そのものが、それが「無欠」でなかったことを示している。交叉汚染の高い可能性が立証された以上、この追加措置は一国も早く実行されねばならない。

  ただし、短期間でのカナダの徹底した感染源調査はわが国も見習うべきだ。

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