ファストフードと巨大アグリビジネスがアマゾン雨林破壊を加速ーグリーンピース報告

農業情報研究所(WAPIC)

06.4.10

  グリーンピースが4月6日、英国マクドナルドとカーギルを含む一握りの世界最大の食品企業と貿易業者がアマゾン雨林の違法で急速な破壊をもたらしているという新たな報告を発表した。

 McAmazon;http://www.greenpeace.org/international/news/mcamazon-060406

 この報告は、農民による処女林開拓からスタートして英国とヨーロッパのファストフード・レストランで販売されるチキン・マックナゲットにまでつながる7000kmに及ぶチェーンを追跡したものだ。それは、ブラジルから英国にやって来る大豆動物飼料の大部分が”森林犯罪”の産物であり、マクドナルドや英国スーパーが森林破壊にまったく無頓着であることも明らかにする。これら企業は、人々の健康に無頓着という報告が出たばかりだが(世界のトップ食品企業の不健全な食事との戦いは口先だけー英国の監査報告)、”地球の肺”の破壊にも無頓着に巨大ビジネスを追求していることになる。

 報告によると、米国の巨大アグリビジネス・カーギルはアマゾン地域に一つの港と13の大豆貯蔵施設を建設した。それは、大量の大豆を生産する農民に種子と農薬も提供する。これら農民が生産した大豆は、主にアマゾン河沿いのサンタレムから英国のリバプールやその他のヨーロッパの港に輸出される。

 動物飼料として利用される高蛋白の大豆の大部分は、リバプールから英国ヘレフォードにあるカーギルの100%子会社・サンバレーに送られる。この会社は、マクドナルドに、それが英国とヨーロッパで提供するすべてのチキンの50%を提供する。

 他方、ブラジルでは、公有地、先住民の土地がブルドーザーと、ときに奴隷労働を使う農民により収容されつつある。昨年1年で、アマゾン森林の2万5000㎢が、大部分は大豆栽培のために伐採された。この森林破壊の大部分は、大規模多国籍企業の参入の後に起きた。報告は、衛星写真と政府の記録を利用して、どこで破壊が起きたか特定できると言う。

 例えば、サンタレム周辺の大部分の土地は、5年前には厚い森林に覆われていた。ところが、カーギルが二つの穀物サイロと自身の港の建設を発表すると、巨大な影響が現れた。衛星写真は、森林破壊の速度が2年で倍増、年に2万8000haに達したことを示す。ブラジル中の農民が保証された市場の利益に与ろうと殺到、そのために地価が一気に高騰、大豆栽培が始まった。

 その大豆の大部分がサンタレムのカーギルのサイロに運ばれ、続いてマクドナルドに販売されるサンバレーの鶏の飼育にために輸出される。

 一部はヨーロッパ企業からの需要に駆り立てられた大豆栽培の拡大によるアマゾン森林破壊の規模は前例がないほどに大きい。サンタレム地域のおよそ1万4000haが、今や 年に3万4000トンの大豆を生産する。そして、カーギルがこの大豆農場開発を助けている。これら農場は、カーギルが建設したインフラなしでは存続できないからだ。

 森林破壊の他の推進者は、個人としては世界最大の大豆生産者であるマット・グロッソ州のマッギ知事や米国の穀物企業だ。マッギは、前は大部分が森林であった200万haの土地で大豆を栽培することを助ける世界銀行の3000億ドルの貸付を受けている。報告は、森林破壊があらゆる大豆施設の近くで増加しており、大豆が最も強力なアマゾン破壊者だと言う。

 それによると、「アマゾンの土地の大部分は、”空き地”で、保護されていない。大豆農民はこれらの地域に狙いを定める。彼らは開墾のために伐採者とブルドーザーを使い、焼き払う」、「新たな侵攻を一層破壊的にしているのは、低利の信用供与と保証された市場だ。雨林は治外法権、従ってリスクは低い。このような活動が、事実上、ヨーロッパの安価な食肉のための邪悪な財政補助金となっている」。

 ヨーロッパは、一部はブラジル大豆の多くがまだ遺伝子組み換え(GM)フリーであるために、アマゾン大豆の重要市場となっている。サンバレーは週に100万の鶏を育て、加工し、その半分がマクドナルドに行く。サンバレーが利用する大豆のおよそ25%がブラジル産で、リバプール系由でやってくる。報告は、アマゾンはブラジルで生産される大豆の5%を生産するにすぎないが、この僅かな量が森林の生態系を破壊する脅威を生み出していると言う。

 「[大規模]大豆農業は土壌浸食につながり、収量引き上げのための大量の化学物質投入を必要とする。土壌を使い尽くすと農民は他の地域に移動、土壌劣化と化学物質汚染の悪循環を繰り返す」。グリーンピースは、食料の調達先がどうなっているのかをもっと知らねばならないと言う。

 ヨーロッパ人だけではない。食料の多くをブラジルも含む海外に依存する我々日本人もまた、食料の調達先がどうなっているのかをもっと知らねばならない。

  関連ニュース
 Croisade des ONG contre le soja sud-américain,Le Monde,4.7
 http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3228,36-759263@51-759373,0.html
  Greenpeace contends soybean crops cause deforestation in the Amazon,Agencia Brazil,4.10

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